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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第十章:桃色の青春のために
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第197話:汚染

 三年生の出し物を見て、そのまま二年生の出し物も見終え、そうして私たちがやって来たのは一年生の教室が並ぶ廊下・・・。


「やっぱ、先輩たちのに比べるとウチらのショボいね・・・」


 私たちFクラスの出し物はショボい絵の展示なんだけれど、他のクラスも似たり寄ったりな内容で、しかもその出来はお世辞にも良いとは言えず・・・。


「他のクラスの実行委員に色々聞いたんだけど・・・。凝った事するには皆の協力が必要じゃん?場合によっては放課後残ったりとかさ」

「うんうん」

「だけど、皆そこまでして何かをしたいかっていうとそうでもないらしくてさ。一応Aクラスは飲食やろうってなったらしいんだけど、必要な準備とか聞いてるうちにやっぱ無しってなったらしくてさ」


 最初は飲食をやろうと張り切っていたはずの一年Aクラスの出し物は、輪投げ。段ボールと厚紙を使って作られたそれは、他の一年生たちの出し物に比べればちょっとだけマシに見える。


「まあ、私たちの場合予算が少なかったからってのもあるから」

「う、う~ん・・・」

「それにさ、前にも言ったけど、来年頑張ればいいじゃん?今年は色々と見て回って、やり方とか聞いてさ」


 ちなみになのだけれど、眞鍋さんの思い人である鈴木君がいるDクラスの出し物は、無し・・・。Dクラスはクラスの全員が部活動組であるため、そっちの方を優先した結果らしい。


「ウチも、閑古鳥が鳴いてるね?」

「・・・・・」

「部活の出し物、見に行く?」

「・・・・・。そうだね・・・」


 一年生の教室が並ぶ廊下を出て、私たちは特別教室が並ぶエリアへと移動する。


「最初は、文芸部のところに行かない?彩音っちもいるだろうし」

「そうだね。聞いた話によると、文芸部の催しは相当凝ってるらしいよ?」


 人混みを掻き分け、やって来ました文芸部の部室。そこにはたくさんの女子生徒がいて・・・。あれ、男子は?


「うふふふふ。いらっしゃい、二人とも」

「あぁ、彩音ちゃん、朝ぶりだね?」

「うん、そうだね。とりあえず、入って来てよ」


 どこか妖艶な雰囲気の彩音ちゃんに戸惑いながらも、私たちは奥へと進む。


「何ていうか、女子が多いね?てか、女子しかいないね?」


 文芸部には鈴木君とか、他にも男子が数名いたはずなんだけど・・・。


「文芸部はね、二つ催しをやってるんだ。男子たちは別の教室で、皆が作った作品の展示と解説をやってるはずだよ」


 へ、へぇ~?そうなんだ・・・。


「じゃあ、ここでは何をやってるの?入口には、文芸部女子謹製の特別な作品を展示、配布するって書いてるけど?」


 私たちが案内された室内に展示されているのは、手作りの冊子?


「これが、皆で作った作品?」

「違うよ?これはただのダミーで、例のブツはコッチ」


 そうして彩音ちゃんが手渡してきたのは、何故かやたらと完成度の高いBL本・・・。


「あの、彩音ちゃん?」

「うふふ」

「・・・・・」

「うふふふふ・・・」


 彩音ちゃんは、その視線をゆっくりと奥の方へ向ける。


「あ、え?枕崎まくらざきさん?」


 そこにいたのは、私が峰島中学時代にクラス委員長を務めていた女子生徒、枕崎さん。


「その作品を完成させるのは、本当に大変だったのよ?先ずは同じ部活仲間の女子に布教して、次はクラスの女子と先輩たちに布教して・・・」

「・・・・・」

「その後密かに生徒会会長の先輩女子に接触して、そうしてやっと、これは完成したの」

「・・・・・」


 私の隣で、ともちゃんはポカンとしていた。ついでに私も、ポカンとしている。


「本来は一年生の出し物に使われるはずだった予算をこっちに横流ししてもらって、それでようやく・・・」


 よ、横流し?


「他にも色々と皆に協力してもらって、ほら?」

「「・・・・・」」


 私たちの周りにいる女子たちは、皆その手に一冊の本を持っている。それは、BL本・・・。


「「「「「教祖様、バンザイ!BL、最高!!」」」」」


 部屋に、女子生徒たちの声が木霊する。


「あ、彩音ちゃん?」

「教祖様、バンザイ!BL最高!!」


 え、えぇ・・・。


「さあ、あなたたちも」

「「・・・・・」」

「さあ、さあ!!」

「「・・・・・」」


 ここはもう、ダメかもしれない・・・。BLの呪いに取り憑かれすっかり変わり果ててしまった親友の姿に涙を流しつつ、私とともちゃんはその場から全力で逃げ出したのだった。

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