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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第六章:アンラッキー警報発令中
101/241

第101話:誘惑

ここから第六章(101話~120話)となります。長かった中学生編もこの章で最後となり、次からは高校生編へと突入予定。より大人っぽさを増した主人公たちによるほろ苦くて甘々な恋愛編が始まる、かもしれない・・・。

 去年に引き続き色々とあった夏休みは、あっという間に終わってしまった。休みとは名ばかりの母親指導による地獄の勉強会だとか、夏姫イコール夏樹身バレ事件とかそれっぽいイベントはそこそこにあったのだけれど、それももう既に過去の出来事である。


「結局、今年は殆ど遊べなかったなぁ・・・」


 始業式も終わってホームルームも終わって、あとは帰るだけとなった教室で、ゆきちゃんは誰にともなく呟く。


「まあ、今年はしょうがないよねぇ~。何たって、私たちは受験生なんだからさ」


 雪ちゃんの呟きに反応するように、イツメンの一人であるさくらちゃんは死んだ魚のような目をしながらそう言葉を発する。


「本当は、皆でプールとか行きたかったねぇ~。可愛くないスク水じゃなくて、ちゃんと可愛い水着を着てさ」


 同じく死んだ魚のような目をしながら、彩音あやねちゃんは溜息を零す。


「「「はぁ・・・」」」


 ホームルーム後の教室には、私たち以外にもまだ多くのクラスメイトたちが残っていた。私たちと同様に彼等もまた夏休み中は思い通りに遊べなかったらしく、仲の良い者同士で集まっては久々の再会を喜んでいるようであった。


「このあとどうする?今日はもう帰る?」

「う~ん・・・」


 本日は午前中のみで学校は終わりだし、三年生の私たちは既に部活動も卒業済み。本来であれば家に帰るなりして受験勉強に励むべきなんだろうけれど・・・。


「なあ、このあと、ゲーセンに行かね?」


 教室前方の窓際の席から、男子たちの遣り取りが聞こえてくる。


「今日は平日で親もいないし、適当に飯だけ食って久々に皆で集まってさ」


 それは、悪魔の囁きだった。夏休み中は碌に遊べず、これから先の休日もおそらくは勉強漬けになるであろう私たち。


「じゃあ、今日だけな?とりあえず荷物だけ置いて、財布持って駅前に集合で」


 男子たちはそう言葉を残し、足早に教室を去っていった。


「「「「・・・・・」」」」


 雪ちゃんの瞳が、揺れている。桜ちゃんと彩音ちゃんの瞳も、揺れている。


「ね、ねぇ・・・」

「う、うん・・・」


 雪ちゃんの口から発せられた言葉は、短かった。それに対する桜ちゃんの言葉も、短かった。


「皆、お小遣いは大丈夫そう?」

「まあ、ギリギリ何とか・・・」


 そうして私たちは誰からともなく教室を後にし、校門へと向かって歩みを進める。


「それじゃあお昼だけ食べて、一時くらいに駅前に集合ね?」

「おけ~」 「うん」 「わかった」

「じゃ、またあとで!!」


 二人と一旦別れ家へと急ぎ、軽くシャワーを浴びて服を着替え、昼食を済ませる私と雪ちゃん。


「うむ、流石は夏ちゃん!私一人だったら、昼食すらまともに準備できなかったよ!!」

「・・・・・」


 買い置きの食パンにジャムを塗っただけのジャムパンを齧りながら、雪ちゃんはそう言葉を発する。


「うっしゃ、お腹も膨れたし、それじゃあ久々に遊び倒すとしますかねぇ~!!」


 使ったお皿を片付け歯を磨き、私たちは夏の残暑が厳しい初秋の街中へと駆け出すのだった。

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