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『凍て殺せ 雪鬼』


『溺れ殺せ 水鬼』 




なんだ、これ? これじゃあ、まるで、俺たちの魔刀と同じじゃないか……。あの不透明な剣はやはり、魔法剣だったのか……。しかし、魔法剣は貴重で、数があまりなく、それに魔法剣を作り出す技術は、とうに失われているはずだ。だとしたら、透明ではないあの剣は、魔法剣の劣化品とかか? それに、剣に名や能力を付与するのは、俺のオリジナルのはずだ。今まで出会った敵は全て片付けている、学園でもまだ見せてはいない。だとしたら、どこから情報が漏れたんだ? いや、今はそれよりも、ますます状況がまずい。相手も俺たちの魔刀と同じような性能をしていたら……。






「アース、あれは……。」


「主……。」






と、側近たちも狼狽えてしまっている。ここは俺が、しっかりしなければな。まずは、あのうるさい方に、かまをかけてみるか。





「それは、魔法剣の劣化品かなにかか?」と、俺が問うと、あっけなく答えが返ってきた。






「ピンポーン!! そこそこやるようだなぁぁぁぁ!! これは各地からルーン石を集めて作った、魔法剣の劣化品。通称、「偽魔剣」だ。一度しか使えないが、性能は魔法剣とほぼ同じで、お前らが持っている剣ともほぼ一緒だなぁぁぁ!! まぁ、一度使えれば、充分だがなぁぁぁぁぁぁ!!!!」






各地から集めた? あのデブか? くそ、厄介この上ない。そのほかにも入手ルートがあるようだな。それにしても、誰がつくったんだ?






「それは誰がつくったんだ?」と、俺が再びうるさい方から情報を聞き出そうとするも、冷静な方に、さえぎられてしまった。






「御託はいい、さっさと片付けるぞ。」








情報収集はこれくらいで引き際だな。これからは、戦闘に集中しないとまずいな。




相手は、剣の名からして、うるさい方が水属性、静かな方が氷属性だな。氷属性を相手にするのは初めてだな……。



うるさい方は属性相性からすると、キースだな。氷はミラルに任せよう。俺は、二人の補助に入る。白薔薇姫で早々に動きを止めたいが、ここで魔力を大幅に使うのはまずい。増援や伏兵がまだいるかもしれないからな。それに相手が範囲魔法攻撃を使えるのなら、白薔薇が吹き飛ばされてしまう。まずは、相手の出方を見る必要がある。






「ミラルは氷を、キースは水の方を担当しろ。状況によっては、相手をスイッチしろ。能力の発動タイミングは、各自に任せる。俺は補助に入る。」






俺の指示を聞き、キースが一直線にトゥエルブの方へ向かい、ミラルが空中を移動し、イレブンとの距離を詰める。




二組の鍔迫り合いが始まった。剣術では互角のようだ。しかし……、イレブンのあの剣は何だ? 剣を振るたびに冷気が出ている。それに……くそっ、雪が降ってきた。これ以上、状況が悪くなるのはまずいな……。






「くっっっ!!!」と、ミラルが後ずさりをした。





「ミラル!!」






まずいな、ミラルがおされ始めた。ミラルの相手の攻撃を受け流し、そのエネルギーを使って反撃するというスタイル上、まず押されることはめったにない。しかし、ミラルの動きが鈍ってきている。






――俺が思考している途中で、イレブンがその答えの説明をした。








「俺の雪鬼は振るうたびに、冷気を放出する。それを至近距離で受け続けているんだ、いくら攻撃をいなそうが、冷気まではいなせまい。」




寒さによる、身体能力の低下か。条件は相手も同じはずだが、イレブンは氷属性だ。俺と同じで、寒さには耐性があるのだろう。








ーー








俺が対応策を考えている途中で、トゥエルブが攻撃に出た。






『大波』





突然、トゥエルブが大量の水を放出した。ミラルは上空へと退避、俺は自身とアスタ立ちを氷壁でガードした。しかし……、至近距離で戦っていたキースのガードが、間に合わなかった。




「「「「キース!!」」」」





キースは至近距離で大量の水を浴びて、水から抜け出せないでいる。まずい、このままだと溺れてしまう。この能力は……、それで、「溺れ殺せ」なのか……。 今はそれよりも、キースを助けなければ、まずい。この大量の水からキースを助け出すには……。





『拘束しろ 氷鎖』





俺は本来は拘束用の氷でできた鎖を、キースめがけて放出し、キースを水の中から引きぬいた。




「ゴホッゴホッゴホッ……。」





水から上がったキースは、激しくせき込んでいる。




「キース、無事か!」



「……あぁ、けがはしていない。大量に水を飲みこんでしまっただけだ。」






本当にけがはしていないようだな、水を大量に飲み込んで咽てしまっているようだ。しかし、これはまずいな……。大量の水を全身で浴びてしまたため、急激に体温が低下してしまう。加えて、この降りしきる雪、そして周りに積もる雪、さらにイレブンの冷気を放つ剣……。




……この状況、俺がジーマン殿下にやった戦法とほぼ同じ状況ではないか。いや、その時よりもこちらの方がまずいな……。これは、俺も決断をしなければならないな。






「キース……ガード出来なくてすまなかった。すぐに体を温めないと、凍死してしまう。アスタ、キースを連れて山を下りろ。ローウェルも一緒に行け。ミラルは大丈夫か? お前も冷気を大量に浴びているはずだ。」




「私は大丈夫だよ、最後まで戦う」と、ミラルは敵を見据えながら言った。






「ア、アース……。お、お、おお俺のことはいい、お、おおお前は氷鎧で少しでも耐性を上げておけ。お前はこのチームの主の脳だ。そそそ、そそのお前が倒れるのはまずい。」



と、震える体で、キースが俺の心配をした。ここで、「自分だけ纏うのは申し訳ない」などと、そんなことは言わない。






「……わ、わかった。その代わり、お前は早く下山しろ。俺が白薔薇姫で、動きを止めている間にな。」




「い、いや……。俺も最後まで戦う……。ああああ、ああ主が戦っているのに、っそそそ、側近の俺が、戦線を離脱するわけにはい、い、いいかない……。」





俺はできる限り側近の意思を尊重したいと考えている。しかし、今はそんなことを言っている場合ではない。このチームに火属性持ちはいない。つまり、この場に残っても、体温を上げる方法はないんだ。


















「おい、次行くぞぉぉぉぉ!!!」


『大波』




くそっ!!! 敵は待ってはくれないようだ、アニメや漫画のようにそう都合よく敵は動いてはくれない。




『氷壁』




「ミラル、イレブンを頼む!!」




俺の指示でミラルがイレブンを抑えに行った。くそっ、時間がないのに。キースに言っても、ろくに聞かないだろう。ならば……。






「主として命令する。ローウェル、土人形でキースを運べ。そして、お前自身も下山しろ。アスタは、ここに残り足止めに協力しろ。拒否権はない、行け。」




主の命令。俺はこんな、強制力の塊のような方法は使いたくはなかった。しかし、これしかないんだ……。みんな、すまない。






「ローウェル、了解。」


「アスタ、了解。」





ローウェルとアスタが覚悟を決めたような顔で、返事をした。だがキースは、俺の指示に対して憤慨した。






「ふ、ふふふ、ふざけるな!! 俺も一緒に……おい、ローウェル! 離せ!! たたた、た頼む、離してくれ!!」





俺の指示を受けて、ローウェルが感情を押し殺し、人間大の土人形でキースを抱える。


 

……すまないローウェル、辛い役目を押し付けてしまって……。








「たたたたた、た頼む、離してくれ!!!  ローウェル!! …… アース!!」




俺はキースの方を振り向かないようにした。俺は……最低の主だな。





『氷鎧』




「行かせるかよぉぉぉぉぉぉ!!!!」と、トゥエルブがキースたちの方へと攻撃を仕掛けようとした。



「黙れ!! お前らの方こそ、行かせてたまるかよ!!」



『凪げ 泡沫 【泡沫の誘い】』




 


俺は周囲に大量の泡を放出して目くらましを行った。そして、幻影を展開し、ローウェルたちの行方をくらまそうとした。それに対して、




『氷の息吹』




イレブンの周囲への冷気の展開により、俺の泡が徐々に凍らされていく。





「こんな泡風情、俺の冷気で凍らしてやる。」




もう少し時間を稼がなければ……。少しでも、少しでも長い時間を……。


俺は、凍らされるよりも多くの泡を展開し続けた。




「俺もいるんだよなぁぁぁぁぁぁ!!!」




そういうと、トゥエルブが今度は、俺に向かって突進してきた。




「ミラル、トゥエルブを頼む。」


「了解。」





少しでも、あいつらが逃げる時間を稼ぎたい……。



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