表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第一章:激動の夏休み
16/241

第16話:タイムリミット

 空調の効いた乙女チックさの欠片もないともちゃんの部屋で、僕はいつもの二人とゲームに興じていた。


「知美、お前少しくらいは宿題進めたのか?」

「いや、全然全く微塵も進めてない」


 陽介の問い掛けに、清々しいまでの笑顔でそう答えるともちゃん。


「そう言うあんたたちはどうなのよ?」

「俺?俺はもう半分は終わらせたぞ」

「え゛?」

「夏樹だって似たようなもんだぜ?夏休み最終日まで宿題を残してるの、お前くらいだし」

「くっ・・・」


 ともちゃんのお母さん、その辺については厳しそうなイメージがあるんだけど・・・。


「ともちゃんは、お母さんに何も言われないの?」

「めっちゃ言われる。昨晩も滅茶苦茶怒られた」

「それなのにしないの?」

「うん、しない。言われたからやるって、それってなんだか違くない?」

「えぇ・・・」


 朝早くからともちゃんによって呼び出され、昼食時には一旦家へと帰り、そして再び彼女の部屋へと再集合し・・・。


「あははは!また私の勝ぃ~~!!」


 今年で十四歳になるはずの幼馴染の女の子は、心の底から楽しそうな笑顔を浮かべていた。


「お前、ちょっとくらいは手を抜けよ・・・」


 同じく今年で十四歳になる幼馴染の男の子も、楽しそうにしていた。


「ねえ、なっちゃん」

「ん?」

「大丈夫?今日、何だか元気なさげに見えるけど」

「ううん、大丈夫。ちょっと寝不足なだけ」


 そう言って、僕は無理矢理に作った笑顔を浮かべる。


「ふ~ん?そっか・・・」


 そうしてその日も楽しい時間を二人と一緒に過ごし、やがて日も暮れ始めて・・・。


「あのさ・・・」


 陽介と一緒に部屋を後にする僕に向かって、ともちゃんは語り掛ける。


「何かあったんなら、私たちに言いなよ?何て言うかさ、私たち、友達じゃん?」

「ともちゃん・・・」


 その頬を少しだけ赤く染めながら、僕たちから少しだけ視線を逸らしながら、ともちゃんは続ける。


「また、明日ね?」

「・・・・・。うん」

「今年の夏休みは、去年以上に皆で遊び倒そうね?」

「うん、うん・・・」


 ともちゃんに見送られて、僕と陽介はそれぞれの家へと向かって歩みを進める。そして・・・。


「それじゃあ、また明日な?」

「うん」

「えぇと、まあ、なんだ・・・。何か悩みがあるんなら、言えよ?」


 家の扉へと手を掛ける僕に向かって、陽介はそう語り掛ける。


「最近さ、夢を見るんだよ」

「夢?」

「そう、夢・・・。真っ白な空間でさ、鬼の形相を浮かべる武井君がひたすら追い掛けてくる夢」

「えぇ・・・」


 陽介に向かって、僕は悪戯っぽい笑顔を浮かべる。


「学校が始まったらさ、また守ってね?」

「お、おう・・・」

「僕、武井君のこと超苦手だから」

「・・・・・、なるほどな?ああ、任せとけ!!」


 陽介と別れ、そのまま自室へと戻って・・・。


「・・・・・」


 僕が視線を向けた先にある壁掛けカレンダーの日付は、運命の日の前日を示していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ