第166話:やっちまったぜ・・・。
トイレ帰りに、偶々遭遇したクラスメイトの新地君。私は彼に昨日の一件の謝罪を敢行し、そのまま一緒に教室へと戻ってきた。だがしかし、そんな私たちの前には表情を強張らせた深山君がいて・・・。
「俺は、信じてたのにぃ~~?!」
「「・・・・・」」
「ちくしょぉ~~~~?!」
「おい!深山?!ちょっと待て誤解だから?!」
猛スピードで向こう側へと駆け抜けていく深山君と、それを追う新地君。そんな二人を茫然と見送った私は、一先ず教室へ戻ることにした。
「おかえりなっちゃん。廊下が騒がしかったけど、何かあったの?」
教室へと戻ってきた私を、イツメンの三人が出迎える。因みに彩音ちゃんは文芸部の面々と一緒に図書室へと出向いており、今この場にはいない。
「いや、それが・・・」
私は、ただトイレに行っていただけなのに・・・。それだけのハズなのに、何故・・・。私は先程の出来事を、搔い摘みながら三人へと説明する。
「「「・・・・・」」」
呆れたような、何か可哀想なモノを見るかのような三人の視線が私の顔を射抜く。
「なっちゃん・・・。昨日の今日で、何故そんな迂闊なことを・・・」
「いや、だって・・・」
新地君に迷惑を掛けたから、だから謝らなきゃって・・・。
「だとしても、タイミングってものがあるでしょ?!なっちゃんは迂闊過ぎるんだってば?!」
そ、そうかな?そうかも・・・。
「でも、ちゃんと周りに人がいないか確認したし・・・」
「戻ってくる時に一緒にいたら意味ないでしょ?!」
そ、そうかな?そうだよなぁ・・・。
「ついこの間まで、男子たちが教室の前まで来てたでしょ!!」
「はい・・・」
「んで昨日の話、美月から聞いたでしょ!!」
「ハイ・・・」
はい、ハイ、その通りです。仰る通りでございます・・・。
「なっちゃんがサッカー部を見に行った本当の理由を、サッカー部の男子たちは知らない。だから男子たちはその理由を好き勝手妄想して、前みたいになっちゃんの様子を見に来るかもしれない」
それは、そのぉ・・・。
「現にさっき、深山が来てたんでしょ?」
ハイ、その通りでございます。
「「「はぁ~」」」
「・・・・・」
三人からの視線が、痛い。三人の零す溜息が、怖い・・・。
「まあ、あと少しで夏休みに入るし、前回ほど長引きはしないだろうけどさ。でも、なっちゃんはもうちょっと考えて行動しないと」
ともちゃんの言葉に、私は返す言葉もない。
「でないと、本当の本当に身バレしちゃうかもよ?」
その日私は、三人から厳しいお言葉をたくさん頂戴することとなった。よくよく考えてみるまでもなく、確かに私の行動は迂闊で軽率だったため、返す言葉も見つからない。
そして何よりも、物凄く疲れた表情を浮かべながら教室へと戻ってきた新地君が私の中の罪悪感を刺激する。いやもう本当に、申し訳ございませんでした・・・。