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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第九章:とある恋の結末
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第167話:うじうじ

 私が高校生になって初めての夏休みが、もう目の前へと迫っていた。そんな夏の日差しが眩しいとある日に、私は幼馴染の陽介が女子から告白を受けた事実を知ることとなった。

 それは本当に青天の霹靂で、私は大きく動揺することとなった。つい先日までは自分自身のことだけでいっぱいいっぱいであり、何なら今現在も自分のことだけであっぷあっぷな私は、幼馴染に起きた突然の出来事に余計にあっぷあっぷすることとなったのだ。


 とはいえ、私も陽介ももう十六歳である。だからまあ、そんなこともあるだろう。現に私もつい先日男子から告白を受けたし、だから勉強も運動もできてその上人当たりもよくて、ついでにルックスも悪くない陽介が女子から告白を受けるのも自然な流れっていうか・・・。


「はぁ~」


 一番落ち着くはずの、私の部屋。その中にあるベッドの上で、私は溜息を零す。


「陽介にそれとなく訊くのは、無しだよねぇ~。はぁ・・・」


 気になる、とても気になる・・・。


「でも、これ以上私が動くと余計に事態がややこしくなるっていうか・・・」


 陽介に告白したらしい一年の女子生徒、その名も新島 小春さん。彼女は陽介と同じBクラス所属であり、私が所属するFクラスの教室からは遠いため、偶然を装って探りを入れることも難しい。


「う、うぅ~む・・・」


 新地君に頑張ってもらいサッカー部経由で探るのは、無しだ。彼には既に十分な情報を貰っているし、それ以上に不要な苦労を押し付けてしまっている。一応深山君については誤解を解いてきたらしいのだけれど、これ以上彼に迷惑を掛けることはできない。

 同じくサッカー部に所属する甲山さんの情報によると、サッカー部の様子を見に来る女子生徒は偶にいるらしい。ただその殆どは上級生たちの顔見知りであり、自分たちの部活動が休みの日の暇潰しで冷やかしに来るだけというか、そんな感じであるらしいのだ。


「うぅ~~む・・・」


 やはり、陽介に訊くしかないのか・・・。友達に聞いたんだけどぉ~?的な感じで、訊くしかないのか・・・。


「でも、でもなぁ・・・」


 それはそれで、怖いんだよなぁ・・・。


「もしも誤魔化されたりしたら・・・。逆に『うん、そうだよ』って返されたら・・・」


 私は一体、どんな反応を返せばいいのだろう・・・。


「あ゛あ゛あ゛ぁぁあ゛ぁあ゛ぁぁ~?!」


 悩むあまり、変な声が出てしまった。私は近所迷惑にならない程度の奇声を発しながら、ベッドの上を転げ回る。


「もう、寝よ・・・」


 今の時間は、夜の二十二時。いつもより少しだけ早いけれど、やるべきことは全部終わってるし。


「考えても答えは出ないし、はぁ・・・」


 そうして私は、枕元に転がっていたスマホを手に取る。それを机の上へと戻そうとして、突然の着信音と共に震え出したそれにビビり床へと放り出してしまう。


「こ、この時間に電話?え、雪ちゃんから?」


 電話を掛けてきたのは、最近すっかりご無沙汰してしまっている私の従妹。


「あの、もしもし?雪ちゃん?」


 今は伯母さんの監視下に置かれ、厳しい生活を余儀なくされているはずの彼女に私は恐る恐る声を掛ける。一応、スマホ越しにちょくちょく連絡自体は取っているのだけれど、最後に直接会ったのは三カ月以上前だしなぁ~。


「夏ちゃん、久しぶり・・・。今、ちょっとだけいい?」


 快活だった彼女の声は、掠れていた。そして、一切の生気が感じられなかった。


「夏休みにさ、遊ぶ約束したじゃん?久しぶりに、皆で集まろうってさ」

「う、うん・・・」

「あれ、無理かもしれない。私、このままだと夏休み中塾漬けになるかもしれない」


 ・・・・・。


「私、思うんだよね。この世に数学って必要かなってさ・・・」

「えぇ?」

「ついでに言うと、ここは日本じゃん?ジャパンじゃん?!何で英語が必要なの?!おかしくない?!」

「・・・・・」


 私が陽介の件で悩んでいるように、従妹の雪ちゃんも勉強のことで悩んでいるらしい。私は一方的に垂れ流される従妹の愚痴を右から左へと聞き流しながら、コッソリと欠伸を零すのだった。

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