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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第八章:一方通行の恋
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第148話:伊達メガネ大作戦:決行!!

 私が通う大宮高校には一学年当たり二百四十名の生徒がいて、それが各クラス四十名ずつの六クラスに分けられている。そんな中で私はFクラス所属、深山君はAクラス所属と互いに一番遠いクラスに所属しており、本来であればあまり親しくない私と深山君が学校内で関わりを持つことはほぼほぼ無かったハズなのである。

 来年になればクラス替えもあるだろうし、隣のクラスであったならば特別教室での合同授業などで関わることがあったかもしれないのだけれど、基本的には同じクラスの子たちと過ごすし、今年いっぱいは大丈夫なハズだったんだけどなぁ・・・。


「一色さんって、メガネかけてたんだ?」

「あぁ、うん・・・。運動する時には危ないかなって思って外してたんだけど、見えづらいと余計に危ないなって・・・」


 律儀にも、二人三脚というしょうもない競技のためにわざわざ二クラス合同での練習時間を設ける我がFクラスとAクラスの面々。こんな競技でも一応各組の勝敗に関わってくるらしく、運動好きの子や部活動で先輩たちと交流のある子たちによる声掛けによって最近の昼休みはいつもこんな感じ。

 勿論やっているのは二人三脚の練習だけではないのだけれど、身バレのリスクを少しでも減らしたい私としてはこの時間は非常に気が重い。伊達メガネまで準備して夏樹成分を減らそうと頑張った私の気苦労を、意地悪な神様にも味わってほしいものである。


「お疲れ様、前回の時よりもタイム縮まったんじゃない?」

「そ、そうかな?」

「うん。この感じならビリはないだろうし、俺たち意外と相性良いのかも?」

「・・・・・」


 結んでいた紐を解きそれとなく距離を取って、私はともちゃんたちの元へとにじり寄る。


「お疲れ」

「うん、疲れた」

「今のところ、バレてないっぽい?」

「だといいんだけどさ」


 深山君は小学生時代からの知り合いであり、何だかんだで長い付き合いだったりする。とはいえ小中学生時代にも違うクラスになることはあったし、私自身が男子を避けていたこともあって仲が良いわけでもない。

 中学二年生の夏休み終わりから私は別の学校に転校したし、今回の顔合わせまでには二年近くの月日が経っている。それらに加えて私の髪の毛は伸びているし制服は女子のだし、だからワンチャン?


「うう~ん」

「・・・・・」

「むむぅ~」

「・・・・・」


 その日の授業が全て終わり、クラスメイトの皆が各々の目的地へと散っていく中で、眞鍋さんは私の顔を見ながらウンウン唸っている。


「いややっぱ、なっちゃんはなっちゃんだわ」

「えぇ・・・」

「夏樹君の面影がバッチリ残ってるし、見る人が見れば一発だって」

「・・・・・」


 それはつまり、深山君にはもうモロバレってことですかね?伊達メガネは意味なかったってことですかね?


「それは分からないけどさ」

「えぇ・・・?」

「あの反応、何とも言えないんだよねぇ~」

「・・・・・」


 練習初日には、お互いに「はじめまして」って挨拶したんだけどなぁ・・・。


「もしかしたらって思ってはいるけど、確証が持てない状況とか?」

「あぁ~、それはあるかもねぇ~」

「私も最初はううん?ってなったけど、でも確証は持てなかったし・・・。だからさっちんから話を聞くまでは、その件に触れられなかったっていうか・・・」


 甲山さんはそう言って、苦笑いを浮かべていた。


「ぶっちゃけ、意識してないと気付かない人は気付かないと思う。元々親しい人ならともかく、高校はただでさえ人が多いしさ」

「そうそう。だから意外とバレてないかもよ?そもそも男子だった夏樹君が女子になってるなんて思いもしないだろうし、だから肯定せず私は何も知りませんってしらを切ってればいいんじゃない?」


 う~ん、そうなのかなぁ~。


「私は今サッカー部でマネージャーしてるわけなんだけどさ、深山君たちを見てても特段変な感じはしないし。それこそ夏姫ちゃんのことについて何かを訊かれたこともないし。だから、とりあえず何かを言われたら否定して、しらを切ってればいいと思う」

「・・・・・」


 教室で部活動組と別れ、私とともちゃんはそのまま駅へと向かう。


「前にも言ったと思うんだけどさ、何かあっても私たちがいるから」

「ともちゃん・・・」

「それにさ、一番肝心な女子たちを味方に付けてるんだから、余計な心配はいらないって」

「・・・・・」


 私たち以外にも、駅へと向かう生徒たちがチラホラといた。彼等も私たち同様仲の良い者同士で駄弁りながら、歩道をゆっくりと進んでいた。

 そんな中に、見知った人物が一人。その人物は大柄な体躯を大きく揺らしながら歩みを進め、そんな彼の様子に私はビクッと体を小さく震わせる。


「・・・・・」


 私が最初からちゃんとした男子か女子だったならば、こんな思いを抱えずともよかっただろうに・・・。遠くに見える大柄な男子をその視界に収めながら、私は心の中で大きな溜息を零すのだった。

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