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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第八章:一方通行の恋
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第147話:伊達メガネ大作戦:準備編

 六月中旬に行われる予定の体育祭が目前へと迫ったとある週末の土曜日、私は駅前のショッピングモールにいた。私はキャスケット帽を目深に被りながら、慎重に辺りを窺う。


「なっちゃん、挙動が不審過ぎるって・・・。それじゃあ逆に目立つから・・・」


 近くにいたともちゃんが、そう言って呆れたような視線を向けてくる。


「でも、だって・・・」


 この辺りは、周辺に住む学生たちにとって唯一と言っていい遊び場なのである。それはつまり、知り合いに出会う確率が非常に高いことを意味するのだ。


「だから、パッと見なっちゃんて分からないような恰好をしてるんでしょ?」

「いや、そうだけど・・・」

「変に目立ったら、それこそ人目を集めて意味ないじゃん」

「・・・・・」


 今の私は、超ガーリーな格好をしている。いつもであればロングスカートなのだけれど、本日は膝上丈のミニスカートを穿いており、上も初夏っぽく涼しげなポンチョ風の上着をなびかせながら超女の子している。

 本当であればもうちょっとボーイッシュな格好をしたいのだけれど、それをともちゃんや母さんが許してくれない。特に母さんは最近私を着せ替え人形にするのにハマってしまって、こんなにも短いスカートを・・・。


「今のなっちゃんを見て、それを昔のなっちゃんと結び付けられる人はそうそういないって。だから大丈夫」

「うぅ~」

「髪型だって弄ってるし、帽子だって被ってるしさ」


 ともちゃんの言う通り、遠くから見て私のことを夏樹だなんて思う人間はいないだろう。そのための変装なのだし、そうでなかったのならばミニスカを穿いて外出したりなんかしない。


「ほら、サッサと行くよ。伊達メガネを見るんでしょ?」

「むぅ~」


 私と対照的にボーイッシュな衣装で身を包んだともちゃんに手を引かれながら、私は目的の店へと向かう。


「はい、とうちゃ~く」


 目的の店は、モールの中ほどにあった。その店は様々なファッションアイテムを取り扱っており、その中には私が求めていた物も含まれている。


「これなんてどう?」

「う~ん・・・」

「じゃあこれは?」

「・・・・・」


 ともちゃんは商品である伊達メガネを次から次へと手に取り、それを私へと押し付けてくる。私はそれらを片っ端から装着し、近くにある姿見を覗き込んではウンウンと唸る。


「なっちゃんは小顔だから、メガネ似合わないね?」

「・・・・・」

「いっそのこと振り切って、グラサンでもかける?」

「いや、それ学校ではNGだから・・・」


 そうして小一時間ほどああでもないこうでもないと悩み抜いた末、私は一つの伊達メガネを購入した。


「まあ、あくまでも身バレ防止用のアイテムだしね」


 店を出て近くにあったベンチへと腰掛けて、買ったばかりのそれを私は身に着ける。


「どう?」

「う~ん・・・」

「これなら、身バレは防げるかな?」

「・・・・・」


 身バレを防ぐためには、少しでも夏樹の顔のイメージから遠ざける必要がある。そのためのアイテムとして、伊達メガネはそこそこ有効なハズ・・・。


「ま、まあ、大丈夫じゃない?たぶん・・・」

「・・・・・」

「仮にバレたとしても私たちがいるし、何とかなるっしょ!!」

「・・・・・」


 破いた包装を鞄へと仕舞い、私たちはベンチから離れる。


「せっかくだし、もうちょっとだけ遊んで行こうよ!!ね?」


 私の手を取り、ともちゃんは駆け出した。


「それじゃあ、先ずはあっちのエロい下着売り場へゴーー!!」


 伊達メガネのレンズ越しに見るともちゃんの表情は本当に楽しそうで元気いっぱいで、そんなハイテンションな彼女に終始引き摺られながら、私はボロボロになるまでモールの中を駆け回るのだった。

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