第129話:篭絡?
私は今、メイド服を着ている。それはかつて眞鍋さんのお姉さんによって自作された物であり、誠に遺憾ながらもその出来栄えは非常に素晴らしいものであった。
「どうよ、みっちゃん」
「これは・・・」
「イイでしょ?萌えるでしょ?」
「う、うむ・・・」
メイド服を着て、片手でお菓子を載せたお盆を持って、ぎこちない笑みを浮かべる私。そしてそんな私を頬を赤く染めながら見つめる甲山さん。
「私がかつて見たかったのは、コレなのよ!あの日あの時、夏姫ちゃんがまだ夏樹君だった頃に見たかったのは、コレなのよ!!」
鼻息を荒くした眞鍋さんの絶叫が、室内に響き渡る。
「でもあの時は、サイズの問題でおじゃんになっちゃって・・・。私、悔しくてさ・・・。だからお姉ちゃんに土下座してありったけのお小遣い渡して頼み込んで、コレを作ってもらったの」
その情熱は、できれば他のことに向けてほしかった。衣装制作のために消えてしまったそのお小遣いは、もっと有意義に活用してほしかった。
「ねえ、なっちゃん。お帰りなさいませご主人様ぁ~ってやってよ」
「えぇ・・・」
「ほらほら、早く!!」
「・・・・・」
お、お帰りなさいませご主人様・・・。
「違う!もっとニッコリ笑って、もっと媚びるように!!」
「え、えぇ・・・」
「これもみっちゃんを引き込むために必要なことなんだって!!」
「・・・・・」
お、お帰りなさいませご主人様!!
「媚びが足りない!萌えが足りない!!」
お帰りなさいませご主人様!!
「もっと媚びて!もっと女を出して!!」
お、お帰りなさいませご主人様ぁ~。
「うむ、合格」
「・・・・・」
「どう、みっちゃん?」
「イイ、凄くイイ。何ていうか、ご馳走様でした」
その後も私は、三人の玩具にされた。
「そう、そんな感じ!!いいねぇ~、エロいねぇ~」
今日は甲山さんに私の事情を話して、それで・・・。
「もうちょっと上目遣いでよろしく!それと両手は胸の辺りで組んで、そう!!」
それなのに、何故私はメイド服なんて着ているのだろう・・・。
「みっちゃんもほら、何かしてほしいポーズはないの?今ならどんなポーズだってしてくれるよ?」
「う、う~んと。じゃあ・・・」
ともちゃんと眞鍋さんは、明らかに悪乗りしてるし・・・。甲山さんも何だかんだで楽しんでるし・・・。
「いやぁ~、余は満足じゃ!たっぷり堪能した!!」
あ、そうですか・・・。
「てなわけでみっちゃん、なっちゃんは立派な女の子になったから。今後ともよろしく」
「うん、おけ」
あ、お~け~なんだ・・・。
「ところでさ、他には衣装ないの?バニースーツとか、もっとエロいヤツ」
あの、甲山さん?
「もう、みっちゃんも好きだねぇ~?」
「いやだって、これはハマるでしょ?小動物系の女の子が嫌々エロ可愛い服を着せられて、瞳をウルウルさせながらポーズ取ってくれるなんてさ」
・・・・・。
「今度、またお姉ちゃんに頼んでみるよ」
「え、本当?」
「うん、作れるかどうかは分かんないけど。あっ、でもその前にサイズ測っとかないと」
いや、測んなくていいから?!もう本当に勘弁してください?!
「大丈夫大丈夫、痛くしないから」
「あぁ・・・」
「ともっちはメジャー持ってきて」
「うす、ちょっと待ってて」
あの、えぇと・・・。
「さあ、服を脱ぎ脱ぎしましょうねぇ~。パンツとかブラは着けたままでいいからさ」
ちょ、まっ・・・。
「「うふふふふ・・・」」
こうしてまた、私の尊厳は失われてしまうのだった。