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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第九章:とある恋の結末
175/241

第175話:突撃!!

 夏休みはあっと言う間に過ぎ、今は八月の中盤。私は仲の良い女子たちと一緒に、市内にある屋内型のプール施設へと来ていた。


「皆の者!浮き輪は持ったか!!」

「イェース!!」 「「ノォーーッ!!」」 「・・・・・」

「うし!それじゃあ、突撃ぃーーーーっ!!」

「「「「うおぉーーーーっ!!」」」」 「・・・・・」


 水着姿の乙女たちが、プールに向かって駆けていく。彼女たちは年に一度着る機会があるかどうかの真新しい水着でその肌を包み、楽しそうに駆けていく。


「そこの人ぉーーっ!危ないのでプール際は走らないでくださぁーーい!!」

「「「「・・・・・。はい、ごめんなさい」」」」


 駆け出してから十秒も経たないうちに監視スタッフの人からの注意が入り、彼女たちはシュンと頭を垂れる。ここの施設のスタッフさんは中々に優秀らしい。


「人も多いし、足元も滑るから危ないって・・・」

「でも・・・」

「でもじゃありません!!」

「「「「・・・・・」」」」


 どちらかというと大人しそうなイメージの木下きのしたさんまでノリノリで駆け出した時にはどうしようかと思っていたのだけれど、大人がちゃんと止めてくれたので助かったよ・・・。


「いや、ゴメンって。ちょっとテンションバカ上がりしちゃってさぁ~?」


 そう言ってテヘペロしているのは、眞鍋さん。彼女はお嬢様らしからぬ言動のまま肌面積多めのアブナイ水着を着こなしており、目のやり場にとても困ってしまいます。


「そうそう、そんなにプリプリしないでよ。ね?」


 真鍋さんに負けず劣らず肌面積の多い水着を着ているのは、甲山さん。彼女は先程カウンターで借りてきた浮き輪をその手に持ちながら、満面の笑みを浮かべていた。


「とりあえず、水に入ろっか?人目も気になるし・・・」


 私はどことなく気マズくなって、そう声をかける。


「うん、そうだね!時間は有限だし、皆行くぞぉーーっ!!」

「「「「うおぉーーーーっ!!」」」」 


 いやだから、走っちゃダメなんだって・・・。



 *****



 本日私たちが遊びにきたのは、市内にある屋内型のプール施設。電車に乗ってやって来たそこはそこそこに大きな施設で、お小遣い事情の厳しい私たちでも比較的リーズナブルに楽しめる娯楽施設であった。

 そしてそんな場所まで遥々やって来たメンバーは、五人。私とともちゃんと眞鍋さんと、あとは甲山さんと隣のEクラス所属の木下さんである。


 私は木下さんとはあまり関わりが無かったのだけれど、彼女はともちゃんの親友の一人であり、私の秘密を共有している一人でもある。そんな彼女も含めて私たちは短い夏休みを目一杯楽しもうと本日のために皆で水着を買いに行ったりもして、その時のことはちょっともう思い出したくもない。


紗彩さあやも、だいぶお胸が育ったねぇ~?」

「あ、うん・・・。まぁ・・・」


 ニヤニヤとした笑みの眞鍋さんが、木下さんの胸を眺めている。大人しめのワンピース型の水着を着ている木下さんの胸元はしかし、決して大人しくなんてなかった。


「夏姫ちゃんは、うん・・・」


 浮き輪でプカプカ浮きながら近付いてきた甲山さんが、私の胸を見ながらそう呟く。何ですか?何か言いたいことでもあるんですか?


「いや、何でもないよ?」

「・・・・・」

「ただ、何ていうか・・・。うん・・・」

「・・・・・」


 因みになのだけれど、今私が着ているのは超大人しめのワンピース型水着である。水着を買いに行った時には眞鍋さんたちからどエロい水着を勧められて焦ったりもしたのだけれど、サイズ的に厳しくてそもそも着れなかったのだ。

 なのである意味助かりはしたのだけれど、何だろうこのモヤモヤは・・・。何ていうか、何かに負けた気がする・・・。


「おっといけね・・・。危なくポロリしちゃうとこだったぜ」

「ちょっとさっちゃん?!」

「大丈夫大丈夫!ギリセーフギリセーフ!!」

「「「「・・・・・」」」」


 同じ高校一年生だというのに、この差はどこから来るのだろう?私は目の前でポヨンポヨン揺れているそれを眺めながら、この世の真理について思いを巡らせる。


「男の人もたくさんいるんだから、本当に気を付けてよ?」

「うん、大丈夫大丈夫。いざとなったら潜水するからさ」

「「「「・・・・・」」」」


 日差しのキツい真夏の夏休み、プールではしゃぐ乙女たち。それは実に夏らしい一幕であり、水飛沫を上げながら泳ぎ回る彼女たちの表情は明るかった。

 そんな彼女たちに混ざりながら、私はその身を水中へと沈める。時折視界に映るともちゃんの姿に胸の内を締め付けられながらも、私は精一杯の笑みを浮かべるのだった。

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