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俺は、かけられていた布団をめくりキースの体を見た。
これは……、酷すぎるな。
手先や足先などの末端部分が壊死を起こしかけていて、そして全身が凍傷を起こしている。……、すまなかった、キース。俺が絶対治すからな。
『癒せ 清流の衣』
『水鏡』
俺は水鏡で、細部をくまなく観察した。
傷ついた皮膚を、ダメージを受けていない健康な肌に近づけるイメージで回復、そして壊死をおこしかけている部分は、俺の手足と近づけるようなイメージで……。
『清流の祝福』
すると、いつもよりも多くの、光り輝く水がキースを包み込んだ。これは……なんだ? いつもよりも回復スピードや治癒能力が高いな。
これは……ミラルの水の魔力か! 俺と同じ水属性で、それにミラルの「助けたい」という思いも込められた魔力なのだろう。その相乗効果で、ここまでの回復能力を発揮しているのかもしれない。
――ミラル……ありがとな。
ーー
よし、呼吸も安定してきたし、肌の色も健康的になった。あとは、目覚めてから手足が問題なく機能するかを確認してもらおう。
次は、ローウェルだな。
ローウェルは、全身に凍傷を負ってはいたものの、幸い壊死を起こしかけてはいなかったようだ。
ローウェルもすまなかったな、俺があんな命令を下してしまって……。必ず、治してやるからな。
『清流の祝福』
……よし、これで大丈夫だろう。
あとは、ミラルの回復だな。
『清流の祝福』
よし、これで三人とも命の心配はなくなっただろう。あとは、アスタが帰ってきたら、アスタにも回復魔法をかけて……。と、その前にあれからもうすぐ一時間たつな。まずは、迎えのための大窓を出さないとな。
『大窓』
……、そこで、俺の意識は遠くへ消えていった。
ーー
うっ……眩しい……。それに体が重い……。俺は……また倒れたんだな。これは、ジーマン殿下の時よりひどいな。本格的な魔力欠乏になったのだろう。それよりも、あいつらは!!
俺は……、飛び起きた!!
「アース、(主)!!」
そこには側近たちをはじめ、兄上やカーサード卿の姿があった。
「キース、ミラル、ローウェル、体調は? 特に、キース。指先はしっかり動くか?」と、俺は起きて早々、側近たちの状態を確認した。
「俺は、もう大丈夫ですよ! 主! 主が魔力欠乏症をおこした反動で、二日も寝込んでいる間に、しっかり回復しましたからね。」
……、俺は二日も寝込んでいたのか? だけどローウェルが治ったのなら何も問題はないな。ミラルはどうだろうか?
「私はもともと軽傷だったからね。一日休んで魔力が回復してからは、いつも通りだよ。」
「そうか、よかった。傷は残っているか?」
「ないよ。アースの回復魔法のおかげだね」と、ミラルは笑った。よかった、魔力を奪ってしまったから、何か弊害があるかもしれないと考えていたが、大丈夫そうだな。
「あぁ、なら良かった。そして、キース? さっきから黙ってどうした? まさか、指先が動かな……。」
すると、突然キースが俺の胸ぐらをつかんできた。
「おい、キース!! 主は病人なんだぞ!! ミラル、アスタ止めさせろ!!」と、ローウェルが怒鳴り声をあげた。ローウェルの声に反応し、アスタとミラルがキースを止めようと動き出したが、俺がそれを制した。
「いや、みんないいから。すみません皆さん、私と側近だけにしていただけますか? キースは、俺に対して言いたいことがあるのに、俺が寝ている間ずっと我慢していたのだと思います。私のことを心配していただけたのに、申し訳ございません」と、俺がいうと、三人は気を遣って、部屋を後にしてくれた。
……、まずはキースの状態を、何よりも先に確認したい。
「キース、先に答えてくれ。手足は問題なく、動くか?」
「……あぁ」と、時間をかけてキースが答えた。
「そうか、ならよかった。……あの時は、戦線離脱を命じてすまなかった。そのことを怒っているんだろ?」
俺がそういうと、首元を握る手に力を込めて、キースがまっすぐに、俺を見てきた。キースがここまでするなんて、よっぽど怒らせてしまったのだろう。俺は主として、向き合わなければならない。
「あぁ、そうだな。こんなにお前に対して、怒りを覚えたのは初めてだ。お前は、俺の主だ。俺は死ぬまでお前の前に立ち、お前を守りきる義務がある。それが、側近というものだ。だから……、二度とこんな真似を……」と、キースが言う中で、ローウェルがそれを遮った。
「キース、それは違うだろ? あれはお前の判断ミスだ。」
「なんだと、ローウェル? お前は俺をさらに怒らせたいのか?」
うん? キースの判断ミス? 何だろう、心当たりがないな。それに、ローウェルもかなり怒っているな……。俺が、早く止めないと。
「ローウェル、今は……。」
「主、今は俺に任せてください」と、ローウェルは貴族スマイルで、俺を制してきた。俺は素直に、引き下がった。
「ありがとうございます、主。それでキース、怒りたければ怒ればいいだろ? ただ、主に対してではなく、自分に対してだけどな。」
「あ? だからどういう意味……。」
「自分でも気づいているはずだ。あの時、お前は水を見た瞬間、回避に専念するべきだった。俺たちは、ジーマン殿下と主の戦いで、水と氷、そして雪が作り出す、低体温症という状況を知っていたのだからな。あの環境でお前は、自身の強みである速さを発揮しにくかった。寒さや積雪による、移動制限があったからだ。そこで、お前は【韋駄天】を温存したかったのだろう? お前の魔力量だと、一回しか使えなかったからな。つまり、お前は水を見た瞬間、韋駄天を使ってでも避けることをためらった。だから、あの寒さの中で水を全身に浴びるというミスをやらかしたんだ。あれは、お前のミスだ」と、俺の首元を掴むキースの手を振り払いながら、ローウェルが言った。
……、そう言われればそうだが、回避のために一度しか使えない必殺技を、ためらう気持ちもわかる。それに、キースとトゥエルブは至近距離で戦っていた。回避できなくても、責められないだろう。
「ローウェル、それは結果論で……」と、俺がキースを庇おうとすると、ローウェルがさらに俺を遮った。俺は、何も言わない方がよさそうだな……。これは、側近同士に任せた方が良いかもしれないな。
「いいや、主。あれは紛れもなく、キースのミスです。最後まで戦うを望むのなら、あれは韋駄天を使ってでも回避するべきでした。たとえ、韋駄天を使えなくなっても、アスタと役割を交代することができました。そしたら、戦力を分散することもなかったのですから」と、ローウェルが笑顔で言い切った。
そう言われると……。
「キース、あれはお前の判断ミスで、主を責めるのは……」と、ローウェルが再びキースの責任を追及しようとすると、キースが頭を下げた。
「もういい、わかってるから。」
そういうと、キースは、その場にしゃがみこんだ。
「すまなかった、俺は……アースに八つ当たりをしていたんだ。俺自身の判断ミスと情けなさで……。ただ、アース。二度と、自分の身を危険にしてまで、俺たちを逃がそうとするな。いいな?」と、半ば懇願しているような目で俺を見据えてくる。
主と側近という関係なら、それが正解なのだろう。ただ、俺はお前たちのことを、ただの側近なんて思っていない。大切な友人で、仲間だと思っている。
だからこそ……。
「断る」と、俺は断言した。
「な! ふざけるなよ、アース! お前は俺たちの主で……。」
「そうだな、俺たちは主従の関係だな。だけど、俺はお前たちのことをただの側近だとは思っていない。大切な友人で、仲間だと思っている。だから、次にまた、誰かが命の危機に瀕したら、また同じことをする。俺にだって、譲れないものがあるんだよ」と、俺は笑顔で言い切った。
そう、これは俺のわがままだ。しかし、この異世界生活を楽しむうえで、お前たちが必要なんだよ。だから……。
「だから……、お前が折れてくれ、キース。」
俺がそういうと、再びキースは怒りをあらわにした。
「……。次にまた同じことをするだと? だから、俺たちはお前の……。」
俺が、キースをどう説得したものかと悩んでいると、突然隣から、大爆笑する声が聞こえてきた。
「あははははははは! キース、俺たちが折れるしかないな。主は元からこういう人だ、絶対にまた同じことをするぞ。だけど、こういう人だからこそ俺たちはアース・サンドールを主に選んだんだろ? 違うか、みんな?」と、ローウェルが笑いながらもまじめな声で、他の側近たちに同意を求めた。
「私もそう思うよ。」
「自分もです!」
と、ミラルとアスタがローウェルに同意した。
「キース、俺たちが窮地に陥れば主は必ず助けに来る。だから、主を守るためには俺たちは強くなるしかないんだ。違うか、キース・ツーベルク?」
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