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3

 それから俺たちは、仮眠をしっかりととった。これで夜中に出歩いても大丈夫だ。俺の精神は大人だが、体はまだ十歳だからな。




そして、いよいよ出発しようということになった。




「マクウェル兄上は、カーサード卿とお話をするということでよろしいでしょうか?」



「そうだね。カーサード卿とのお話が大変勉強になるからね。私はもう少し、カーサード卿とお話がしたいんだ。」



そう兄上が目を輝かせながら言った。マクウェル兄上はオーロラよりも、財政の話の方に興味があるようだ。





「わかりました。ところで、ケルサス兄上はまだ、仮眠をとっておられるのでしょうか?」




「いいや、ホルード様とすでにオーロラを見に行ったよ。なにやら、ホルード様のおすすめのスポットがあるらしくてね。」






もう出たのか? 本当に仮眠をとったら、気分が良くなったようだ。ケルサス兄上がそんなにもオーロラが見たかったなんて、意外にもロマンチストなんだな。



それはそうと、ホルード様のおすすめということは、ローウェルと同じ場所だったりするのかな? 兄弟だし、同じでも不思議ではないな。俺はローウェルに、おすすめスポットは被っているのかを聞いてみた。






「いえ、被っていないと思いますよ。俺しか知らない場所ですからね。当然、兄上に教えたこともありません。」




当然なのか……。ローウェルたちの兄弟仲は、謎だな……。






それから俺たちはマクウェル兄上たちに見送られて、ローウェルおすすめのスポットに向けて出発した。









ーー







俺たちは現在、ローウェルの案内で屋敷から少し離れた小高い山の麓まで来ている。俺の予想だが、今から雪山アタックをするようだ。予想というか、現実だな……。





「ここの頂上が、俺のおすすめスポットです!!」と、ローウェルが目を輝かせて言ってきた。







山登りか、さらに加えて、雪が積もっているぞ。何かの修行か?



ただ、こんなキラキラな目をされると、「登りたくない」なんて言えないよな……。ここは、他の側近たちの反応を、それとなく観察してみようか。




「キースは行ったことがあるんだよな?」



「あぁ、ここから一時間ほど登れば着くぞ。それに、あのオーロラには、この山を登るくらいの価値があると思う。」




キースがそこまで言うなら、行くとするか。それに、俺も見たくなってきたしな……。一応、ミラルとアスタにも、大丈夫そうかを確認しておきたいな。






「私は平気だよ。」、「自分も普段の訓練に比べたら平気です!」と二人は、何でもないように、元気よく返事をしてくれた。





よし、せっかくの異世界のオーロラだ。みんなもこういっているし、一時間の山登りくらい大丈夫だ!








ーー







それから、三十分ほど登り続けた。


最初はどうなることかと思ったが、案外半分くらいまですんなり上ってきたな。普段、騎士の訓練を積んでいるから、これくらいなら余裕だったな。






「そういえば、ローウェル。オーロラはどんな色なんですか?」



アスタが頂上のオーロラへの期待を、高めてくれるような質問をした。



「あー、赤だ。少し緑色が混じっている部分もあるな。白い雪に映えるんだ。」




赤いオーロラか……。オーロラの俺のイメージは緑色だが、確か、地球でも緯度の高い場所では、赤いオーロラが見える場所があったような気がするな。オーロラの原理って、確か太陽からの影響だったよな? そういえば、昼間に見える太陽は、地球の太陽と同じなのだろうか?




まぁ、いいか。それよりも、赤いオーロラ楽しみだな。さぞや、幻想的なのだろうな。





「あと、半分くらいですよ、主! みんなも頑張ろう!」と、ローウェルが俺たちに声をかける。






「そうだな、着実に進んでいこう!」










ーー








そして、俺たちが頂上に着くとそこには赤いオーロラと白い雪が織りなす幻想的な空間が広がっていた。








「どうですか、主!!」


「久しぶりに見たが、やはりきれいだな。」


「本当だね。ずっと、ここにいたい気分だよ。」


「今まで生きてきた中で、一番きれいいです!  アース様はどうですか?」






これは……、赤と白が織りなす空間、そして広がる針葉樹林……。これはまるで……クリスマスみたいだな。




この世界には、もちろんクリスマスという文化はない。俺の前世の誕生日は、クリスマスだった。俺が誕生日をいうと、「クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントは一緒だった?」と、聞かれるのがテンプレだった。




懐かしいな……みんな元気にしているかな……?














「ア、アース(様)?」


「主、どうしましたか! どこか具合でも……。」




と、側近たちが俺の近くに寄ってきて、何やら困惑している。




え……? 気づくと俺の目からは、涙がこぼれていた。ダメだな、こういう風に前世と似たようなものを見ると、つい感傷的な気分になってしまう。



前世に未練があるかと聞かれると、それはまぁ、あると答えるだろう。しかし、この世界もとても楽しい。いい友人や仲間、そして家族に恵まれている。




前世のことを、きれいさっぱり忘れる必要はないと思う。ただ、俺はこの世界の住人だ。しっかり、この異世界生活を楽しみたいんだ。





「すまん、何でもないよ。ただ、この景色が美しすぎてな。ローウェル、ここに連れてきてくれてありがとうな。」




「主が、喜んでくれてよかったです……」と、ローウェルは、少し照れながらくしゃっと笑った。









ーー








それから、俺たちはこの幻想的な景色を眺めた。





「そろそろ体も冷えてきたし、帰ろうか。」




俺がそう提案すると、側近たちもこの景色に満足したらしく、賛成してくれた。それじゃあ、窓を開くとするか。大ま……。俺はそこまで言った途端に、強烈な違和感に襲われた。




うん? 空間属性を感じられなくなった。魔力切れか? いや、今日はほとんど魔力を使っていないから、それは考えられない。この感じはむしろ……。






「全員、警戒態勢に入れ。おそらく、反空間結界が張られてる。ローウェルは索敵兼、カーサード卿に増援を頼め。アスタは、ローウェルの護衛。キース、ミラルは俺から離れるな。」






そう俺が言うと、一気に全員の緊張感が増した。それから、ローウェルは土人形を展開し、他の三人も戦闘態勢に入った。



少しした後、俺はローウェルに敵の捕捉ができたかどうか、尋ねた。




「前方に二人……、来ます!」




そうローウェルが言うや否や、二人の黒ローブが姿を現した。







「あ、はっけーーーーーーん!! あの真ん中にいる銀髪が、拉致対象だな? イレブン?」


「あぁ、そうだ。生きてさえいれば、体の一部を欠損させても問題ないらしい。」






俺を拉致? こいつらのバックにいるのは誰だ? 可能性としては聖王国・教会だな。それよりも、どうやってここまで来た? それになぜ、俺たちがここにいることを知っているんだ? 俺たちがここに来ることを決めたのはさっき、そしてカーサード領を訪れることを決めたのは、つい一週間前だ。待ち伏せだろうか? いや、こんな寒い中待ち伏せしていた様子はない。それじゃあ、追ってきたのか? いや、いくらなんでも速すぎる。情報を得てから、ここに来るまでそんなに時間はないはずだ。他には……、転移陣を使ったのか? それなら、移動の時間をカットできるが、この山の頂上にあらかじめセットしたのか? それに、誰が反空間結界を張っているんだ? 



……、いや、それよりもこの状況では逃げが使えない。戦って時間を稼ぐか、俺たちで撃破するしかないのだ。












「アースを拉致だと? そんなこと、させるはずがないだろ!」



「お前ら、何者だ!」




キースとローウェルが尋ねると、鼻で笑ったかのような声が聞こえてきた。 




「答えるわけねーだろ、バー―――カ!!  黙って、くたばれ。銀髪以外は、全員殺すからよ!!!」




口が悪いな。しかし、頭は少々悪そうだな。あのうるさい方に会話を仕掛けて、何か情報を引き出してみるか。




「こんな寒い中待ち伏せしているなんて、ご苦労なことですね。上司にこき使われているんですね、お可哀そうに。」



俺がそういうと、うるさい方が、体をわなわなと震えさせて、怒鳴り散らした。


 


「……。てめえぇぇぇっぇぇ!! 俺のこと馬鹿にしてんのか!!! こんな寒いところで待つなんて、馬鹿な真似するわけねぇぇぇーーーだろぉぉぉぉーーー!!!」





こいつは、馬鹿だな。バカほど、よくしゃべるからな。待ち伏せではないということは転移陣できた説が濃厚だな。






「なるほど、よくわかりました。ジーマン殿下に俺に仕返しするようにと、命令されでもしましたか?」




「あ? ちげーよ!! 俺らのボスは……。」




と、もう少しでバックにいる奴のことを聞けるというところで、隣の冷静そうな男から、横やりが入った。



「おい、トゥエルブ。しゃべりすぎだ、少し黙れ。殺すぞ?」




「お、おう……。悪い。」





イレブンにトゥエルブ? 数字のコードネームか? なら、大きい数字の方が強いのか、それとも……。



まあ、今の会話を聞いた感じ、おそらくイレブンと呼ばれた方が強い気がする。あまり、しゃべらないしな。だとしたら、似たような連中が、後十人はいることになるな……。










「まぁ、いい。早く片付けよう。」


「そうだな、早くぶっ殺そうぜぇぇぇぇぇ!!」




俺が考えている間にも、二人が戦闘を開始しようとしている。ここは、考えるのは後で、全員に指示を出すことが先だな。






「全員に連絡。あいつらが、黒いローブを脱ぎ捨てるまで、接近戦を極力するな。何を隠しているかわからない。」





前世の何かの作品で、「敵がゆったりしている服装をしていたら、注意しろ」と言っていたからな。実際、こいつらは拉致とか暗殺とか、そういう類のものをする連中だろう。毒とかを、隠し持っていても不思議ではない。








俺の指示に全員が無言でうなずいた。



まずは、相手の出方を伺おう。それに、この足場は悪すぎる。雪で行動が制限される。特に、速さが武器のキースには厳しい条件だな……。




「俺が魔法で相手の出方をうかがう。ミラルは、飛べ。キースは俺のガードに入れ。」




俺の指示を受けて、二人が抜刀する。






『舞え 戦姫』



ミラルの魔刀、『戦姫』。能力名は【清流の乙姫】。空中を自由に移動でき、敵の攻撃を受け流し、そして、その攻撃を逆に利用して、カウンターを与えるというものだ。雪上戦に、これ以上の機動力はない。





「じゃあ、こっちも行きますかかかかぁぁぁ!!」





そういうと、黒ローブ二人はローブを脱ぎ去り、半透明な剣を抜いた。半透明の剣だと? 透明ではないが、これじゃあまるで……。






『凍て殺せ 雪鬼』


『溺れ殺せ 水鬼』 








「「「「「は?」」」」





俺たちは、状況が呑み込めずに硬直してしまった……。



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