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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第十章:桃色の青春のために
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第187話:デスゲーム・・・

 全ての授業が終わり、今は帰りのホームルームの時間。席に座る私たちの視線の先では本日の日直である女子がしかめっ面を浮かべながら、声を張り上げていた。


「誰か、文化祭の実行委員やりたい人!!」


 それは、ここ数日の間毎回のように繰り返された光景。担任の先生は腕を組んだまま隅っこの方で棒立ちし、そんな先生が見守る中し~んと静まり返った教室の中に日直の声だけが響き渡る虚しい時間。


「はい!!」

「え?」

「私、実行委員やります!!」


 そんな光景が繰り返されるだけだったはずの教室に、異質な声が響き渡る。


「えぇと、眞鍋さん、本当に?」


 司会役の女子も、黒板の前でチョークを弄ぶもう一人の日直の男子も、驚きのあまり目を見開かせていた。


「本当に、本当にいいの?」

「はい!私がやります!!寧ろ他の誰にも譲る気はありません!!!」


 真鍋さんの宣言は実に力強く、それ故に、他の誰もがただただ茫然と彼女の方を向いていた。


「えぇと、それじゃあ、一人目は眞鍋さんで・・・」


 特に反対の意見もなく、眞鍋さんの実行委員会入りは決まった。今まで誰も立候補なんてしていなかったのだから、当然と言えば当然なのだけれど。


「では、あと一人・・・。もう一人の実行委員を決めたいと思います。誰か、立候補する人は?」

「「「「「・・・・・」」」」」

「・・・・・」

「「「「「・・・・・」」」」」


 真鍋さんの立候補により、ほんの少しだけ前進した文化祭についての話し合い。だがしかし、そんな話し合いはもう一人の実行委員決めで再び足踏みする。


「なっちゃんはさ、立候補しないの?」

「え、何で?」

「いやだって、部活とかしてないしさ」

「・・・・・」


 教室内がし~んと静まり返る中、コソコソと声をかけてきた眞鍋さん。そんな彼女に、私は一言でその理由を説明する。


「だって面倒だし」

「・・・・・」


 鈴木君目当ての眞鍋さんと違って、私は実行委員になる理由が存在しない。そもそもそんな面倒事は回避できるなら回避したいし、眞鍋さんだって鈴木君の件がなかったならば立候補なんてしなかっただろう。


「先生、これ以上は無理そうです」

「うぅ~ん、そうかぁ~」

「どうします?」

「うぅ~ん、そうだなぁ~」


 長い沈黙に耐えかねたのか、司会役の女子生徒は担任の先生へと助けを求める。


「あんまり時間もないし、もうじゃんけんで決めるか」

「「「「「えぇ~~」」」」」

「なら、先生が適当に指名しようか?」

「「「「「・・・・・」」」」」


 日直の二人を席へと戻し、先生は教卓の前で仁王立ちする。


「眞鍋以外は、全員立て。それで、先生に勝った者から順に座っていけ」


 それは、実行委員を回避するためのデスゲーム。面倒事を回避するためのデスゲーム・・・。


「それじゃあ、始めるぞぉ~~」


 負けられない戦いが、今ここに開始されたのだった。

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