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通い妻となったクラスメイトに堕落させられる  作者: 進道 拓真
第二章

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第六十三話 その花の意味は


 真衣からありがたい助言を手に入れた拓也は、近場のショッピングモールへと赴いていた。

 ここに来た目的は言わずもがな、唯へのプレゼントを探すためであり、規模もそこそこあるこの場所ならば良いものも見つけられるだろうと思いやってきた。


 ちなみに、今日ここに来ることを唯には伝えているが、「見に行きたいものがあるから出かけてくる」と言って細かいことはぼかしておいた。

 特に追及されることもなく家を出れたので、少なくともこの外出から何かを勘ぐられるようなことはないだろう。


 なんにせよ、時間は有限だ。

 あまり遅くなっては唯にも心配されるし、何度も出かけたりすればさすがの彼女とて不審に思うだろう。


 できれば今日の物色で決めてしまいたいが、こればかりは巡り合わせを祈るしかなさそうだ。




「うーむ……やっぱこういうのは頼りにできるやつがいないと難しいか……」


 とりあえず何軒かの店を軽く見終え、一通り回ってきた感想としてはよくわからないといった感じだ。

 ブレスレットやイヤリング、ネックレスなんかが所狭しに並べられた店内をぐるぐると巡り、キラキラとした様相を眺め続けていると視界がやられてくる気がする。


 こういったおしゃれな店にはあまり近寄ることもないので、慣れていない弊害がここにきて出てしまったようだ。


 ただ、一応候補はいくつか見つけられている。

 パッと見ただけでも唯に似合うと直感したものはあったし、その中から選んでしまおうかと考えているが……まさか、そこからが難題になるとは思っていなかった。


 確かに候補は選べた。あとはそこから、一番良いと思ったものを買うだけだ。

 なのに………


「決め手がなぁ……どれもこれも、良いものなことは間違いないんだけど……」


 今拓也が迷っている要因は、その候補の中でこれだ!と思えるものがなかったことだ。

 ならば唯に似合うであろうものを買っていこうかと思っていけば、それもまた難しかった。


 そもそも、唯はその素材の良さから何を着ていても形になるくらいには着こなせるポテンシャルがある。

 今日見てきたアクセサリーだって、彼女の手にかかれば間違いなく最高の装飾品となってくれるだろうし、喜んではくれるだろう。


 …だが、拓也自身の感情として、そんな半端な気持ちで選んだものを贈りたくはなかったのだ。

 だからこそこうして迷いに迷っているのだが、それもなかなか決着がつかずに時間ばかりが経過していく。


「…もう少し回って見るか。まだ見てない場所もあるだろ」


 座り込んでいたベンチから立ち上がり、残った時間で別の店も見に行こうと気合いを入れなおす。

 モールの中は端から端まで歩いてきたつもりだったが、それでも見落としている箇所があったかもしれないので、気分転換に見直すのも悪くはないだろう。


「さて、そんじゃ行くか………ん? あんなとこに店なんてあったのか…?」


 軽く腰を伸ばしてから歩いていこうとした時、ふと見渡した視界の中にある一軒の店が気になった。

 見た感じそこもアクセサリーを販売しているようで、客もそこそこ入っている。

 先ほどの通り道にあったはずなので見落としたとは考えにくいが、規模は少し小さめなのでうっかり通り過ぎてしまっていたのかもしれない。


「…ちょっと行ってみるか」


 そんな店に、なぜか惹かれるものを感じた拓也は物色してみることにした。

 時間にも余裕はあるし、案外良いものもあるかもしれない。




「…気づかなかったけど、結構広かったんだな」


 店内に入っていった拓也を出迎えたのは、予想していたよりも奥行きのある店の様子。

 最初に見た時には入口の規模感から小さいと思っていたが、これならば見ごたえもありそうだ。


 中には拓也以外にも女性客がちらほらと散見され、楽しそうに商品を眺めている様子も見られた。


「こういうところにあったりすると助かるんだけどな……おっ、これって……」


 ざっと並べられていたアクセサリーを歩き回りながら拓也は、ある一点のネックレスの前で立ち止まった。

 さっきまで様々な装飾品を眺めてきたからこそなのか、なんとなくそのものの良し悪しが判別できるようになってきた自分の目で見ても、それが良いものだと思えた。


 それは花をモチーフにしたネックレスであり、主役になっている花は白い装飾で飾られていて透明感すら感じさせる。

 今までに見てきたものと比べてしまえば落ち着いた印象……はっきり言ってしまえば飾りは少なく地味にさえ思えるのに、なぜか拓也はそれから目が離せなかった。


 そしてその一つのアクセサリーを眺めていた拓也に、店員と思われる人が声をかけてきた。


「何かお探しですかー? もしよければご案内しますよ?」

「あ、実は友人に贈るアクセサリーを探しに来たんですが……」

「そうだったんですね! ちなみにそのご友人さんは女性の方ですか?」

「そうですね。何か良いのがないかと思って見ていたんですけど…」


 どこかテンションも高めな店員さんに声をかけられて一瞬身構えてしまったが、こういった時には頼れる人には頼るべきだろうと思い素直に応じた。

 …ただ相手が女性であると告げた瞬間に、この目の前の人の眼光が鋭く光ったように見えたのは気のせいだろうか。


「ならば是非ご案内させてください! 先ほどから眺めていたものがあるようですが、気になるものはございましたか?」

「えっと、実はこれが良いかなって思ってたんですけど、これって何の花のモチーフなんですかね?」


 そう言って拓也が指さすのは、さっきも眺めていたネックレス。

 これまでに見かけてきたものの中で直感的に何かを感じ取ったもので、プレゼントとしてもかなりアリだと思っていたものだ。


「ああ、これはカスミソウをイメージして作られたものですね。白の装飾も、それにちなんでつけられたものなんですよ!」

「カスミソウ……意外ですね。こういうアクセサリーで使われるような花とは無縁のイメージだったので」


 拓也は花にそこまで詳しいわけではないので自分が知らないだけかもしれないが、カスミソウというのはそこまで目立つような種類だという認識はなかった。

 それこそベタなもので言うなら薔薇やパンジーなんかのものだってあるし、季節によっては桜やアジサイといったポピュラーなものがデザインに選ばれることの方が多いだろう。


「そうですね。確かにデザインとして主流というわけではありませんが、こういったものは個人の好みというのもありますからね。…失礼ですが、お相手の方は彼女さんか何かですか?」

「いえ、彼女とかではないんですけど、今度誕生日なので何か渡そうかなと……」

「なるほど! それならばあまり派手なものよりも、こういった系統のものの方がいいかもしれませんね」

「…そう、ですね」


 すごいぐいぐい来る店員さんだという印象が強くなってくるが、この人の意見はもっともだ。

 唯の性格を考えれば派手派手しいものでも受け取ってはくれるだろうが、彼女への印象としてそういったものは合わない気もする。

 どちらかと言えば、少し色合いの淡いコーディネートの方がピッタリだろう。


 …考えれば考えるほど、これが良いように思えてきた。


「…すみません。これにします。包んでもらうことってできますか?」

「はい! もちろんできますよ! 少々お待ちください」


 結局今まで見てきた候補を振り切ってこのネックレスに決めてしまったが、不満はなくむしろ満足感すらあった。

 あれならば唯のイメージにも合うし、彼女がつけた時にも似合うと断言できる。


 …受け取ってもらえるかどうかはまだ分からないが、まぁそれは当日の彼女の反応次第だ。

 気長に待つとしよう。


 プレゼントでもあるので包装をしてもらえるか尋ねれば、問題なくしてもらえるようなので頼んでおいた。

 自分の手でやろうとすれば絶対に不出来なものになることが分かり切っているので、安心した。


 その後、包装してもらった商品を受け取りながら代金を支払い、店を後にしていく。

 ただ、会計の際に店員の人から「頑張ってくださいね!」と言われてしまったのは、何か誤解されていたのだろうか………。




「無事に買えたし、これでプレゼントも一段落だな。…あとは当日か」


 ショッピングモールの出口を目指して歩きながら、手元にあるネックレスの入った紙袋を横目に見てつぶやく。

 準備は万全。やることもはっきりしている。


 …なら残すのは、本番だけだ。


 まだ日にちはあるというのに緊張感が高まってくるのは、その日が拓也にとっても分かれ目になるからだろう。

 上手くいくならばそれでよし。だが、もし失敗したときには……


「…これ以上はやめておこう。気が滅入るだけだ」


 今から失敗したことを考えたところで意味なんてない。

 失敗の保険を用意することは大事なことだが、それにばかり構いすぎて肝心の成功させるための準備が疎かになっては蛇足でしかないのだから。


「…そういえば、あれってカスミソウって言ってたけど、花言葉とかあるのか?」


 ネガティブな意識を切り替えようと先ほどまでの出来事を思い返してみれば、ふとネックレスのモチーフにもなっていた花に関して気にかかった。

 店員の人曰く、カスミソウが象られているそうだが、花というものには花言葉という何ともロマンチックなものがある。


 当然これにもその意味は込められているだろうし、気になったので携帯を使って調べてみれば……思わず笑いが漏れてしまった。


「…ははっ。こりゃ何とも、上手くかみ合ったもんだな」


 意識していたわけではない。狙ってやったわけでもない。

 だがそこに示されていたのは、まるで()()を直感していたかのようにかっちりと組み合わせられた内容。


 …カスミソウの花言葉

 それは「清らかな心」や「無邪気」、「親切」といった相手を思いやる彼女へのイメージにこれ以上ないほどに合わせられたもの。


 そして、もう一つ。

 彼女の将来を守るかのように、予感させるように告げられたそのメッセージ。



 即ち────「幸福」


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