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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第十章:桃色の青春のために
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第191話:会議終了

 長かった会議は、ようやく終わりを迎えた。場所の使用権を巡っての壮絶なバトルは最終的にじゃんけんによって決められ、実に呆気ない決着を見せたのである。

 そうして本日の予定を終了しあとは帰るだけとなった私なのだけれど、そんな私は今、たくさんの上級生女子に取り囲まれていた。申し訳なさそうな表情のままの眞鍋さんが見守るその先で、私は上級生女子たちによって頭をナデナデされている真っ最中なのだ。


「いやぁ~、さっきは何事かと思ったよぉ~~。後ろの方からぷぷぅ~って聞こえてきたからさ。でもまさか、こんな小さくて可愛い子のオナラだったなんてね~~?」


 先輩女子の一人が、そう言いながら豪快な笑い声を上げている。彼女はその顔に無邪気な笑みを張り付けながら、私の頭をナデナデしてくる。


「もう、揶揄わないの!可哀想じゃない!!」

「いやいや、別に揶揄ってるわけじゃあないって・・・。こういう時は、いっそ笑い飛ばしてあげた方がいいんだって!!」


 先輩女子の言葉を聞いた真鍋さんは、気マズそうな表情を浮かべていた。彼女は死んだ魚のような目をしながら、虚空にその視線を飛ばしてただただ沈黙していた。


「それにね?寧ろ私は感心してるんだよ!私だったら意地でも白を切り通して、何なら隣の子のせいにしたりとかするからさ!!」


 先輩女子の言う通り、先程のオナラ事件は年頃の女子にとって非常にくるものがある。仮に私が女子でなく男子のままであのような失敗をしていたとしても、心に相当のダメージを負っていたはずなのである。

 でもだからこそ思い人の近くにいた眞鍋さんは必死だったし、私もそれを察して彼女が被るはずだった泥を身代わりに受ける選択をした。そしてその結果眞鍋さんの尊厳は紙一重のところで守られ、代わりに私の尊厳は深くて暗い地の底へと沈んでしまったわけなのだけれども・・・。


 頭をナデナデされながら、私はその視線を先程一年生たちが座っていた席へと向ける。そこには既に人影はなく、陽介や鈴木君を始めとする一年生の文化祭実行委員たちは自分たちの教室へと帰還していた。


(新島さんからは心配そうな視線を向けられたし、鈴木君は気マズそうに視線を逸らしていた。そして陽介は、呆れたような表情をしてたな・・・)


 真鍋さんのことを庇うためとはいえ、先程の出来事を知り合いたちに誤解されたままというのは中々にツラい・・・。私は乙女と呼ぶには些か疑義が残る中途半端な存在ではあるものの、それでも体だけは一応乙女だし、その心は非常に繊細なのだから・・・。


「はぁ~~」


 知らず知らずのうちに、私の口からは大きな溜息が零れていた。それは心に負ったダメージを軽減するために自然と出たもので、特に他意はない。

 だけれどもそんな私を見た先輩女子たちは私のことを心配そうな表情で眺めながら、私のことを代わる代わる慰めてくれる。彼女たちは代わる代わる私へと声をかけ、頭をナデナデしてくれる。


「さっきのことだけど、本当に気にしなくても大丈夫だからね?オナラなんて、誰だってするんだから」

「そうそう。だから、本当に気にしちゃダメよ?」


 私は優しい先輩たちに小さく頷くことで返答し、それを見た先輩たちは再度私の頭を撫で回してくる。


「君、名前は?」

「え、えぇと、一年Fクラスの一色です。一色 夏姫・・・」

「そっかそっかぁ~。ヒイロ ナツキちゃんかぁ~~」


 先輩の女子たちに囲まれ頭を撫で回されながら、自己紹介する私。


「ナツキちゃんはちっこくて可愛いなぁ~。それにとっても素直そうだし・・・。私もどうせならこんな可愛らしい妹が欲しかったなぁ~~」


 それからも暫くの間頭を撫でられたり抱き着かれたり、もみくちゃにされて・・・。


「とにもかくにも、一緒に文化祭頑張ろう?」

「そうそう。困ったことがあったら、いつでも相談しに来てくれていいからさ」


 こうして予想外の出来事こそあったものの、第一回目の文化祭実行委員会議は無事に?幕を閉じたのだった。

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