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通い妻となったクラスメイトに堕落させられる  作者: 進道 拓真
第三章

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第八十四話 覚悟の報告


 学校近くにある大手のハンバーガーチェーン店。

 いくつか挙げられた候補の中からここが一番無難だろうということでやってきたが、時間帯もあってか店内は非常に混雑していた。


 ギリギリのところで拓也たちの分の席は確保できたので何とかなったが、もう少し来るのが遅ければあっという間に座るスペースもなくなっていただろう。

 今は二人で注文してきたハンバーガーやポテトを口にしながら雑談に花を咲かせており、その話題は次第にある一点に舵を切ってきた。


「…拓也さ、あの人と何かあったか?」

「お前の話そればっかりだな。…いいけどさ」


 颯哉が降ってきたのは案の定唯とのことで、それだけならば今までも幾度か聞かれたが今回はなぜか様子が少し違った。

 どこか変化があったことを確信しているような態度であり、そこには拓也も疑問を抱いた。


「いやだってよ……お前のあの人を見る目が明らかに違ってるし、何かあったに決まってるだろ」

「…そんな違うもんか?」

「ぜんっぜん違うね! ていうか、あれで隠してるつもりだったのか?」

「……まぁ、自分の想いに気づいたってだけだ」


 自分ではいつもと変わらないようにと意識しているつもりだったのだが、颯哉にあっさりと見抜かれていたことに若干のショックを覚える。

 別に無理をしてまで隠蔽しようとしていたわけではなかったので構わないのだが……それとこれとは話も変わってくるのだ。


「マジか! いやー…とうとうお前もそこまで来てくれたか……」

「何分かった風に言ってんだ」

「おいおい、俺たちがどんだけお前ら二人の行動にやきもきしてきたと思ってんだ。それを想えば感慨も湧いてくるってもんよ」

「…まじかよ」


 なんと颯哉は、拓也が唯への好意を自覚する前から彼女への感情をなんとなく察していたらしい。

 それに驚くのと同時に、友人よりも先に気づくことができなかった自分の鈍感さに呆れの思いも出てくる。


 唯を好きになったとはっきりしたのも、過去に一区切りつけたことで心に余裕ができたからこそなので当然と言えば当然でもあるが、それでも微妙な心境だ。


「それで? 一体全体何がきっかけだったんだよ?」

「…お前、それを聞くために今日誘っただろ」

「バレたか! まぁ今更の話だろ?」

「…ったく」


 どうやら颯哉の狙いは唯との間にあった出来事を聞き出すことだったようで、このタイミングでそれを明らかにしてきた。

 別に普通に質問されればそこで答えたというのに、こうしてわざわざ誘い出してまで聞いてきたところにしてやられたような感覚を味わわされて何とも言えない気分になる。


「そんな面白いことでもないんだけどな……それでもいいか?」

「親友の恋路に面白さなんて求めてないから大丈夫だ! それより早く聞かせてくれ!」


 全く説得力のない一言を口にしながら催促してくる颯哉に、軽く息を吐きだしながら話す決意を固める。

 これに関しては拓也自身も、既に終わった話だと思っているし、こいつにも言ってしまってもいいだろう。


 それから拓也は、夏休みの間に起こった出来事について要所をかいつまみながら話していった。

 さすがに唯の家庭事情に触れるところは彼女の許可なしに話すわけにもいかなかったので少しぼやかしたが、あの夏祭りに関することはかなり詳細に伝えた。


 そして、それに付随するものとして自身の中学生時代に起きたことについても全てを喋った。

 今までは何らかの事情があるのだろうと察してくれていた颯哉も触れてこなかった話題だが、こうして自分から切り出せるくらいには割り切れてきている。


 そんな心持ちの変化を嬉しくも思っていたが、話を聞いている中で段々とその表情を厳しくしていった颯哉に気を取られた。

 途中で説明を打ち切るのもあれなのでそのまま続けていたが、話が終わる頃には複雑そうな顔つきを保ったままこちらを見つめていた。


「…なるほど、な。拓也の昔の話は聞いてなかったけど、そんなことがあったなんてな……」

「俺の中ではもう終わったことだ。元凶のあいつの話を聞いたところで何も思わないし、それで苦しむこともなくなった」

「ああ、聞かせてくれてサンキューな。それを聞いてお前が荒れてた原因も知れたし、納得もした」


 颯哉が荒れてたというのは高校入学当初の態度のことだろう。

 今冷静に振り返れば半ば八つ当たりのようなものでしかなかったというのに、こいつはよく付き合ってくれたものだ。


「またばったり会うことになったとしても、もう問題もないしな。ケリはついてるんだ」

「なるほどねぇ……そんでその衝撃から、あの人への想いを認識できたと」

「……そうだよ。悪いか」

「悪くはねぇよ。ただ俺としても嬉しいってだけだ!」


 先ほどまでの気難しい表情から一転して、ニヤニヤとした笑みに変わった颯哉。

 拓也の心情の変化を共に喜んでくれているのは本当なのだろうが、こうしてからかうような笑みを浮かべられると腹が立ってくるのは何故なのか。


「そんで? いつ告白すんだ?」

「…まだそんなことは出来ねぇよ。少なくとも、あいつの隣に立てるくらいにはならないとな」

「は? …いや、何言ってんだよ」

「何がって……当たり前のことだろ」


 間抜けな声を漏らす颯哉を横目に、拓也は自身の決意ともいえる考えを思い返す。

 まだ拓也は自分に対して自信が持てていないし、他者に誇れるようなものなんて皆無と言ってもいい。


 そんな状態では唯との関係性を進めるなんて夢のまた夢だし、何よりも拓也自身が納得もいかない。

 最低限、彼女と並んでも恥ずかしくないと思えるくらいには自分を磨き上げるべきだろうと思っていた。


 そしてそれを聞いた颯哉はというと……どうしてか、げんなりとした顔つきになっていた。


「はぁ……なんつーか、ようやく一歩進んだと思ったら二歩下げられた気分だ。…お前も大概慎重だとは思ってたけど、ここまでとはさすがに予想外だ……」

「…いいだろうが。その一歩が俺にとってはでかいもんだったんだよ」

「お前ら二人のことだから、とやかくは言わないけどな……なんというか、もうちょい積極的になってもいいんじゃないかって言いたくなる」


 颯哉の言うことももっともではあるが、まだ彼女との距離感を詰めるのには早すぎるとも思っているので、そう焦っていくことでもないだろう。

 …何より、唯が自分に好意を抱いているのかどうかも分からないのだから、それを無視して進めることはできない。


「まぁ、俺は俺なりに頑張ってくってだけだ。…そもそも、告白したからって了承をもらえるとは限らないんだ」

「……それこそ何も問題ないと思うんだが」

「何か言ったか?」

「…何も言ってねぇよ。ただ、後で一発頭殴らせろ!」

「何でだよ!? 唐突すぎるだろ!」

「うるせぇ! もやもやさせられるこっちの身にもなれ!」


 いきなりギャーギャーと騒ぎ始めた颯哉の言動に意味がわからず困惑するが、黙って殴られるなどごめんなので抵抗させてもらう。

 そんな言い合いのような軽口の応酬をしていると、不意に携帯が鳴った。


「…ん? あ、俺の携帯か」


 連絡の通知を知らせてきたのは拓也の携帯で、送り主は真衣。

 彼女は唯と共に出かけに行ったはずなので送ってくる用事も何もないはずなので、若干の疑問を覚えるが……。


「何の用だ? これといって言うことも………っ!」


 送られてきた内容に見当もつかないので、首をひねりながら会話画面を開けば……そこには、想像もしていなかったものがあった。

 送信されていたのはメッセージではなく一枚の写真であり、なんとなくその展開にも既視感を感じたが、その写真を見た瞬間にそんな考えもどこかへと吹き飛んでいった。


 そこに表示されていたのは、満面の笑みを浮かべながらクレープを頬張っている唯の姿であり、よほど味わっているのか幸せそうな雰囲気が写真越しでもよく伝わってくる。

 その頬には口にしたときに付いたとみられる生クリームがちょこんとあったり、目元を緩めながらクレープをはむはむと食べている様子は正直、とても可愛らしい。


 ただ彼女がカメラに対して視線を向けていないので、おそらくまた真衣の手によって気づかぬ間に撮られたのだろう。

 …そんな写真に硬直していることを不審に思われたのか、いつの間にか携帯を覗き込んできた颯哉が納得したようににやつきながらうんうんと頷いている。


「はっはぁ……分かるぞ拓也。誰でも好きな子のそんな写真を見たらそうなるもんだ」

「…うるせぇ」


 苦し紛れにそんな言葉を返すが、唯のあんな写真を見せられて動揺しきった拓也の言葉など大して効果もなかったようで、やれやれと顔を横に振っている。

 そんな友の姿にイラっときたので、あとで絶対にはたいてやろうと心に誓った。




 …なお、その後家に帰ってから唯の帰宅を待っていれば、帰ってきた彼女の方から「何か写真送られてこなかった!?」と強く問い詰められた。

 まず間違いなく真衣から送られてきたあれだと確信したが、素直に白状すれば唯の機嫌を著しく損ないそうだったので誤魔化そうとしたのだが、その態度から逆に彼女の不信感を煽ってしまい、あっさりとばれた。


 …それからは、拗ねに拗ねた唯の機嫌を回復するために時間を要したというのは、ここだけの話だ。


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