第146話:望まぬ結果
時は少しだけ遡り、六月初旬のとある日の昼休み。
「あぁ~、体育祭かぁ~。面倒だなぁ~」
従妹の雪ちゃんと同様に、運動系のイベントにはあまりヤル気を見せない幼馴染のともちゃん。
「中学の時に比べれば競技数も少ないハズだし、そういった意味では楽かもよ?」
一学年当たり、二百四十名。全学年合わせて、七百二十名。そんな大人数で行われる体育祭は、当然ながら一人当たりの参加競技数が激減する。
「確定で参加しないといけないのって、学年リレーと二人三脚だけだっけ?」
「そうそう。他は各クラス代表の競技と任意参加の競技と、あとは応援くらいだね」
ホームルームで軽く説明を受けた感じだと、ヤル気のある人がより多くの競技に参加するみたいな話だったし。ウチのクラスには運動好きの子が多くいるから、私たちは後方から「がんばえ~」って声援を飛ばす係になりそう。
「でも、二人三脚ねぇ~。しかも男女混合の」
「・・・・・」
「何で男女混合なんだろう?」
「・・・・・」
ともちゃんは、渋い表情を浮かべている。ちなみに私も、たぶん渋い表情を浮かべている。
「小学生の時にやった、男女混合のフォークダンス的なアレなのかもしれないねぇ~」
「フォークダンス?」
「うん、そう。他の学年も男女混合の競技があるし・・・。だから、つまりはそういうことなんじゃない?」
「「「「・・・・・」」」」
フォークダンスかぁ~。そういえば、小学生の時の体育祭とかでやったっけかなぁ~。
「普段は恥ずかしくてまともに会話することも難しいけれど、この機会を利用すれば気になるあの人との距離を一気に縮められるかもしれない。これはつまり、恋する奥手な男女を後押しするための神の采配!!」
「「「「えぇ・・・」」」」
「私も、鈴木君と肩を組みながら体をくっつけてゴールするの。そして・・・」
「「「「・・・・・」」」」
いやまあ、組む相手が思い人だったならそうなるかもねぇ~。でも、そう思い通りにはならないだろうし・・・。
「さっちゃん・・・。もしも他の男子と組むことになったらどうするのよ?」
「いや、そんなことにはならない!神様は、きっと私の願いを叶えてくれるハズ!!」
「えぇ~?そもそも組むクラスからして別のクラスになるかもしれないのに?」
「大丈夫!きっと大丈夫なハズ!!」
その自信はどこから来るのだろうか?いやまあ、何を信じようとそれは眞鍋さんの自由なんだけどさ・・・。
「う~っす。ただいまぁ~~」
そうしてイツメンで駄弁っていると、教室の前方から一人の男子生徒の声が聞こえてきた。彼は本日の日直であり、とある会議へと強制参加させられていたのである。
「体育祭の組み分け決まったから発表するなぁ~。えぇと・・・」
眞鍋さんが、期待に満ちた視線を男子生徒へと向ける。そんな視線を知ってか知らずか、男子生徒は手に持った紙へと視線を落とし、抑揚の薄い声でその結果を伝える。
「ウチのクラスは、Aクラスと組むことになりました。色は赤です」
その言葉を聞いた瞬間、眞鍋さんの瞳から光が消える。眞鍋さんの顔から、生気が抜け落ちていく。
「で、このあと男女混合の二人三脚の組み合わせについて決めなくちゃいけなくて、それで・・・」
それから時は進み、不幸にも私はAクラス所属の深山君と組むことになって・・・。
(ヤバいよ・・・。マジでヤバいよ?!)
私は今、ガチでピンチなのです・・・。