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通い妻となったクラスメイトに堕落させられる  作者: 進道 拓真
第三章

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第百十二話 これから先も


 拓也が唯へと無事に想いを告げ、晴れて恋人同士となった二人。

 そのまましばらくは抱きしめ合っていた彼らだったが、それもいつしかどちらからともなくそっと手を放す。


「…えぇと、確認みたいで悪いんだけど……本当に付き合うことになったんだよな。俺たち」

「う、うん……改めて聞かれるとちょっと恥ずかしいけど…」


 想いを伝えている最中はその場の雰囲気や必死さも相まって特に何も感じなかったが、こうして少し落ち着いた状況になると途端にそれまで蓄積していた気恥ずかしさやら告白が成功したことによる嬉しさやらがまとめて襲い掛かってくる。

 それは唯の方も同様だったようで、彼女もまたその瞳を泳がせながら顔を赤くしていた。


 …だが、過程がどうあれこの想いが成就したことは確かだ。

 それを思えばこの程度の羞恥心は些細なことでしかない。


「…今でも信じられない気持ちはあるし、夢なんじゃないかって思ってもいる。だけど、絶対に幸せにするよ。それだけは約束する」

「…ふふっ。だったら私も、これからは拓也くんの隣で支え続けてあげるね。絶対に君の傍から離れてあげないんだから!」

「あぁ。…ありがとう」


 互いに互いの前で約束を誓い合いそれに対して礼を返せば、自然とそれまで感じていた緊張感もほぐれていき口角も上がっていく。

 そうだ。確かに唯との関係性は先へと進んだし、それはこれ以上ないくらいに嬉しいことだ。


 しかし、それで終わりでもない。

 むしろ本番はここからであり、自分がこれから先も唯を笑顔にしていけるかどうかはまだ不明瞭なままなのだ。

 今回の彼女と一歩先に踏み出せたからこそ安心してばかりもいられない。


 当然、唯に見合うような相手になるためにも努力は続けていく所存だがやはり気を抜いてばかりもいられないのだ。


 …だが、まぁ。


「…ん? どうした、そんなに見つめて」

「えへへ~。何だか拓也くんと両想いだったんだって分かったら、今まで以上に好きだなぁって気持ちが強くなってきたみたいなんだ!」

「…可愛いこと言ってくれるな。唯は」


 …せめて今くらいは、この愛しさで溢れた彼女のことを可愛がっても許されるだろう。


 両者の想いを伝え合い、たとえ距離が離れようとも切れない繋がりが二人の間に紡がれた。

 たったそれだけのことなのに、唯が言うように想い人への愛情は限界などないかのように膨れ上がっていくのを拓也もまた感じていた。


 それゆえに、ストレートに拓也への好意をぶつけてくる唯の言葉を聞いた途端にただでさえ大きかった彼女への感情がさらに増していく。

 はにかみながらこぼされた言葉に対して、今までは無意識の内に歯止めをかけていたブレーキが緩んでいることが強く実感できた。


 と、そんなことを考えていると唐突に周りの人だかりの喧騒が一層激しいものになっていき、それに伴って拓也たちの意識も不意に現実に引き戻された。


「何だ…? いきなり盛り上がってるみたいだけど…」

「…あ、拓也くん。クリスマスツリーが…!」

「……あぁ、なるほどな。()()()


 二人がいる位置が人混みから少し距離を置いた場所だったのと、その輪の中心から発せられる騒めきによって二人の告白現場に気が付いていた者達はいなかったのだろう。

 というかそうでもなければ一世一代の告白シーンを赤の他人に見られるという耐え難い羞恥を味わう羽目になっていたので、それ自体は助かったとも言える。


 ゆえに群衆による騒々しさはそこまで気にも留めていなかったのだが……こうも突然盛り上がるかのような声を上げられれば否が応でもそちらに意識は向けられる。

 なのでその盛り上がりの中心に目を向ければ、そこには数秒前までは大した存在感も放っていなかった巨大なクリスマスツリーが輝かしい光によって彩られ、先ほどまでとは比較にもならないくらいに美しい様相をしていた。


 …そう。今までの流れの急展開によって忘れかけてしまっていたが、拓也たちがこの場を訪れた主目的はイルミネーションで彩られるクリスマスツリーを眺めることだ。

 時間を確認すればちょうど気が付かない間に予定時刻の十八時を回っていたようで、あの人々の盛り上がりようもライトアップが行われる瞬間を見守っていたからこそ上がったのだろう。


 …肝心の拓也と唯がそれを見逃してしまったことは何とも締まらない結果になってしまったが。


「…綺麗だな。期待はしてたけど、ここまでのものとは思ってなかった」

「そうだね。…でも今は、それよりももっと幸せなことがあったから尚更綺麗に見えてそうだよ」

「…かもな」


 眼前で展開されている照明の集合体は、普段であれば単に『綺麗だ』という感想を抱いて終わりのものだったことだろう。

 …しかし唯が言うように、今はそれを遥かに上回る美しさを放っているように感じられるモミの木は燦然と輝いていた。


 それはきっと、この世界で誰よりも愛する者が隣に居てくれているから。

 そうして心理的効果も相乗された結果、ここまでの光景を目にすることができたのだろう。


「…本当はさ、今日このイルミネーションを見た後に唯に告白しようって決めてたんだ」

「……えっ? そうだったの?」

「ああ。…まぁ結果的に予定は狂っちゃったし、最初は俺の方から言おうとしてたのに……結局唯から言い出してもらうことになったけどな」


 眼前で繰り広げられている景色を見ながら口にするのは、もしかしたらありえたかもしれない可能性の話。

 元々予定していた計画とは大幅にずれたからこそ話せることでもあった。


「…そしたら、もしかして私お邪魔しちゃったかな…? せ、せっかく拓也くんが勇気を出そうとしてくれてたのに……」

「いやいや!? そんなことはないからな!? …確かにちょっと驚きはしたけど、唯が俺のことを好きでいてくれてたって知れたのは嬉しかったから大丈夫だ」

「そ、そっか。…良かった」


 すると、もしかしたら自分は拓也の覚悟の邪魔をしてしまったのではないかという考えに至ってしまったのだろう。

 その声色を震わせながら大きく狼狽え始めてしまった唯だったが、決してそんなことはないので強く否定する。


 そうすれば彼女も安心したのか、ほっと溜め息を漏らしながらこちらの話を聞く態勢を整えてくれた。


「…今日までずっと色々なことを考えてきたし、少しでも良いものになるように努力を重ねてきた。…だけど、多分そんなものはいらなかったんだ」


 拓也は今日になるまでずっと、どのようなシチュエーションで想いを伝えるのか。

 どういった時に唯にこの感情をぶつければいいのかというシチュエーションに拘った発想を重視していた。


 …けれど、それもこうして終わってみれば無用の長物だったようにさえ思える。

 結局必要だったのは拓也自身の心持ち一つで、きっと唯はどれだけ優れた場所でも、どんなに最高のタイミングであったとしてもそんな外的要因に結果を左右されるようなことはしなかっただろう。


 ここまでの努力全てが無駄だったとまでは言わないが、それでも力を入れるべき点はもっと他にあったとも考えられるのだ。


「現に今だって、イルミネーションが始まる前に告白は終わってる。…それも俺たちらしいと言えばそうだけどな」

「ふふふ。確かにそうかもね」


 ほんのりと自虐をするように事実を羅列すれば、唯もそれにつられるようにして口元に手をやりながら笑いをこぼす。

 その笑みは今の拓也にはいつまでも見ていたくなるくらいには魅力的に映ったが、一旦そんな思考は頭の片隅に置いておいて話を続けた。


「必要だったのは、俺の覚悟一つだったんだ。それさえあれば唯を待たせることだってなかったし、足踏みをすることだってなかった」


 最終的に行きつく結論はそこだった。

 どれだけ場を整えようと、それが最高のロケーションだったとしても、覚悟が無ければ受け入れられるはずなんてないし、上手くいくことだってなかっただろう。


 その事実に直前で気が付けたのは、ある意味で僥倖だったのかもしれないが。

 そうして半ば自分自身の情けなさに呆れるようにして話していれば、それまで黙って聞いてくれていた唯が口を開いて窘めてくる。


「…拓也くんはずっと頑張ってたよ。それに私は待たされたなんて思ってない。私が待ちたいから選んだことでしかないの。だからそんなこと言わなくていいんだよ?」

「…そうだな。だからこそ、これからはちゃんと覚悟を決めていくよ」

「…?」


 拓也の言葉に引っ掛かりを覚えたのか、唯はキョトンとしたような表情を浮かべながらこちらを見上げてくる。


「これからは自分の気持ちに嘘をつかない。誤魔化すことだってしない。…もう不安にさせることもないくらい、唯のことが好きだってことをしっかり伝えていくよ」

「…は、はぃ……」


 自分でも恥ずかしいことを口にしているというのは自覚している。

 それでも、これを有耶無耶にしてしまえばいつかまた自身は後ろ歩きになってしまうだろうから、この宣言は必要なものだった。


 そして、そんな宣言を真正面から向けられた唯はというと……その顔をこれ以上ないくらいに赤く染めながら、頭から湯気が出てきそうな勢いで羞恥の感情に襲われている真っただ中のようだ。

 そんな様子にすら愛しさが溢れ出てきそうになり、またもや彼女のことを抱きしめたいという欲に駆られそうになるが……その時、ふと頭上に冷たい感覚が舞い降りてきたような気がした。


「つめたっ…今度は何なんだ……って、これ…」

「あっ……凄い、雪だよ拓也くん!」


 頭上に降ってきた冷たい感覚。

 その正体を確かめるために空を見上げてみれば……そこには一面の純白に包まれた幻想的な景色。

 それまでの空気とは一転して、雪が降り注ぐホワイトクリスマスの幕開けのようだった。


「まさか雪が降るとはな……朝から曇ってるとは思ってたけど、流石にこうなるとは思ってなかった」


 朝方に自宅から外を眺めた際に見えた空一面に広がる曇り空を確認した際には落胆したものだが、まさかそれが降雪の予兆だったなんて思いもしていなかった。

 想定外にもほどがある展開にさしもの拓也も呆気に取られてしまうが、そんな彼とは対照的に唯は突然降ってきた雪にテンションが上がっているようだ。


 両手を合わせて器のような形にしながら、降ってくる雪を受け止めている姿はどこか儚さすら感じられるようで……不覚にも、拓也はその姿に見惚れてしまった。


「天気予報じゃ雪が降るなんて言ってなかったのに…すごい奇跡だねぇ……」

「…綺麗なもんだな」

「え? 何か言った?」

「……あぁいや、そうやって唯が雪を受け止めてる姿がなんだか綺麗だなって思ってさ」

「あっ……そ、そっか…」


 思わず口から洩れてしまった本音をぽつりとつぶやけば、それを聞き逃さなかった唯が尋ね返してくる。

 しかし、既に恋仲となった拓也としては隠すような理由もないので素直に本心を口にすれば、真正面から好意をぶつけられた唯は恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。


(…こういう反応が可愛いからつい褒めたくなるんだけど、あんまりやりすぎると今度は拗ねそうだな)


 拓也への好意を口にする時は照れたようなリアクションを見せることも少ない彼女だが、どうやら不意を突かれて向かってくる褒め言葉にはてんで弱いらしい。

 そんな可愛すぎる事実を把握すると、もっと言ってやりたくなってしまうのだが……言いすぎるとむくれて怒ってしまう展開が容易に想像できるので、この辺りで引いておいた方がいいだろう。


 なので彼女に温かい目を向けながらもそれ以上は言わないように心がければ、少しして気分も落ち着いたらしい唯が拓也の隣に立つようにしてその瞳を見上げてくる。

 そしてそのまま彼の腕をつかんだかと思えば、その手を自身の身体で包み込むようにして抱きしめてくる。


「…ねぇ、拓也くん」

「……どうした?」


 自身の腕から伝わってくる彼女の体温。

 それはほんのりと熱を帯びているかのようにじんわりと拓也の冷えた身体を溶かしていくような優しさを感じさせるもので……それと同じくらいに高鳴っている心臓の音が響いているのがよく分かった。


「…私、今すっごく幸せだよ。もうこれ以上はないんじゃないかってくらい」

「それは俺だって同じだよ。…だけど、俺たちはまだまだこれからだろ?」

「うん。だからこそ……これからもよろしくね?」

「…あぁ」


 二人は強固な恋慕で結ばれた。

 その事実は確かなものだし、彼らの胸中には今までとは比較にもならないほどに幸福が広がっている。


 しかし、それで終わりではない。

 拓也と唯の幸せはここから先も加速していくように増大し、果てなどないかのような満ち足りた日々が待っていることだろう。


 周囲に降り注いでいる雪など、気にもならないほどに熱を放つ二人の空間には……何よりも甘い世界が漂っていた。



第三章、完結。

…そして、ここでこの物語の本編も一旦完結となります!


拓也と唯の出会いから始まり、彼らが恋人へと至るまでの変遷を綴ってきたこのお話でしたが、ここまでお付き合いしてくださった皆様。

本当にありがとうございました!


ここまで自分が書いてこれたのは読んでくださっていた皆さんの存在あってのものでしたし、何よりも自分の納得いく形で終えることが出来たというのは嬉しい限りでございます。


これからあの二人がどのような道を辿っていくのかどうか。それは自分にもよく分かりませんが、きっと幸せな未来を歩いていくことでしょう。

そんな彼らの歩んできた軌跡を少しでも良いものだったと思っていただければ幸いです!


重ねてになりますが、本当に、本当にここまで読んでくださりありがとうございました!





…そして、ここからは少し皆さんに相談というかちょっとお聞きしたいことがあるんですが良いですかね?

実は今、この物語の本編が終わった先。


つまりは拓也と唯の二人が付き合った日常を長めの後日談として書こうかなーと悩んでいる最中なのですが……どうでしょう? 見たいですかね?

綺麗な締め方の後で恐縮なんですが、もし良かったらご意見をお聞かせください。


もしかしたら参考にさせてもらうかもしれませんし、自分の方で「見たい!」ってなったら勝手に書き始めるかもしれません。

ただ、その辺りはあまり期待しないでおいてください。


実を言うと、今ちょうど別作品の連載もあったりしてどちらかと言えばそちらの方が優先度が高かったりするので……まぁあくまで本編後のちょっとしたほのぼのエピソードみたいになると思います。

書くとしても内容としては後日談ですから、どうしてもそちら側の方が更新頻度としても優先しがちになると思いますし、それにまだ書くとも決まったわけではありませんから。


とりあえず、詳しいことは活動報告にでも載せておきますので、そちらで。


何はともあれ、この物語に一区切りがついたことには変わりありませんので、今はその余韻に浸らせていただきます。

もし二人の後日談がありましたら、その時はここでお会いしましょう! では!

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― 新着の感想 ―
最高でした!!その後の日常...!是非みたいです!!待ってます!!!!
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