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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第十章:桃色の青春のために
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第196話:メイド喫茶!!モドキ???

 本日は待ちに待った文化祭当日、その一日目。いつもであれば授業時間故にシンと静まり返っているであろう学校の廊下は、催しのためなのか仮装した姿の生徒たちで溢れ返りとても賑やかである。

 そしてそんな賑やかな廊下を、私は幼馴染のともちゃんと共に歩いていた。いつも通りの紺色を基調とした制服姿で、物珍しそうに各教室の中を覗き見ながら。


「人の数が、凄いね・・・」

「うん、そうだね・・・」


 今私たちが見て回っているのは、三年生の教室内で開催されている催し。


「話では聞いてたんだけど、毎年三年生の出し物は凄いらしいんだよね」

「へぇ~?」

「受験前の、卒業前の最後の大きなイベントだから」

「・・・・・」


 大宮高校の三年生たちにとって、これが高校生活の中で皆と楽しむことができる最後のイベントになるであろう文化祭。それ故にその催しは非常に凝っており、先輩たちの力の入れようが容易に見て取れる。

 そしてそんな催しの一つに、私たちは足を踏み入れようとしていた。教室の入り口にデカデカと書かれた「メイド喫茶モドキ!!」という名の看板に一抹の不安を抱きながらも、私たちは前へと果敢に進む。


「あら?夏姫ちゃんいらっしゃい!!来てくれたんだ?」


 ニコニコ顔で私たちを出迎えてくれたのは、文化祭実行委員会議の時に知り合った女子の先輩。


「ちょっと今込み合ってて、申し訳ないんだけどこっちの方で待っててくれる?」


 手作り感満載のメイド服を着た彼女に、私たちは案内される。私たちの先には男女問わず既に多くの生徒たちが並んでおり、中々に大盛況のようだ。


「メイド喫茶って書いてるけど、飲み物とかはないんだ?」


 教室の入り口から中をチラ見しつつ、ともちゃんは呟く。


「ウチがやってるのは『メイド喫茶』じゃなくて、『メイド喫茶モドキ』だからね!!」


 そんなともちゃんの呟きに、先輩女子は律儀に答えてくれる。


「本当は飲食の提供もしたかったんだけどさ、メイド服作るだけで予算使い切っちゃって!あはは!!」


 教室の中では、メイド服を着込んだ男女が忙しなく動き回っていた。彼等彼女等は満面の笑顔を浮かべながら「ご主人様ぁーーっ」と口々に宣っており、実にカオスであった。


「だからまあ、雰囲気だけなんだけどね?」

「「・・・・・」」

「あははははは!!」

「「・・・・・」」


 そうして待つこと数分後、私たちは教室の中へと案内される。


「いらっしゃいませ!ご主人様!!」


 笑顔が、怖い・・・。やけっぱちっぽいその笑顔が、怖い・・・。


「当店では飲食物を取り扱っておりません・・・。が!!その代わりに、超特別なメニューがございまして・・・」


 メイド服を着込んだ男子生徒の濃い腕毛が、気になる・・・。てか、メイド服似合わな過ぎる・・・。


「ここに、言って欲しい言葉のリストがございまして・・・」

「「・・・・・」」

「ご主人様たちのご要望は?」

「「・・・・・」」


 ともちゃんが、死んだ魚のような目をしている。多分私も、似たような目をしていることだろう・・・。


「え、えぇと、じゃあこれで・・・」


 私たちの隣の席からは、元気な女子生徒の声が聞こえてくる。彼女は「ご主人様にラブ注入!!」とかとち狂ったことを言いながら、手でハートマークを作っている。


「それでは、僭越ながらこの金剛こんごう たける、逝かせてもらいます」

「「・・・・・、ゴクリ・・・」」

「あぁ~ご主人様にぃ~~!ラブ注入ぅ~~!!」


 ・・・・・。


「えぇと、ありがとうございました。以上となります」

「「・・・・・」」

「お帰りは、あちらからとなっております。またのお越しを、心よりお持ちしております」

「「・・・・・」」


 これが、メイド喫茶モドキかぁ・・・。

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