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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第六章:アンラッキー警報発令中
114/241

第114話:新情報

「やっぱさぁ~、三年生の中だと鈴木君が一番大人だなぁ~って思うわけよ。てか、他の男子たちがガキ過ぎるだけなんだけどさ」


 いつもの四人プラス複数人のクラスメイト女子で集まり、私たちは恋バナに興じていた。今の時間はもう放課後であり、受験勉強に疲れ切った私たちは家に帰る前の束の間の時間で心の栄養を補給しようと教室に居残っていたのである。


「でもさぁ~、そのガキっぽさも悪くないっていうか」

「「「「「えぇ~~?」」」」」

「変に大人ぶるよりも、無邪気にスポーツやってる男子の方がカッコ良くない?」

「「「「「う、う~む・・・」」」」」


 女子とは、恋バナが好きな生き物であるらしい。この世の全ての女子がそうであるというわけではないのだろうけれど、少なくとも今私の周りにいる女子たちについては概ねその傾向があった。

 一方で、元男子という複雑怪奇な過去を持つ私にとってこの話題は非常に微妙なものであった。男子として過ごしてきたという消すことのできない事実が私の感情を搔き乱し、女子として純粋にその話題を楽しめないでいたのである。


木村きむらさんは、誰か好きな男子いる?」

「う~ん、特にいないかなぁ~。強いて言うなら鈴木君くらいっていうか、他の男子はちょっとねぇ・・・」


 修学旅行時のバス内ゲロ事件によって、木村さんは一種のトラウマのようなものを抱えていた。そんな彼女にとって、特にクラスの男子たちは受け入れがたいものになってしまっているのだろう。


「委員長は、誰かいる?」

「私も鈴木君くらいかなぁ~。彼って受けでも攻めでもいい顔しそうだし、寧ろ彼くらいしか絵にならなそうだし」

「「「「「・・・・・」」」」」


 BL普及委員会会長の枕崎さんが、いつも通りブレない回答をしている。そんな彼女の返答に数名の女子たちは顔を赤くし、他の女子たちは首を傾げていた。


「一色さんは、好きな人とかいないの?一時期は鈴木君と噂になってたしさ」

「う、う~ん・・・」


 鈴木君の話題はクリティカルっていうか、彼とは顔を合わせたくないっていうか・・・。先日のあれは鈴木君が悪いわけではないのだけれど、彼の目の前で女子としての尊厳を失ってしまった私としては色々と気マズ過ぎて今はちょっと無理っていうか・・・。


「特にいないかなぁ~。そもそも私、男子って苦手だし」

「え、そうなの?」

「うん。私って背が小さかったから、そのことで男子から色々と言われてたんだよね。それで苦手意識ができちゃったっていうか・・・」


 これは、事実である。嘘の設定を作る際は事実の中にほんのりと嘘を混ぜ込むのがコツらしいのだけれど、これは紛れもないただの事実である。


「そっかぁ~、新地のバカとかもよくチビチビ言ってるもんねぇ~」

「そうだねぇ~。男子ってホントガキっていうかバカっていうか」


 新地君ねぇ~、今は彼とも顔を合わせたくないかなぁ・・・。でも新地君は同じクラスだから避けようがないんだよなぁ・・・。


「じゃあさ、大代さんは誰かいないの?気になる人」

「ん、私?」

「そうそう!!」

「う~ん・・・」


 話を振られた雪ちゃんは、暫くの間視線を空中へと彷徨わせる。そして・・・。


「私には、夏ちゃんがいるからなぁ~」

「「「「「え?」」」」」

「私、将来は夏ちゃんをお嫁さんにするよ。夏ちゃんなら、料理とか洗濯とか余裕でこなせるだろうし」

「「「「「・・・・・」」」」」


 女子たちの視線が、私と雪ちゃんの間を彷徨う。ていうか、雪ちゃんが欲しいのはお嫁さんじゃなくて自分を甘やかしてくれる便利な家政婦さんでしょうが!!


「なるほど、その手があったか・・・」

「確かに、下手な男子と付き合うよりもよっぽど現実的かも・・・」


 いや、全然現実的じゃあないよ?今の法律だと、同性での結婚はできないよ?私は淡々と、そう事実を告げる。


「そんなこと些事にすぎないわ!大事なのは二人が愛し合っているという事実だけであって、ビジュアルも完璧なら言うことなしね!!」


 私の言葉に、枕崎さんは力強く反論する。


「あとは、入れる穴さえあれば大丈夫よ!男であれ女であれ、同性同士でも全然全く問題ないわ!!」

「「「「「・・・・・」」」」」


 その後も恋バナ?は続き、彼女たちのトーク熱は高まっていく。


「私、思うのよ。一色さんは受けなんかじゃなくて、実は攻めなんじゃないかって!!」

「「「「「おぉ~~」」」」」

「だから、今度誰かGL本描いてくれない?私も協力するから!!」


 BL普及委員会会長の枕崎さんは、GLもイケるらしい。そんなどうでもよい新情報に私は密かに溜息を零しつつ、私のGL本が作られることのないよう何処にいるとも知れない神様にお祈りするのだった。

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