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「キース、上着を脱いでくれ。一人で脱げそうか?」



「あぁ、問題ない」と、キースは時間をかけて上着を脱いだ。……、キースの体は、全身がやけどを負っていた。



これは、傷が生々しいな。このやけどを、断続的に負うなんて……。いくら治せるとはいえ、これは……。



『癒せ 清流の衣』

『清流の祝福』




しばらくすると、傷は回復した。……だが、精神の疲労は残ったままだ。




「キース君、治ったようなら続き行くわよ」と、先生が容赦なく続行を宣言した。











ーー













「ぐあああああぁぁぁぁぁ!!」



「はぁ、はぁ、はぁ……。」





それから五回以上、繰り返した。


そして……、キースは遂に膝をついた。



ダメだ、もう見てられない。俺がこんなことを、提案したばっかりに……。






「キース、もういい! 先生今日の所は……」と、止めに入った俺の腕を、ローウェルが強い力で引いた。




「主、あなたが口を出すべきではない! これはキースの問題です。」




「は? 何を言っているんだよ! お前は、キースがあんな姿をしているのに……、耐えられるのか!」



俺はつい、感情的になってしまい、ローウェルに食って掛かってしまった。




「……、耐えられるわけがないだろ! 幼馴染のこんな姿、耐えられるわけがない!」



そうすると、ローウェルが怒鳴って言い返してきた。


……。ローウェルがここまで感情を荒げるなんて、それも、俺に対して……。




「なら、どうして俺を止めるんだ?」と、俺は少し怒気を孕んで聞き返した。



「……俺たち側近は、アース様の側近としての矜持を、各自持っています。キースにとってのそれは、最後まであなたの前に立ち、戦い続けることです。その力を得ようと今、必死にもがいています。そんな時に、一番やられたくないことは、主、あなたに止められることです。俺たちが最優先することは、あなたを守ることなんです。その守るべき主から、止められたら……、その時のキースの気持ちを考えていますか? 俺は幼馴染としては、今すぐキースを止めたい。しかし、側近としてキースの気持ちは、痛いほどわかります。だから、俺は、いえ、俺もミラル譲もアスタも、キースから目を逸らさないんです。主、あなたがするべきことは、キースをただ、止めることですか? 違いますよね? キースを信じて見守り、サポートすることではないですか? あなたなら、その判断ができると信じています」というと、ローウェルもミラルも、そしてアスタもキースへと視線を向けた。









……くそっ、俺はいつも失敗してばかりだな……。本当、自分が嫌になる。くそっ……。側近たちは、こんなに立派なのに、俺ときたら……。



俺の目から、自然と涙が零れ落ちた……。





ダメだ、泣いている場合ではない。俺にできることを考えなければ。俺にできることは……、回復だけではないはずだ。何か……、ないか? アフターケア的なものがいいな。キースの好きなもの……、料理に風呂に……。


風呂か、そういえばこの世界には入浴剤がなかったよな。入浴剤に解毒(痺れ)草を調合して、身体の痺れをとれるようにしようか。幸い、簡単な調合ならば、薬草研究会で教えてもらった。さらに前世で、バスボムづくりをしたことがある。



材料は、クエン酸に重曹それに解毒(痺れ)草、それから確か、変な色のゆずみたいな匂いのした果物が売っていたな。あれが、この世界のゆずなんだろうな。よし、入浴剤をつくって、キースには身体を癒してもらいたい。





俺はアスタに声をかけて、少し席を外した。


「悪いが、王都の市場に行ってくれるか?」


「は、はい、もちろんいいですけど、何を買うんですか?」



「あぁ。重曹とクエン酸……あー、掃除に使うやつを頼む。痺れ用の解毒草と前に俺が、いい香りだといった果物は覚えているか?」と、突然買い物を要求する俺の言葉を、アスタは真剣に聞いてくれる。



「はい覚えています。それらを買ってくればいいんですね?」



「あぁ、頼む。それと……さっきは、情けない姿を見せてしまってすまなかった。」




「……情けなくなんてありませんよ。自分も止めたいと思ってましたからね。ただ、キースのことを信じてあげてください、我々側近にとってはそれだけで励みになりますから」と、アスタは笑った。



「あぁ、ありがとう」、本当にありがとう……。



「それと、ローウェルにも「ありがとう」と言ってあげてください。アース様に対して声を荒げてしまって、ローウェルも傷ついているでしょうからね。」



そういうと、アスタは俺が展開した大窓から市場へと向かった。



……ローウェルに、辛い役目をさせてしまったな。













ーー












それから、キースは十回以上も訓練を繰り返した。


途中で、アスタが買い物を終えて帰ってくるまでの長い時間、ずっとだ……。





「今日はここまでね。私の魔力もつきかけているし、キース君も限界だわ。」




「は、はい……。あ、ありが、とうございました……。」




キースはお礼を言うとその場に倒れ込んだ。





「キース!!」と、俺たち四人は、キースのもとへと駆け寄った。



「キース、立てそうか?」


「す、すまん、もう少し待ってくれ」というキースは、本当に立てないようだった。



「わかった、じゃあ、俺が背負って帰るから。」



「いや、それは……」と、キースは首を振る。



「戦った部下を労うのは、主の役目だからな。」



「……そのセリフ、どこかで聞いた覚えがあるぞ?」



「俺の尊敬する主の受けおりだ、観念して背負われろ。」



俺がそういうと、キースは肩をすくめ、そして脱力し、俺に身を任せてくれた。







「キース君、来週も非番の日が一日あるけど、続ける? それとも、やめる?」と、先生が不敵な笑みを浮かべながら尋ねた。



「続けます! よろしくお願いします!」と、キースは即答した。



「えぇ、もちろんよ。それから……アース君、あなたがするべきことをしっかり考えなさい。この素晴らしい側近たちの主として何ができるのかをね。」



「はい、情けない姿をさらしてしまい、申し訳ありませんでした」と、俺は素直に謝罪した。本当にその通りだ、俺はこいつらの主としてもっと……。





「あなたたちは、まだ若いわ。たくさん間違えて成長しなさい。それから、主を諫めてくれる側近も、大切にしなさいね。」






はい、一生大切にします……。









ーー












俺たちは、窓で俺の自室へと帰ってきた。



「キース、今日はこのまま休め。夕食の時間にまた様子を見に来るからな。」



「あぁ、そうさせてもらうというと、キースはすぐに眠りに落ちた。やはり、精神的な疲労がピークに達していたのだろう。




『癒せ 清流の衣』

『清流の祝福』




俺は、キースの外傷を、一つ残らずに治療した。





治療をしている間、何やら他の三人がそわそわしていた。そして、治療が完了したと同時に、ミラルからアスタに提案があった。


「アスタ、私たちも夕食の時間まで訓練しよう。付き合ってくれる?」


「自分もそう思っていました。こちらこそよろしくお願いします」というと、二人は訓練場へと向かった。



ミラルが去り際に俺に小声で話しかけてきた。


「アース、しっかり仲直りしなさいね。ローウェルも、すごく気にしているみたいだし。」


「あぁ、この後話すよ。アスタにも言われたしな。……気を使わせて、悪いな。」


「これくらい全然。じゃあ、訓練に行ってくるね。」




俺は気を遣わせてばかりだな……。









ーー











「ローウェル、この後、解毒草の薬効抽出を手伝ってくれるか?」



「……はい」と、ローウェルはうつむきながら答えた。



やはり、暗いな……。相当、気に病んでいるんだろうな。





「ローウェルは、解毒草の薬効抽出を頼むな。俺は他のものを、混ぜ合わせるからさ。」



「……わかりました。」








ーー調合室には、二人の作業をする音だけが響き渡る。





ガチギレした後って、気まずいよな……。だけど、気まずいとか言っている場合ではないな、ローウェルは俺が情けないから、怒ってくれたんだからな。よし……。





「ローウェル、さっきは諫めてくれてありがとうな。それから、情けない姿を見せてしまって、すまなかった。」




俺がそういうと、ローウェルは頭を下げた。



「情けないなんて、とんでもないです。俺も我慢できなくて……。それから、怒鳴ってしまい申し訳ありませんでした。俺、感情の制御ができなくて……」と、照れとも後悔ともつかない表情を見せた。




「それは全然かまわないよ。幼馴染のあんな姿を間近で見ていたんだ、感情がコントロールできなくてもしょうがないよ。それに……、俺たちは友人同士でもあるんだ。たまに喧嘩するくらいが、健全じゃないか?」と、俺は笑って見せた。




俺がそう返すと、ローウェルは笑った。そして、それまでの暗い空気が払拭された。





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