第181話:夏休みの終わり
ここから第十章(181話~200話)となります。ついに、ついに200話ですよ・・・。
長いようで短かった夏休みが、終わった。終わってしまった。私は若干低めのテンションのまま家の前でともちゃんと合流し、そのまま二人で最寄りの駅まで向かう。
「あぁ~あ。夏休み、終わっちゃったね」
私と同様いつもに比べテンションが低めのともちゃんが、そう言葉を発する。
「本当なら、もっと皆で遊ぶ予定だったのに」
「・・・・・」
高校生にもなると、今まで以上に行動範囲が広がる。シンプルに交友範囲が広がるし、扱えるお金の額とか自分たちだけで行ける場所が増えるからね。
だから私たちは夏休みに向けてコツコツお小遣いを温存していたし、貴重な大型連休を目一杯楽しもうと色々計画していたのだ。それなのにあんなことがあって、結果的にその計画の七割は未実施のまま終わってしまった。
「あの人たち、大学生だったのかな?」
「さあ、知らない」
あの日は平日だったし、だから社会人ではないと思うのだけれど・・・。
「今度見掛けたら、絶対にぶん殴ってやるんだから」
「・・・・・」
多数のスタッフに囲まれながら何処かへと連行されていったあの人たちは、どうなったのだろう・・・。あの後私たちは最低限の事情聴取だけされてそのまま急いで帰宅してしまったから、彼等がどうなったのかは分からない。
厳重注意で終わったのか、それともそれ以上の何かがあったのか・・・。いずれにしても彼等にはしっかりと反省してほしいし、今後は是非とも紳士的な言動を心掛けてほしいものである。
「あっ。さっちゃんおはよう。さあちゃんも」
「ちーっす」 「うん。おはよう」
「みっちゃんは?」
「美月は置いて来た。連絡しても出なかったし・・・。あいつ、ワンチャン寝坊だぜ?」
駅で眞鍋さんたちと合流し、私たちは四人で電車を待つ。
「夏休み、終わっちゃったねぇ~」
「そうだねぇ~」
「どうせなら、九月末まで休みでいいのに。まだクソ暑いしさ」
まだ朝方だというのに、夏の凶悪な日差しは容赦がない。駅のホームはそんな日差しこそ遮ってはくれるのだけれど、私の視線の先に見えるスーツ姿の男性は額から滝のような汗を流しながらグデッとしている。
駅に着くまでに私自身も汗をかいているし、ハンカチやタオルで拭いても拭いてもその不快感は一向に拭えない。近くにいるイツメンの女子たちも私同様既に汗まみれであり、夏の太陽よ、もう少し手加減してくれ・・・。
「「「「・・・・・」」」」
そうして待つこと数分後、ようやくやって来た電車。その電車は冷房こそ効いているものの予想通りギュウギュウに混んでおり、それが私たちのテンションを更に押し下げていく。
「今日くらい、授業なくてもいいのに・・・」
ともちゃんの呟きは、虚しく虚空へ消えていく。
「始業式とホームルームだけでいいのに。はぁ~」
真鍋さんの大きな溜息が、辺りに木霊する。
「「「「はぁ~~」」」」
電車を降り駅を出て、私たちは他の生徒たちに混ざって目的地である学校へと向かう。
「じゃあ、またあとでね?」
「お~け~」
校門を潜り廊下を進み、Eクラス所属の木下さんと別れ、私たちは我がFクラスの教室へと足を踏み入れるのだった。