第105話:大当たり?
九月上旬のとある日のホームルームの時間、私たちの教室は謎の緊張感に包まれていた。
「今から、今月末に行われる体育祭の実行委員を決めていきます。誰か、やりたい人いる?いるなら手を挙げてほしいのだけれど・・・」
「「「「「・・・・・」」」」」
担任である前原先生の問い掛けに対して、反応を示す者は誰一人としていない。
「それじゃあ、誰もいないみたいだからクジ引きで決めちゃうけど、それでいいわね?」
「「「「「は~い」」」」」
去年は、雪ちゃんがじゃんけんに負けて実行委員となった。より厳密に言うと、雪ちゃん以外にも男子が一人、計二名が生贄となった。
「はい、このクジを順番に引いていってねぇ~」
前原先生はそう言いつつ、手作り感満載のクジを入れた紙箱を持って座席に座る私たちの間を回る。
「全員取ったわね?それじゃあクジを開いて、中に赤字で当たりって書いてあった人が今年の実行委員だから」
「「「「「・・・・・」」」」」
私は、四つ折りにされた紙を慎重に開いていく。お願いだから当たりませんように!!
「やった!ハズレだ!!」
「うっしゃーー!今年は実行委員回避だぜ!!」
私の周りの席から、歓声が聞こえてくる。彼等は見事面倒な役回りを回避できたようであり、実に羨ましい。
「大丈夫、きっと大丈夫・・・」
私は特別運が悪い方でもないし、その割に修学旅行の時にはとんでもなくカード運が悪かったけれど、今回はきっと大丈夫なハズ!!
「外れろ・・・、外れろ・・・」
そうして念を込めながら信じてもいない神様にもお祈りしつつ、開いた四つ折りの紙。その紙には赤文字でたった一言、当たりと書かれていた。
「っすぅーーーー」
私はその紙を勢い良く閉じる。そして再びゆっくりとそれを開き、その中身を確かめる。
「・・・・・」
その紙には、赤いインクで当たりと書かれていた。ちょっと丸っこくて可愛らしい文字で、紛れもなく当たりと書かれていた。
「それじゃあ、当たった人は手を挙げてぇ~」
私は三度その紙を開閉して、でも中身は変わらなくて・・・。私は渋々、右手を高く掲げる。
「ふむふむ、ウチのクラスの実行委員は新地君と一色さんっと」
どうやら、今年のもう一人の生贄は新地君に決まったらしい。
「あちゃ~。夏ちゃん、運が悪かったねぇ・・・」
周りの席から、同情の声が聞こえてくる。私たちを憐れむ声が、クラス中から聞こえてくる。
「同情するなら、代わってくれてもいいんだよ?」
「いやいや、私は去年頑張ったしさ?」
そうしてその日のホームルームは終了し、次の日の昼休み、私と新地君は死んだ魚のような目をしながら会議室へと向かうのだった。