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では、本編をお楽しみください。
「アース様、あいつらの首についているものって……」と、アスタも気づいたようだ。
「あぁ、隷属の首輪だな。」
……隷属の首輪。装着すると、魔力付与を施した主の命令に、逆らうことができなくなる。主に、奴隷に用いる首輪。
俺たちの問いかけに対して、イレブンが狂ったような声を上げた。
「あははははははは!! お前らなんかに話すことは何もない!! 我が主に忠誠を!!俺はこの任務を放棄する!」
「ううううううーーーううううう(俺はこの任務を放棄する!)」
そう二人が言うと、首輪が急激に締まり、そして……二人の首が飛んだ。
おえぇぇぇっぇぇぇ!!! 俺は、その光景を見た瞬間に嘔吐してしまった。人がこんな死に方をするのを初めて見たからだ。耐えきれなかった……。
「アース様!! お背中をおさすりします。」
「す、すまない……。情けないな……。」
「いいえ、普通の感覚の持ち主ならば、当然の反応です。自分は影や騎士コースの訓練で、慣らされています。アース様は、まだそのような訓練を受けてはおられません。だから……情けなくなんてありません」と、アスタが優しい声で、フォローしてくれた。
ーー
アスタの介抱のおかげで、だいぶ気持ちが落ち着いてきたな……。さっきのことも、冷静に考えられそうだ。あの二人は、主の命令に逆らったから、首輪が締まったのか? 隷属の首輪をつけられたものは、主の命令に逆らうことができない。つまり、それに反する意思を宣言したことによって、二人はペナルティーを受けたということだろうか? 俺はアスタにも、意見を聞いてみることにした。
「そのようですね、しかし首が飛ぶなんて……。よほど、強力な加工が施されていたのでしょう。恐ろしく、狂信的ですね。」
全くだな……。なぜ、これほど命がかけられるのかがわからん。何がしたいんだ? 俺を生きたままとらえて、何かさせたかったのだろうか? まあ、俺の能力が狙いなのは確かだな。
……それよりも今は……。俺たちも相当疲弊し、体が冷えている。ここは一度、カーサード邸に帰ろう。ここの事後処理は、カーサード卿にお願いしようか。
ーー
俺とアスタは窓で、カーサード邸へと帰ってきた。俺たちを待っていたのは、カーサード卿とマクウェル兄上だった。
「アース様!! ご無事でしたか!」
「アース、よかった無事だったんだね。私も報告を聞いてから、アースたちのもとへ向かったんだけどね、瀕死のキースたちで出会って、それから引き返してきたんだよ。」
二人の様子から、本当に心配してくれていたことがうかがえる。やはり、キースは瀕死状態だったか……。早くキースたちの様子を確認したい。
「カーサード卿、そしてマクウェル兄上、ご心配をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。早速で悪いのですが、キースたちの様態を確認したいので、事後処理をお願いいたします。私が現場まで、お連れしますので。」
「かしこまりました。すぐにキースたちがいる部屋に案内させましょう、ただ……キースの身体の状況が芳しくありません。ご対面の際は心の御準備を。案内は妻にさせます。事後処理は私が指揮を執らせていただきます」と、カーサード卿は苦虫を嚙み潰したような顔で俺に言った。
「私も行きましょう。父に代わり、この件をしっかり把握しておきたいですからね」と、マクウェル兄上も現場への同行を申し出た。
マクウェル兄上も行ってくれるなら、俺も安心だ。父上などへの報告を、マクウェル兄上にお任せすることができるからな。
「では、皆さんを現場にお送りいたします。迎えは何時間後がよろしいでしょうか?
「とりあえず今日は夜も遅いので、一時間後でお願いいたします。最低限必要な処理を行い、明日詳しい調査を行います。」
「かしこまりました。アスタ、お前も行ってくれるか? 実際に現場にいたものがいた方が良いだろう。そして、報告も頼む。だが……、体調は大丈夫か? 無理そうなら俺が……」と、俺が言うと、アスタによって制された。
「ご心配には及びません、自分がしっかり報告しますから。それに、早くキースたちのもとへ行ってあげてください。アース様のことを一番に心配している、みんなのもとへ。」
ありがとう、アスタ。
『大窓』
俺は三人をあの現場に、窓で送り届けた。
ーー
「ではアース様、どうぞこちらへ。キースたちがお待ち……」と、ポポア様が俺を案内してくれようとした途中で、応接間に二人の人物が現れた。
「アース無事か!!」
現れたのは、ケルサス兄上とホルード様だった。二人は、寒そうにしており、今まで外にいたことがうかがえる。
「ケルサス兄上! はい、大丈夫です。御心配をおかけしました。」
ホルード様は、興味なさそうな顔をしているが……。俺はいいけど、自分の実の弟の様態とか、気にならないのか?
「……。あぁ、報告を聞いた時は驚いたぞ。オーロラを見ている途中だったが、急いで引き返してきたんだが……。マクウェル兄上は?」
俺が、カーサード卿と事後処理に向かったと伝えると、ケルサス兄上は、「兄上ばかりに、サンドール家の役目を任せているのは申し訳なないから、自分も送ってくれ」と、申し出た。俺が、ケルサス兄上の体調を心配すると、「弟がピンチの時に、暢気に俺はオーロラを見ていたんだ。このくらいはさせてくれ!」と、押し切られてしまった。そこまで兄に言われたら俺は送るしかないだろうな。
それにしても、なぜこんなに必死なのだろうか? 学園の時も今回も、俺の窮地に何もできなかったことが心残りなのだろうか? まったく、優しい兄たちだな。
俺は二人を、現場へと送り届けた。
「お待たせいたしました。ポポア様、案内をよろしくお願いします」と、俺はポポア様に向き直り、案内をお願いした。
ーー
俺は、治療室の前まで案内された。
「アース様、こちらがキースたち三人が、休んでいる部屋です。どうぞ、中へ。私は、自分の息子と子供の頃から息子と同じ様に可愛がってきたキースの、あのような姿を再び見ることは……」と、沈痛な顔で、ポポア様が言った。
「構いませんよ。案内ありがとうございました。」
ポポア様がそこまでためらうほどの重症か……。大丈夫だ、俺が絶対治すからな。俺は意を決して、中へと入った。
ーー暑っ!! 部屋に入ると、強烈な熱気が俺を包んだ。暖炉が最大火力でたかれているな。それほどまで、体温が低下していたのだろう。そこには三つのベッドが並んでおり、キースたちは眠っていた。特にキースは、この暑さなのに顔面が蒼白で、体のいたるところに包帯がまかれている。
俺が近づいていくと、かすかな声が聞こえてきた。
「ア、アース……。」
「ミラルか……、体調はどうだ?」
「私は大丈夫だよ。少し低体温気味みたい。それと、奴の冷気を浴びたところが少し悪いくらいかな」と、ミラルが明らかに無理している笑顔で言った。
「わかった。すぐに治す……」と、俺が治療に入ろうとすると、ミラルが俺を止めた。
「待って、先にローウェルとキースを。ローウェルは濡れたキースを支えながら雪道を、加えて、土人形を操作しながら下山したから、体力もそれから体の状態も悪い。重度の低体温の中、歩き続け、土人形を操作し続けたからね……。キースは、ローウェルよりも格段に悪い低体温症だ。さらに、体のいたるところが凍傷、そして壊死を起こしかけている。だから……」と、俺の腕をつかみながら、ミラルは言った。
重度の低体温症に凍傷、そして壊死だと……。ローウェルも当に限界を超えていたのに、歩き続けたのか……。俺が命令したばかりに……。くそっ、涙が止まらなくなる……。
「アース、泣いている暇はないよ。アースには治せる可能性のある力があるんだから。」
ミラル、すまない。ただ魔力が……。泣いている場合ではないのは、俺もわかっている。しかし、ここまで、大窓を三回も使っている。魔力は一人分しかない……。一刻も早く治さないと、どんどん悪く……。
「私の水の魔力を使って。アースの泡沫なら魔力を譲渡できるよね? 私は、魔力欠乏になっても構わないから」と、俺の嘆きを受けて、ミラルが衝撃の提案をした。
「は? 何を言って……」と、俺が拒否しようとするも、ミラルが引く気配はない。
「いいから、早く。魔力は休めば回復する、だけど二人の症状は休んだだけでは回復しない。だから、私の魔力を使って。私も二人を助けたいから」と、ミラルがほほ笑んだ。
「わ、わかった……。すまない。」
「そこは、ありがとうがいいな。アース?」
「あぁ、ありがとうミラル。ゆっくり休んでくれ」と、俺は今できる最大限の笑顔で、ミラルにお礼を述べた。
『凪げ 泡沫』
『泡沫よ、儚く散らせ 泡沫の夢』
ーーそうして、俺はミラルの魔力を魔力欠乏症になるギリギリまでもらった。ミラルは、静かに目を閉じて、そして意識を失った……。……、絶対俺が治すからな、ミラル。最初に、症状がひどいキースからだな。




