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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第六章:アンラッキー警報発令中
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第120話:イタズラ

 時は少しだけ過ぎ、今は冬休みもあと僅かとなったとある日の昼下がり。私は陽介と二人で買い物に出掛けていた。


「ともちゃん、この時期に風邪なんて・・・」

「まあ、あいつは体頑丈だから。二、三日も寝てれば回復するだろうさ」


 不幸にも風邪をひいてしまったともちゃんは現在、自室で療養中。


「それよりも、今日の買い物の内容は?」

「えぇ~と、今日は豚肉とネギと白菜と、それから・・・」


 私の両親は、冬休み期間中である現在もなお学校にいる。今は高校生たちも受験シーズン真っ盛りであり、特に三年生たちの学年主任を務めているらしい父さんは目の下のクマをより濃くしながら非常にピリピリとしていた。

 だから、受験生ではあるものの今のところ一番自由に動ける私が買い物を担当していた。最近は父さんだけでなくて母さんも忙しそうだし、休みの間くらいはね?


「今日は鍋か?」

「うん、その予定」

「いいなぁ~、ウチは最近肉が少なめなんだよなぁ・・・。今年は親父のボーナスが少なかったから・・・」

「・・・・・」


 陽介の家の悲しい経済事情を聞きながら、私たちは近所のスーパーへと歩みを進めていく。


「日中だと、やっぱ客が少ないんだな」

「そうだねぇ~、混雑を避けるなら開店直後かこの時間が狙い目かなぁ~」


 店内では必要な物だけを揃えたつもりなんだけれど、それは結構な量になってしまった。


「陽介、お願いします」

「おう、任せとけ」


 買った荷物の十割を陽介へと手渡した私は、非常に身軽である。いやぁ~、筋肉っていいなぁ~、私ももうちょっと筋肉付けないとなぁ~。


「ただいまぁ~」


 家へと帰り着き、陽介から受け取った荷物を冷蔵庫へと仕舞った私は、彼を労うべくおまけで買った缶入りホットココアを献上する。


「どうぞ、お納めください」

「うむ、苦しゅうない」


 指先でつまみを開けた陽介は、甘い香りを漂わせるその液体を一息に飲み干していく。


「どうでしょう?」

「うう~ん、ちょっと冷めてるな」

「・・・・・。マジか・・・」

「ああ、マジだぜ・・・」


 そっか、冷めちゃったかぁ~。


「ふ~む。それだとお礼としてはいまひとつですなぁ~?」


 そうだなぁ~、どうしよっかなぁ~?


「あっ、そうだ!ねえ陽介、ちょっと目を瞑ってよ!!」

「ん、こうか?」

「そうそう!!」


 確か、秋葉お姉ちゃんが残していった少女漫画に、こんなシーンがあったハズ・・・。


「ちゅ」

「・・・・・」

「えへへ」

「・・・・・」


 私は、目を瞑った陽介のほっぺへと軽くキスをする。ふはははは、どうだ陽介!砂糖増し増しの少女漫画風、幼馴染の女の子による感謝のちゅ~は!!


「いや、あの・・・」

「・・・・・」

「その・・・」

「・・・・・」


 イタズラっぽい笑みを浮かべる私とは対照的に、陽介は頬を真っ赤に染めたまま狼狽していた。え?ちょっとヤメてよその反応?!何かマジみたいで、こっちまで恥ずかしくなってくるじゃん?!


「「・・・・・」」


 今更ながら、何故私はこんなバカなことをしてしまったのだろう・・・。私はただ陽介を労いたくて、それ以上に彼を揶揄いたくて、ちょっとおバカなことを思い付いただけだったのに・・・。


「そろそろ、帰るわ」

「あ、うん」

「それじゃあ、またな?」


 玄関で陽介を見送って、そのままリビングに戻って空き缶を片付けて・・・。そうして自室へと戻った私が鏡を見てみると、私の顔は真っ赤になっていて・・・。


「・・・・・」


 そうして、私たちの冬休みは過ぎていく。そのうち学校が始まり受験日となって、やがてまた春が来る。

 

「と、とりあえず勉強しなきゃ。え、えぇと、問題集問題集・・・」


 新しい桜色の季節は、もうすぐそこにまで迫っていた。

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