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今日から火曜日まで、一話投稿です。引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします。
では、本編をお楽しみください。
まずは、水魔法で水球をつくりそこに、「人体に害のある物質があれば、濁れ」とのイメージを付与する。俺の場合お湯ではなく水になってしまうが、利便性の観点からは水の方が良いだろう。
ーーよし、イメージを付与し終わったぞ。あとはこの血を、一滴たらしてみて……。
は? 濁らないぞ、失敗か? ……いや、付与は成功している気配がある、だとすると、物質ではないのか? 体に害を及ぼすもので、物質以外のものは……、菌とか、ウイルスか? だが、この世界にウイルスだとか菌だとかで病気になるなんていう、知識はないはずだ。大概を、回復魔法で治すからな……。
いや、決めつけるのは早いな。確認してみよう。
今度は水球に、「人体に害を及ぼす生物がいれば、濁れ」というイメージを付与する。そして、血を一滴たらしてみると……、濁った。
……なんだよ、これ。これじゃあまるで、バイオテロじゃないか。いやしかし、量産はできないという仮説は、間違っていないと思う。こんな強力なものを量産できたら、国を落とすなんて簡単だろうからな。わざわざ、フローラ様一人を狙う理由もわからない。やはり、国の要人を、一人一人確実に始末するためのものだと思う。
しかし、誰がこんなものをつくった? ウイルスや菌という知識がないだけで、この世界にも存在はしていると思う。実際、風邪にかかったという話は聞くしな。まぁ、この世界だと呪いだとか、神の怒りだとかそういうものに走るけど……。「呪い」か……。呪いには負の効果がある、あのデーブンの魔法みたいにな。
仮に、既存の菌やウイルスに強力な呪いを付与して、特定の臓器に悪影響を与える、遅効性の毒のようなものをつくれる人間がいたとしたら……。可能性はゼロではないな、この世界は魔法でいろいろなことができる。どこかの誰かが、ウイルスや菌の存在に気づいていても、不思議ではないからな。それに、今は対抗策をつくることができている。実際に、この毒のようなものを直接食べたフローラ様と、毒見役の女性しか罹患していない。つまり、条件として経口摂取が必要なのだろ。空気感染も可能だったら、効力が強すぎるからな。
だから、この水を……、名は【盟神探水】にしようか。盟神探水を大量に量産して、国の要人の皆さんに、小瓶に入れて持ち歩いてもらおう。そうすることで、経口摂取は防げるだろうな。
『盟神探水』
俺は大きな水球を作り出し、先程のイメージ付与を行った。
よし、後は使い方を説明して……。あ、これはまずいな。魔力欠乏を起こしかけているな……。まぁ、考えてみればそうだよな。さっき【白薔薇の世界】も使い、残りの魔力で【盟神探水】を作り出したからな。さっき、心配をかけないようにと、決めたところだったんだけどな……。
いや、しかし、再びこのバイオテロが行われるかもしれない。早々に、盟神探水の小瓶を配るべきだろう。幸い魔力欠乏の手前だ、倒れる前に手紙で使い方を残しておこう。
ーーよし、書き終わったぞ。やばい……また倒れるな……。ベッドが広くて助かったな……。
ーー
~ジルベルト視点から
「殿下、殿下!! 起きてください!!」
んー、誰かが呼んでいるな……。もう朝か……、はっ、アース!!
俺が目を覚まして周りを見ると、俺を呼んでいたいたのはどうやら、キースだったようだ。
「キースか、俺は寝てしまったんだな……。それよりも、アースは!」
「はい、昨晩目を覚ましました。それから、俺とローウェルはアースに眠るように仕向けられ、気づくと朝でした。そして、起きたら……」と、神妙そうな顔のキースが向いた方向を見てみると……。
なんだ、あの大きな水球は!! アースがつくったのか? それにしても、こんな大きな水球で何を……、と俺が考えていると、キースから手紙を渡された。
キースから手紙を受け取ってみると、そこには、水の濁り具合で毒を判別できる水であること、その効力の強さから国の要人を狙い撃ちするものではないかということ、そして小瓶に入れて、持ち歩いてほしいということが書いてあった。それから、水の効力の証明として毒見役の血と健康な人の血で比べてみてほしいとも書いてあった。
なんだと!! アースはこれを、起きてすぐに作ったのか!? だとしたら、そこで顔色を悪くして寝ているアースは……。
「おそらく再び魔力欠乏に陥ったのでしょう。それから、床をご覧ください」と、俺の考えを読んだキースが、さらに床を見るようにと促してきた。
床だと……? キースに言われたとおり、床を見てみるとそこには……、白い薔薇の花弁がぎっしりと敷き詰められていた。
これは……アースの白薔薇か? 確か、白薔薇の世界には大量の魔力が必要だったはずだよな?
「床で寝ている殿下方のお体に配慮して、アースが敷き詰めたのでしょう」と、キースも沈痛な表情を浮かべながら言った。
なんてことだ、俺たちのせいで、アースに魔力を使わせてしまったとは……。これでは、本末転倒ではないか。
「殿下、とりあえずみんなを起こしましょう。そして、このことを陛下や公爵様に」と、俺が反省していると、キースが次の行動を促してきた。まったく、よくできた側近だな。
「あぁ、そうだな。みんなを起こしたら、お前たちは部屋の外で待機だ。ここには、最小限の人数を入れたい。この水のことは伏せておきたいからな。お前の方からうまくごまかしておいてくれ。みんなを起こしたら、ローウェルに公爵様への連絡を。俺は、父上に報告に行く」、と俺は指示を出した。
ーー
そして、部屋には俺、父上、母上、サンドール公爵、カーサード財務大臣、そしてベルハット兄上が集まった。
「なに、再びアースが倒れただと? どういうことだ?」と、俺が説明するなり、父上が訝しんだ。
俺は、床に敷き詰められている白薔薇と水球のことを話した。
「……なるほど。しかし、再び倒れるとは……。いくら緊急事態とは言え、まだ十歳の子供にこんなことを……」と、父上が、青白い顔で眠っているアースを、沈痛な表情で見つめる。
「父上、今はアースが生み出してくれた、この【盟神探水】のことを何とかいたしましょう。我々もいつ狙われてもおかしくはありませんから。」
俺の言葉に父上も納得したらしく、早速【盟神探水】の効力を確かめることになった。効力の証明には、俺の血を使ってもらおうと考えていたが、公爵が、「息子の生み出したものです、私が責任をもって、効力の証明をいたします」と言って、譲らなかった。俺は、素直に引き下がって、公爵に任せることにした。
父上からの指示を受けて、サンドール公爵は指に針を刺し、血を一滴小瓶に垂らした。その小瓶は血が垂れたにもかかわらず、不思議と透明のままだった。
「では、次に毒見役の血をたらします」と、公爵が毒見役の血をたらした瞬間に……。ま、まじか……。血をたらした瞬間、透明だった水が、どす黒く濁った。
皆も驚いているようだったが、父上は冷静に次の指示を出した。
「うむ、効力は本物のようだな。至急、小瓶に分けて国の要人たちに持たせろ。」
ーー
それから俺たちは、自分たちで小瓶への移し作業を行った。情報を外に、漏らさないためだ。
「よし、皆のものご苦労だった。あとは、フーラル、この小瓶を渡す者の選定を頼む」と、父上は公爵に、選定を任せた。
「では、皆の者。各自部屋へと戻って朝食とせよ、早速今日からこの小瓶で毒の有無を確認してほしい。アースの世話は……」と、父上が言った瞬間に、俺は挙手をした。
「父上、私が引き続き担当します。今度はアースに負担をかけないよう、交代制でアースを看ます。」
「うむ、わかった。頼んだぞ、アースは今回の件の最大の功労者だからな」と、父上は再び俺に、アースの世話を任せてくれた。
今度は、アースに負担をかけないようにするからな……。




