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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第六章:アンラッキー警報発令中
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第107話:彼がモテる理由その2

「それじゃあ、これから会議を開始する。話し合う内容は主に次の二つ。一つ目は、全体ダンスの内容とその練習時間について。もう一つは、各組の応援練習の時間についてだ」


 会議室の中に、郷田先生の声が響き渡る。


「各学年ごとの競技については、それぞれ体育の授業時間に練習を行う。その他整列とか入場に関しては、体育祭直前に軽~く全体練習を行う」

「「「「「・・・・・」」」」」

「他にも全学年による代表リレーなんかもあるが、それは代表者が決まり次第でいいだろう。練習は各自時間を見つけてやってもらうとして、他に必要なことは・・・」


 体育祭に関する一通りの説明を、郷田先生は早口で語っていく。私たちの手元には先生が準備したプリントもあったから、内容自体は聞き流しても問題無さそうであった。


「てなわけで、ここから先はおまえたちで話し合ってもらいたい。一番最初に話したが、一つ目は全体ダンスについて。もう一つは応援練習について」

「「「「「・・・・・」」」」」

「どちらも基本的には昼休み時間にやることになるだろうから、その辺はバランスよく決めてくれ。じゃああとは任せた」


 郷田先生は前方の席へと腰掛けて、それっきり黙ってしまった。


「ねえ、どうする?」

「いや、どうするって言われても・・・」


 隣の席の新地君へと声を掛けてみるけれど、もちろん彼は頼りになんてならない。本来であれば適当なダンス資料くらい準備しておくべきだったのかもしれないけれど、ヤル気ゼロで不真面目な私たちはそれすらもできていない。


「それじゃあ、ここからは一旦僕に仕切らせてほしいんだけれど、大丈夫かな?もちろん、他にやりたい人がいるのなら任せるけど」

「「「「「・・・・・」」」」」

「じゃあ、いないみたいだから続けるね?とりあえずは全体ダンスの内容を決めて、そのあとに各練習時間について決めたいと思います」

「「「「「おぉ~」」」」」


 その場には各クラスから二人ずつ、計十八人の生徒がいた。それに郷田先生ともう一人の先生を含め、全部で二十人。

 そんな人たちの視線を一身に受けてなお鈴木君は堂々としており、その様は実にカッコ良かった。机に頬杖を突きながら大きな欠伸を零す新地君とは違い、彼は本当に輝いて見えた。


「今配った紙が、僕が準備してきたダンス資料になるんだけれど。他にダンスの資料を持っている人は?」

「はい!!」

「うん、じゃあ貰うね?先生、これ、コピーお願いしてもいいですか?」

「おう、ちょっとだけ待っとけ」


 鈴木君の頑張りによって、会議はスムーズに進んだ。彼の下準備と頑張りが無かったならば、私たちの会議は最初の段階で躓いてしまっていたことだろう。

 そんな鈴木君とは対照的に本日の下準備を一切合切してこなかった私としては申し訳ない気持ちでいっぱいなのだけれど、如何せん委員が決まったのが昨日の帰りのホームルームだったしなぁ・・・。とはいえそんなこと言い訳にできるはずもなく、私は同じ三年生として忸怩たる思いを抱えていた。


「今配った資料の中から、一先ずの候補を選びたいと思います。十分後に決を採るので、それまでは資料を読み込んでください」


 私は渡された資料をその手に取り、必死になって熟考する。今更私たちにできることがあるとも思えないのだけれど、多少なりとも会議の進行に協力しなくては・・・。


「それじゃあ決を採ります。先ずは僕が用意した資料のダンスから・・・」


 そうして順番に決を採り、その結果・・・。


「割れたねぇ・・・」

「そうだな、割れたな・・・」


 私たち三年生チームの多くは、鈴木君が準備した資料の中で最も簡単と思われるダンスに投票した。一方で、一年生と二年生チームは一年生の子が用意してきた資料にある最も難しそうなダンスに投票した。


「何ていうか、意外だな。一年生はともかくとして、二年生はもっと簡単なヤツを選ぶって思ってたんだけど・・・」


 私の隣にいる新地君が、そう呟く。


「私も、ちょっとだけ意外だったよ。このダンス、去年ほどではないけど結構難しそうだし・・・」


 手元の資料を見て、私も呟く。


「多数決の結果、このダンスに決まりました。これに対して何か意見のある人は?」

「「「「「・・・・・」」」」」

「特に意見もないようなので、このダンスで決定とします。ちょっと時間も押してるので、このあとは・・・」


 そうして、昼休みの会議は終わった。昨年雪ちゃんが苦しんだ実行委員会議と違って、実にスムーズな会議だった。


「終わったな・・・」

「そうだね・・・」


 会議室から続々と出ていく下級生たちを見送りながら、私たちは呟く。


「それじゃ、俺たちも帰るか」

「うん」


 憂鬱だった第一回目の体育祭実行委員会議は、こうして終わりを迎えたのだった。

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