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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第十章:桃色の青春のために
182/241

第182話:もう一人の本田・・・

 夏休み中にあったとある出来事について、語ろうと思う。それは夏休み終盤にあった出来事で、その日私は夏休み前に知り合ったばかりの新島にいじま 小春こはるさんと一緒に映画を見たりウィンドウショッピングしたりしていたのだけれど・・・。


本田ほんだ君・・・」

「え?」


 駅前にあるショッピングモールで、偶然にもバッタリと出会ってしまった男子二人組。彼等は新島さんと同じクラスの男子であり、つまるところ彼等も大宮おおみや高校の生徒であるらしい。

 そしてそんな彼等の一人を見て、新島さんは小さく呟いたのだ。本田君、と・・・。陽介ようすけとは似ても似つかないその人を見て、彼女は確かに言ったのだ。本田君、と・・・。


 これは、どういうことだろう・・・。彼は一体、何者なのだろう・・・。私は湧き上がってくる数多の疑問と言葉を一旦飲み込み、彼等の遣り取りを静かに見守ったのだ。


「あぁ、えぇと・・・。新島さんも遊びに来てたんだ?」

「う、うん・・・」

「そっか、そうなんだ」

「・・・・・」


 新島さんと向かい合う彼等の表情は、硬かった。ついでに新島さんの表情も、硬かった。

 新島さんに聞いたところによると、彼女は体育祭の時に決行した告白によって現在クラスの中で浮いてしまっているらしい。別にイジメとかではないらしいのだけれど、とても気マズい思いをしているらしいのである。


「今日は、たまたま二人で遊ぶ約束してて・・・」


 本田と呼ばれた男子が、アワアワしながらそう言葉を発した。


「へ、へぇ~?」


 そんな言葉を受けて、新島さんはぎこちない笑みを浮かべながらそう言葉を返した。


「えぇと、それじゃあ、また学校で」


 そして気マズそうに、まるで逃げるように会話を打ち切り去っていく男子たち・・・。


「あの、新島さん?」

「え?」

「さっきの人たちは?」

「・・・・・」


 ぎこちない笑みを浮かべ、目元と口元を引き攣らせている彼女に私は思い切って声を掛けた。


「さっきの二人は、同じクラスの男子なんだけど・・・。そのうちの一人が、本田君・・・。以前話したと思うんだけど、私が入学式の日に一目惚れして、フラれた人」


 それは、衝撃的な一言であった。えっと、つまり・・・。新島さんが告白した人は本田君だけど、それは陽介じゃなくて?


 その日家へと帰った私は、机の引き出しに仕舞っていた紙切れを大慌てで取り出した。それは大宮高校一年生たちの名前だけがクラスごとにズラリと並んだ名簿であり、ふむふむ・・・。


「一年Bクラス所属、本田 智則とものり・・・」


 ・・・・・。えぇと、誰?つまりBクラスには、苗字が本田の人が二人いたってこと?



 *****



「つまり、そういうことらしいんだよ」


 夏休み中の出来事について話し終えた私は、目の前で困惑した表情を浮かべたままの新地あらち君へと声をかける。


「つまるところ、新地君が聞いた本田って人は、本田 陽介じゃなくて、本田 智則っていう人のことだったらしいんだよ」


 一体全体、どうしてくれるんだよ?!新地君が紛らわしいこと言ったせいで、私は危うく恥ずかしい勘違いをするところだったじゃない?!もうちょっとで、陽介に「告白された?」とか訊いちゃうところだったんだから?!


「いや、そんなこと言われても・・・。俺、本田って奴はサッカー部の本田しか知らないしさ」


 そう言って、新地君は大きな溜息を零す。


「てか、俺も一色ひいろがまさか本田の知り合いで、しかもあいつのことが好きだとか思わなかったし」

「別に、好きとかじゃなくて・・・」

「いや、その反応はどう見ても・・・」


 違うし?LOVEじゃなくて、LIKEだし?


「いやまあ、それは別にどうでもいいんだけどさ」

「よくないし?!」

「てか、つまるところただの勘違いだったていうか、もう終わった話なんだろ?」

「・・・・・」


 今の時間は昼休み、偶々トイレへと向かう途中で新地君を見つけ、思わず空き教室へと引き摺り込んでしまった私。


「外で、眞鍋とかが待ってるんじゃないのか?」

「・・・・・」

「てか俺も早くトイレ行きたいから、もう行ってもいい?」

「・・・・・。どうぞ・・・」


 こうして、一カ月にも及ぶ本田君への告白を巡る一連の勘違いは終わりを迎えたのだった。

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