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はー、体が重いな……。でも、今回は俺が勝手に魔力切れになったわけだから、しっかり謝ろう。でも、魔力をこんなに使い切っていたら、もしかすると、魔力容量が増えたりしていないかな?
俺は、そんなことを考えながら、目を開いた。
……、そこには、ジルとキース、そしてウォーザットがいた。よかった、しっかりと交代制をとっているみたいだな。
「アース、おはよう。それで、なんで、あんな無茶をしたんだ?」と、開口一番、ジルがかなり低い声で言ってきた。
やはり、怒っているよな……。
「緊急事態だったからだ。それに、俺のせいでみんなが床で寝るのは耐えられなかった。」
……。場に沈黙が流れた。それぞれが、それぞれの思いを抱えて、考え込んでいるなか、口火を切ったのはウォーザットだった。
「殿下、俺は皆にアースが起きたことを伝えてきますね」というと、ウォーザットは部屋から出ていった。
「キース、隈がとれているな。しっかり、休めたか?」と、ウォーザットからの流れを受け取って、キースに話しかけた。
……。再び沈黙が流れた。
「おい、二人とも黙るなよな? ちゃんと謝るからさ、でも緊急事態だったんだ。それはわかってくれるな?と俺が言うと、ジルはしゃがみこんでしまった。
「はー、それがわかっているから。なんとも言えない感情になっているんだよ、俺もキースもな。でも、これを真っ先に言わなければならないな。アース、母上を救ってくれてありがとう」、そういうとジルは頭を下げた。
「俺もフローラ様を助けたかったからな、それに困ったときはお互い様だろ?」と、俺は前に、ジルに言われたセリフを言った。
「あぁ、本当にありがとう。それに、盟神探水もな。これで、この国の要人の命が救われたよ。」
役に立っているようで、よかった……。俺はその後、フローラ様の様態を聞いてみたが、どうやら前よりもお元気らしい。本当によかった。
しかし、いつまで経っても話さない男がいるな。そろそろ何か、言ってほしいが……。
「……キース、そろそろ何か言ったらどうだ?」と、俺が言うと、キースは俺を一瞥すると、「次に倒れたら、殴る」と、言ってきた。
殴るって……キースなら本当にやりそうだな。でも、それだけ心配して、怒っているんだろうな。俺は、素直にうなずいておいた。
「あと、俺の能力向上に付き合え。」
「わかった、帰ったらすぐにやろうな。」
コンコン
さっそく、皆が来たようだな。俺はキースに頼んで、ドアを開けてもらった。
「主!」、「「アース(様)!」、「アース、無事か!!」と、皆が雪崩のように部屋に入ってきた。
「心配をかけたな、ローウェル、ミラル、アスタ。それに父上も、ありがとうございます」と、俺がお礼を述べると、さらに人影が見えた。
「アース、息災か?」と、陛下がわざわざ、俺を見舞いに来てくれたのだ。
「陛下、わざわざありがとうございます」と言い、俺は立ち上がろうとしたが、陛下に制された。
「よい、そのままで。フローラ、アースにお礼を」と陛下が言うと、元気な姿のフローラ様とベルハット様、そして毒見役の女性の方が続けて入ってきた。
「アース君、本当にありがとう。あの時はもうだめだと思ったけど、アース君のおかげで今こうして立っていられるわ。本当にありがとう。そして、この私の毒見役の側仕えのミミのことも救ってくれてありがとう。ミミは私が陛下に嫁ぐ前から私に仕えてくれている、大事な側仕えです。お茶会の茶葉やお菓子は、このミミが用意してくれているのよ」と、フローラ様が、俺の手を握りながら言ってくれた。
この毒見役の女性はミミ様というのか。それに、フロー様のお茶会で提供されるお茶は、とてもおいしいと思っていたが、このミミ様が用意してくれていたんだな。
「アース様、お初にお目にかかります。ミミ・シーナインと申します。この度は、私の主の命、そして私の命を救っていただき誠にありがとうございました」と、ミミ様が頭を下げた。
「お初にお目にかかります、アース・サンドールです。どうぞ、頭をお上げください。フローラ様とミミ様がお元気そうで何よりです。今度、お茶について教えてください。あなたが選ぶお茶がとても好きなのです」と、俺が言うと、ミミ様は「えぇ、光栄です」と笑っていい、後ろへと下がった。
次に、ベルハット様が前に出てきた。
「アース様、この度は母上の命を救ってくれて本当にありがとう。弟のジルベルトも含めて、君には世話になってばかりだね。本当にありがとう」といい、俺の手を握った。
「光栄です、ベルハット様。」
ーー「アースよ、王族として、そしてフローラの夫として、フローラの命を救ってくれたことに感謝する。みな、アースに最大の敬意を。」
陛下がそういうと、アーキウェル家がそろって、俺に頭を下げた。
王族が、一貴族の子供に頭を下げるなんて……。すぐに頭を上げてもらわないと。
「皆さん、頭をお上げください。私自身もフローラ様をお救いしたかったですし、何よりも当然のことをしたまでです。それに、父上やミラル、そしてウォーザットの魔力提供がなければ、叶いませんでした。ですのでどうか、頭をお上げください」と、俺が頼み込むと、皆さんは頭を上げてくれた。
「お主は本当に、謙虚だな。それに加えて、盟神探水の功績もある。何か、お礼がしたいのだが、よろしいだろか?」
お礼と言われても、父上たちの魔力提供がなければできなかったからな……。俺は当然のことを、したまでだしな。それに、特にほしいものが思いつかないな……。
「恐れながら、辞退させていただきます。功績というのならば、魔力提供をしてくれた三人にもあるはずです。その三人に……」と、俺がそう言う途中で、陛下が遮った。
「それはできない。三人とも、辞退したからな。最大の功労者にまで、お礼がないともあれば我々の面目が立たない。だから、何か申してほしい。」
俺が、ためらっていると、ジルからも「アース、俺からも頼む」と、後押しがあった。
そこまで言われたら、断れないよな……。俺の欲しい物か、そうだな……。……あ、物ではないけどあれなら……。
「かしこまりました。では、恐れながら、ルーン石を、アクセサリーに加工できる職人の紹介をお願いしたく存じます。」
「……そんなことでいいのか?」と、陛下を含めて、周りのみんなも驚いている。
「はい。ルーン石をアクセサリーに加工できる職人ともなれば、探すのも、さらに注文を受けてもらえるまでにも、時間がかかると思います。私は、冬休み中までには完成させたいと思っておりましたので、陛下の紹介であれば可能であると判断しました」と、俺が言うと、陛下はふっと笑った。
「わかった、国で一番の職人を手配しよう。それにしても、ルーン石をアクセサリーに加工か……。そんなことをしている人間は見たことがないが……。まぁ、いいだろう。帰りに、ルーン石を受け取っていきなさい」と、陛下は面白そうなものを見る目で、俺を見た。
ーー
それから、王城でしばらく療養した後、帰ることになった。そこで、王の間にルーン石を受け取りに来た。
「アースよ、もう体調は万全か?」
「はい、お陰様で体調は万全になりました。」
「そうか、ならよかった。では、このルーン石を受け取ってほしい」と、陛下が合図をすると、ルーン石が運ばれてきた。
用意されていたルーン石は、子供の小指の爪くらいの大きさのものが十個だった。貴重だと言われているルーン石を、十一個も……。この半端な数字が、かなり頑張ってサービスしてくれた感じがでているな。
「では、帰ってゆっくり休みなさい」と陛下に、帰宅を促され、俺が帰りの挨拶をしようとすると、聞きなれない声が聞こえてきた。
「お待ちになって。」
声のした方向を見ると、そこには、第二王妃がいた。
第二王妃のヴァイオレット・アーキウェル、聖王国現国王の妹であり、聖王国の姫と呼ばれる人物だ。真っ赤な口紅に、扇子が特徴だ。
「はい、私に何か御用ですか?」
「いえね、あなたとは前からお話してみたいと思っておりましたの。そこで、あなたを私の個人的なお茶会に、招待してもよろしいかしら? 参加者はあなたと私、そしてサーカスよ。人数が少ないから、緊張しないと思うのだけど……?」と、妖艶にほほ笑みながら言った。
は? なぜこのタイミングで俺と接触を図るんだ? 俺がフローラ様を治療したからか? 何にしても行くわけがない。危険すぎる。だが、王族からの誘いを断るのは……と、俺が沈黙していると、
「第二王妃よ、アースは疲れておるのだ。早く帰って休ませるのが、大人の対応ではないだろうか?」と、陛下から助け舟が入った。
「まぁ、陛下。私は今すぐ、お茶会に連れて行くなんて、言っていませんわ。フローラ様がアース様とお茶会をしたと聞きまして、私もお誘いしたいと思っただけですわ。期日は一週間後です、それなら体調は問題ないですよね、アース様?」と、俺に話を戻してきた。
おい、陛下に何意見しているんだ? この場の空気が、凍っているぞ。
俺が長考していると、ある人物からも声がかかった。




