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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第七章:高校一年生
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第135話:不意打ち

 ともちゃんや眞鍋さんの共通の女友達であり、峰島中学時代にクラスメイトだった少女、その名も木下 紗彩さん。彼女への私が抱える秘密の告白は、一先ず無事に終了した。

 その日は私たち以外にも甲山さんと彩音ちゃんもいて、私含め計六名の女子たちでカラオケ店へと突入し、その空間で秘密の共有会が行われたのである。


「そっかぁ~、なるほどねぇ~。一色さん、色々と大変だったねぇ~?」


 甲山さんへ秘密を開示した時とは違って、木下さんは私の話を聞いても落ち着いていた。それは眞鍋さんが前もってフォローを入れてくれていたこともあるとは思うのだけれど、彼女の大らかさというか、優しい人柄によるところが大きいのかもしれない。


「何はともあれ、とりあえず歌おっか?」


 そうしてその日は比較的平穏に終わり、その翌日・・・。私は雑に髪の毛を纏めラフな格好をし、ともちゃんの部屋にいた。


「ゲームが、解放されました」

「・・・・・。そっか・・・」

「なので、久しぶりに遊び倒します!!」

「・・・・・」


 嬉しそうに雄叫びを上げる幼馴染を見て、私は苦笑する。何だかんだとありはしたけれど、昨日も散々遊び倒したばっかりなんだよねぇ~?


「本当は陽介も誘おうと思ったんだけど、あいつ部活だし・・・」

「サッカー部に入ったんだってね?(仮)らしいけど・・・」


 陽介は運動が好きだったし、部活に入ること自体は別に不自然でもないんだけれど、よりにもよってサッカー部なんだよねぇ・・・。


「ともちゃんてさ、武井君のこと知ってる?」

「まあ、知ってるっていえば知ってるけど・・・。でも、あんま絡みないしなぁ~」


 私が最後に武井君と絡んだのは、中学二年時の夏休みのあの日。珍しくともちゃんが部活してるって聞いて、それでその様子を見に行ったあの時だ。


「陽介が中学時代に部活動を辞めた理由の一つが、武井君なんだよねぇ~」

「あぁ、そうらしいね?」

「ともちゃんは、この話陽介から聞いてないの?」

「いや全然。薄っすらと聞いたような気もするけど、覚えてないなぁ~」


 武井君は小学生の時から本格的にサッカーをしていて、地元のサッカークラブにも所属していたらしい。大柄な体躯と小さな時から鍛え上げられたフィジカルは小柄な私から見て非常に脅威的で、粗暴な言動も相まって私は彼のことを非常に苦手としていた。

 一方で、先輩たちや顧問の池田先生からはそこそこ可愛がられていた気もする。彼のサッカーに対する情熱はド素人である私から見ても十分に理解できたし、その点が大きく評価されていたんだと思う。


「でも、部長には陽介が推されてたんでしょ?」

「・・・・・。そうらしいね・・・」

「だったら、そこまで評価されてなかったんじゃない?」

「・・・・・」


 ともちゃん、中々に辛辣だねぇ・・・。とはいえ実際問題、武井君はフィジカルを活かした荒いプレーが多かったし、そもそも言動がちょっとアレだったし・・・。サッカーへの情熱やヤル気はともかくとして、そういったところが大きく足を引っ張ったのであろうことは想像に難くない。


「で、そんな武井君が陽介に粘着してるって?」

「中学の時は、そこそこぶつかってたんだよねぇ~。武井君から一方的に」

「ふ~ん?」

「でも、私が転校したあとのことは詳しく知らないから、ともちゃんが何か知らないかなって」


 そう言って私は、隣に座るともちゃんへと視線を向ける。


「前から思ってたんだけどさ、なっちゃんて偶にデリカシーがないっていうか、何ていうか・・・」


 私の視線を受けたともちゃんは、そう言って頬をプク~っと膨らませる。


「陽介はどうだか知らないけどさ、私はなっちゃんのことでそれどころじゃなかったんだけど?」

「え?」

「私、なっちゃんが突然いなくなって、連絡も取れなくて訳分からなくて」

「・・・・・」


 いや、その・・・。


「まあ、いいけどさ・・・。あの時はなっちゃんも大変だっただろうし・・・」

「・・・・・」

「でも、なっちゃんにはもうちょっと乙女心ってものを解ってほしいっていうか」

「・・・・・」


 ゲームのコントローラーを置いたともちゃんが、私の方へと体を寄せてくる。


「あの、ともちゃん?」


 ともちゃんは戸惑う私を置き去りにし、そのまま私の頬を両手で固定したまま唇を重ねてくる。


「私、なっちゃんのことまだ好きだから」

「・・・・・」

「男とか女とか関係なく、好きだから」

「・・・・・」


 頬をプックリと膨らませたまま、ともちゃんは再びゲームのコントローラーを握る。


「そこんとこ、よろしく」


 そう言って視線を画面へと戻したともちゃんの横顔を、私は言葉も無くただただ茫然と眺めるのだった。

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