第173話:夏休みの一幕
「うおりゃあ~~!!」
部屋の中に、私の声が響き渡る。
「これでどうだぁ~~!!」
普段は大きな声など出さない私が、腹の底から大きな声を上げている。
「うるさい」
「痛い?!」
突如隣から放たれたガチめのチョップに、私は涙目になる。
「近所迷惑になるから、もっと静かにしなさい」
「はぁ~い」
私は今、陽介と共にゲームに興じていた。私はさっきから、ゲームで陽介にボコボコにされていた。
「もうちょっとだけ手加減してくれてもいいんだよ?」
「いや、もう十分過ぎるほど手を抜いているんだが?」
「・・・・・」
「・・・・・」
マジで?!
「マジで・・・」
そっか、そっかぁ・・・。
「別のやるか?」
「う、うぅ~ん・・・」
「夏姫、アクション系のゲーム苦手だろ?」
「むむぅ・・・」
でも、負けたままってのもなぁ~。
「「・・・・・」」
チラ、チラッ?
「・・・・・。もう一回だけだぞ?」
「わぁ~~い!!」
「・・・・・」
「次は絶対に勝つから!!」
そうして私は、再度陽介にボッコボコにされる。
「「・・・・・」」
ねえ、陽介?手、抜いてくれてもいいんだよ?
「・・・・・」
よ、陽介?
「やっぱ、別のゲームにするか」
「・・・・・」
「これなら、夏姫にもワンチャン」
「・・・・・」
陽介が取り出したのは、勝敗に運が大きく絡むゲーム・・・。サイコロを振り、出た目の分だけ進みゴールを目指す、オーソドックスなゲーム・・・。
「次は、勝つから・・・」
「お、おう・・・。ガンバレよ?」
そして、三度ボコボコにされる私。
「「・・・・・」」
何故・・・。
「夏姫は、運も悪いからなぁ・・・」
「・・・・・」
陽介の憐れむような視線が、私の心臓を射抜く。
「どうすっかなぁ~」
「・・・・・」
「これなら・・・、いや、こっちなら・・・」
「・・・・・」
そうしてまた、私の連敗記録は塗り替えられていくのであった。