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◎お知らせ
いつも拝読していただき、誠にありがとうございます。
つきましては、お知らせが一つございます。この度、大学のゼミの合宿のため、四日(金曜日)から、八日(火曜日)までは、毎日一話投稿とさせていただきます。
ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
では、本編をお楽しみください。
ローウェルの言葉を受けて、キースは「……はーーーーーーーー」と、長い息を吐き、項垂れた。
「俺の負けだ、アース。今回は俺の判断ミスが招いた結果だ、反省する。ただし、これ以降俺が戦線離脱をすることはないからな。いいな?」
「あぁ、それでいいよ。今回は変な連中の存在や偽魔剣の存在など、アクシデントの連続だったからな、判断ミスは責められない。だから、これから襲ってくるであろう敵に備えて、一緒に強くなろうな。とりあえず、キースとミラルは、魔刀の能力増やしだな」と、俺が言うと、二人は力強くうなずいた。
「俺は、考えてある。あとで、協力してくれよな、アース?」と、キースには、何やら新能力の当てがあるらしい。
「あぁ、楽しみにしてるよ」と、俺が返事をするのと同時に、ノック音が聞こえてきた。
コンコン
うん? カーサード卿や兄上たちかな? 結構待たせてしまったからな。俺はキースに頼んで、ドアを開けてもらった。
ーー
キースがドアを開けると、そこに立っていたのは俺の予想に反して、ジルとジルの側近たちだった。
「ジル! どうして、ここに?」と、俺が尋ねると、ジルは心配そうな顔で、俺のそばまで寄ってきた。
「茶会の招待状をもっていくついでに、サンドール公爵家へ遊びに行ったら、サンドール公爵に、「アースたちがカーサード領で襲撃された」と聞いてな、急いできたんだ。公爵も来たかったようだが、領主がそうやすやすと領地を離れるわけにはいかないからな」と、ジルが招待状を差し出しながら言った。
「心配してきてくれたんだな、ありがとな」、本当にありがとう。屋敷からカーサード領までこんな短時間で来たということは、休憩をほとんどとっていないはずだ。ジルたちの目の下には、うっすらと隈ができている。
「当たり前だ。アースさえよければ、アースの口から報告を聞きたい。一応、カーサード卿からは報告を聞いているけどな。」
それから俺は、これまで起きたことをかいつまんで、ジルに話した。
「そうか……。やはり気になるのはトゥエルブとイレブンの仲間連中と偽魔剣だな。偽魔剣は、お前の魔刀の真似だろ?」と、ジルが尋ねてきた。まあ、そうだろうな。
「そうだな。誰が制作したかはわからんが、使い方も含めると俺たちの真似だな。」
「そうなるよな……。どこから情報が漏れたんだ?」
「俺もそれは疑問だな。魔刀はまだ学園でも、能力を見せていないからな。知っている者は限られている。それに……」と、俺はそこで言葉を区切った。俺たちがカーサード領に行き、そしてローウェルのおすすめスポットで、オーロラを見ることを知っている者もな。
「それになんだ?」
これは言ってもいいことなのだろうか? いや、まずはローウェルに確認してからだな。俺の早とちりかもしれない、そうであるはずだ……。
「……ローウェル、お前のおすすめスポットを知っていた者は、キースだけか? それに、俺たちがカーサード領を訪れると知っていた者は?」
俺がそう尋ねると、頭のいいローウェルは、俺の言いたいことに気づいたようだった。そして、少しためらった後に、口を開いた。
「……、おすすめスポットを知っているのはキースだけです。主たちがカーサード領に来るのを知っていたのは、カーサード家の者だけです。」
ここまでくると、他のみんなも気づいたようだ。
そう、内通者が俺とローウェルの身内の中にいるということだ。ただ、他の可能性もあると思う。例えば、敵がとんでもなく情報取集の能力に秀でている場合だ。それも、俺たちの会話が聞こえる至近距離レベルに近づけるとかな。俺がこの他の可能性を、皆に提示してみた。
「それは、どうなんだ? そんな真似できるわけ……」と、ジルが反論してきたが、俺が遮った。
「本当にそうか? 敵は、魔刀レベルの能力の持ち主だぞ? それに一人心当たりがある。ラインハルト殿下の側近のアイザックだ。彼の情報取集能力も、半端ではない。そのアイザックと似たような真似ができるやついても、不思議ではないだろ?」
「それもそうだが、アイザックの能力とは結局何なんだ?」
「アスタ、ローウェル、何か結論は出ているか?」と、俺は二人に話を振ってみた。アイザックの能力については、二人が調べることになっていた。俺の耳としての誇りをかけてな。
「すみません、主。まだ、確信には至ってはいません。ただ、仮説は立てています。なぁ、アスタ?」
「はい、彼の属性は風。そこで、遠くの音を拾える集音能力や、遮音空間を自分の周りに作り出す能力を持っているのではないかと、仮説を立てました」と、二人は自信ありげな顔で言ってきた。
なるほどな、俺も似たようなことを考えていた。風属性のことを考えると、それが一番有力だろうな。
「そうすると、敵のけた外れの情報収集能力も、考慮に入れなければならないな。それと同時に、内通者の存在も視野に入れる」と、ジルが今後の方針をうちだした。
「内通者に関してだが、デーブンの一件から、王城内にも内通者がいるのではないかと考えている。つまり、複数いる可能性があるな」と俺が言うと、ジルも賛同してくれた。
「それはあり得るな。一人にしては、行動範囲が広すぎるし、役割も大きすぎるからな。わかった、その線で警戒しよう。」
「わかった。それから、イレブンたちのことだが、俺の予想では、同じような奴が後十人いると思う。」
「なぜだ?」と、ジルやほかのみんなが聞いてきた。
「カウントダウンだよ。次に来るのは、「テン」だろうな。」
「なるほどな。それが濃厚だろうな。後十人か……。俺も戦わなければならないかもな、いや、戦うぞ!」と、ジルやほかのみんなが決意を固めている。
……俺のせいで、みんなが傷つく可能性があるんだよな……。どう償っていけばいいのだろうか? それなら一層……。
ーー「アース、何か変なことを考えているのか? それは間違いだ。俺たちは、好きでお前の側にいるんだ。そんなお前を狙う奴なんかには負けないし、お前を守るためなら、剣をとって戦う。俺以外も、そう思っているはずだ」と、俺が考えていた事を読んだのか、ジルが釘を刺してきた。そして、ジルの言葉に他の皆も頷いた。
くそっ! 俺の悪い癖だな……。「俺がみんなを守って見せる!」、そういうくらいの気概でいればいいんだ。俺の大切な仲間だからな。
「あぁ、すまない。もう、迷わないから。あんな奴らには絶対に、負けない。だから、みんな、力を貸してくれ。」
俺がそういうと、全員力強く、頷いてくれた。俺たちは、食事をとろうということになり、食堂へと移動しようとしたが、ジルから、「アース、少し二人で話がある」と、小声で言われた。うん? 何だろう、さっきの件よりも大切なことがあるのか?
俺たちが側近たちに退室の指示を出すと、側近一同が速やかに退室した。
「で、どうしたんだ?」と、俺が聞くとキースは硬い表情をした。
「キースたちを回復させた件はどうするんだ? 特にキースは、ほぼ壊死の状態から完治している。どうするつもりだ?」
なるほどな、キースたちの回復によって、失念していた。
俺の水回復魔法の件は、陛下と父上、そしてデーブンたちと戦った時にいた者しか知らないのである。
さて、水回復魔法を使えることを明かすか、それとも光回復魔法が使えるようになったと明かすべきか……。光回復魔法の方が、今はいいだろうな。厄介ごとが増えれば、対処しきれなくなるからな。
「そうだな……。光回復魔法が使えるようになったことにするのはどうだ? 少し強めの」と、俺が言うと、ジルは少し考え込んでしまった。
「……、うーん、そうだな。水回復魔法よりかは、厄介ごとは少ないだろうな。今回、回復させたのは側近だし、何とか助けたい気持ちも相まって、普段以上の回復力が出せたと説明すれば、納得はしてくれるだろうな。」
「そうだな。それに俺の水回復魔法は、傷跡とかも治せるんだよ。これが貴族にとってどれほど有用か、特にご令嬢方にな」と、俺が言うと、ジルも同意してくれた。
「あぁ、そうだな。これからも空間属性以上に隠していくべきだろうな。別方面からも狙われる恐れがあるからな。」
「あぁ、自分から面倒ごとの種をまき散らすなんて、御免だからな。協力を頼む。」
ーー
それから俺たちは、一日休んだ後にサンドール邸へと帰ることにした。
「大変お世話になりました、カーサード卿」と、俺たちは感謝の意を伝えた。
「とんでもございません、まったくお構いもできなかったうえに、あのようなことになってしまい……」と、カーサード卿は、苦虫を嚙み潰したような顔で謝罪してきた。
あの事件は、カーサード卿のせいではないのにな……、自分の領地内で起きたことだから、責任を感じているのかもしれないな。
「カーサード卿のせいではありませんよ。それに、ここでの滞在はとても楽しい時間でした。また、訪れてもよろしいでしょうか?」と、俺が言うと、「えぇ、もちろんです。ローウェルのことを、よろしくお願いいたします」と、笑顔で言ってくれた。
俺の挨拶が一段落すると、マクウェル兄上が前に出た。
「カーサード卿、サンドール家を代表してお礼を申し上げます。この度のもてなしに加え、弟やその側近の介抱の手配、感謝の念に堪えません。」
「とんでもございません、私どもにとっても素敵な時間でした。またのお越しをお待ちしております。」
「えぇ、是非。又お話を聞かせてください。」
俺たちの挨拶が済むと、カーサード卿はローウェルに向き直り、「アース様は素敵な方だ。誠心誠意、お仕えしなさい」と、ローウェルの肩をつかみながら言った。
それに対してローウェルは、「はい、父上」と、力強くうなずいた。
それから、俺たちは、大窓でサンドール邸へと帰還した。




