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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第十章:桃色の青春のために
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第200話:桃色の青春のために

 長いようで短かった文化祭は、いつの間にか終わりを迎えていた。金、土と二日に亘って行われた学生たちによるお祭りは、終わってしまったのだ。

 そして本日は、日曜日。昨日まで行われていたお祭りの後片付けを午前中いっぱい使って終えた私たち文化祭実行委員のメンバーは今、広々とした多目的教室にいた。


「皆さん、お疲れ様でした!!」

「「「「「お疲れ様でしたぁ~~!!」」」」」

「皆さんのお陰で、今年の文化祭も無事終了しました!感謝です!!」


 各々が好きな席へと腰掛け、ジュースで満たされたコップを持ち、私たちは締めの挨拶をする実行委員の三年生男子へと視線を向ける。


「必要なレポートの提出も終わったし、あとは飲んで食って騒ぎまくるだけです!というわけで皆さん、最後まで楽しんで行けやぁーーーーっ!!」

「「「「「うぇ~~~~い!!」」」」」


 私の視線の先で、コップを片手にバカ騒ぎする生徒たち。


「あぁ~あ。終わちゃったね?」

「・・・・・。うん、そうだね」


 準備期間を合わせれば、約一カ月にも亘る大きな大きなお祭り。それが終わった後に残るのは、何とも言えない寂しさと達成感。


「鈴木君のとこ、行かなくていいの?」

「・・・・・」

「今日が、最後のチャンスかもよ?」

「・・・・・」


 私たちの視線の先で、同じクラスの実行委員の女子と楽しそうに談笑する鈴木君。そんな彼の姿を見て、眞鍋さんは切なそうな表情を浮かべている。


「結局、鈴木君とは殆ど話せず仕舞いだったんだよね。仕事が被ることもなかったし、思ってたほど話す機会もなかったしさ」

「・・・・・」

「でも、そうだよね・・・。今日が、最後なんだよね・・・」

「・・・・・」


 真鍋さんは、手に持っていたコップの中身を一息で飲み干す。


「ちょっとばかり、逝ってくるわ」

「うん」

「玉砕したら、骨は拾ってね?」

「・・・・・、うん」


 そうして、眞鍋さんは特攻していった。今の私にできるのは、そんな彼女を遠くから見守ることだけ・・・。


「いやぁ~、青春だなぁ~~。上手くいくといいねぇ~~?」


 ニコニコとした表情を浮かべ、近付いてきた一人の先輩女子生徒。名前は確か・・・。


武井たけいだよ。武井 瑞希みずき


 あ、あぁ~、そうだったっけ?


「その顔はもしかしなくても、忘れてたな?」

「いや、えぇ~と・・・」


 私は気マズくなって、武井先輩から視線を逸らす。


「ふふふ、まあいいんだけどね?私たちはあんま話す機会もなかったしさ。でも、せっかくだからこれを機に仲良くしたいなぁ~~?」


 私たちの視線の先では、眞鍋さんが顔を真っ赤にしながら鈴木君へと話し掛けている。そしてそんな彼女の様子を、生暖かい皆の視線が優しく見守っている。


「やっぱさ、こういうのいいよね。普段話す機会のない子たちとワチャワチャやるのってさ。新しい友達も増えたし、こうやって可愛い後輩にも出会えたし」


 遠くの方で、陽介が先輩女子たちから絡まれている。そんな彼の近くで、新島さんがアワアワしている。


「文化祭はこれで本当に終わっちゃうけどさ・・・。機会があったら、また集まって遊ぼうよ。ね?」


 私の背中へと手を回し、その手にスマホを持って・・・。


「だからさ、連絡先交換しない?ね?夏姫ちゃん」


 優し気な笑みを浮かべながら、その先輩は・・・。


「それとも、夏樹()って呼んだ方がいいかな?うふふ」


 私の耳元で、そう呟いたのだった。

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