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十二月の中旬になりました。前期は、今週で終わりです。
あれから、ハルとアイザックは正式に、娯楽同好会の部員となった。今日は、薬草園に来て、冬休みの確認を行う予定だ。
「ウルノ先輩、冬休み中の薬草の管理はどうするんですか?」
「先生方がみてくれるそうよ。アースの回復魔法を浴びたこの薬草たちの世話を、私自らがやりたいところだったけど、実家に帰らなければならないのよ。」
なるほど。この学園の先生は、生徒思いの先生が多いようだな。そう言えば、シリル殿下は帰省するのだろうか? 聞いてみようか。
「シリル殿下も帰省されるのですか?」
「う、うん。まぁね。」
うん? 何か言い淀んだよな。国内の情勢が不安定だから、あまり帰りたくないのかな?俺がそんなことを考えていると、ウルノ先輩から衝撃の発言があった。
「そういえば、四学年の教室で、「傷だらけの王子」っていう話を聞いたんだけど、誰のことだかわかる? どうやら、一学年にいるらしいのよね。王子っていうあだ名だから、国主コースの方かな?」
はー、まだそのあだ名が存在していたのか。まさか、他学年にまで広まっていたとは……。ここは貴族スマイルを浮かべておこう。
「さぁ、わかりませんね。シリル殿下はどうですか?」
「お、俺も知らない……。」
シリル殿下がきっちりと、俺の意図をくみ取ってくれたようだ。
「そうなのね……。なんか、最初に「傷だらけの王子」に傷をつけた人が王子と恋仲になれるらしいのよね。女子の憧れよね、王子と恋仲になれるなんて。」
はーーーーー? なんだ、その意味不明な噂は! それに最初に傷をつけたらって、サイコパスすぎないか、この世界の女子は?
あー、もう最悪だ。とりあえず、白目になっておこう。
(「アース、気持ちはわかるがその顔はまずい。女性に見せるものではないよ。(小声)」)
俺は何とか瞼の裏から、黒目を取り戻した。
ーー
「アース! お前の噂を聞いたぞ! 何やら面白いことになっているそうだな!」と、ハルが俺の肩を組んできた。
「面白くないぞ、ハル! まったく、他人事だと思って。」
「悪い悪い。「傷だらけの王子」だからな。俺にも、その疑惑が向けられているんだよ。」
そう呼んでいる奴って、一学年の一部の女子だよな? そこから、漏れないのかな? ウルノ先輩から話を聞いたとき、俺はこう考えた。俺のことを傷だらけの王子と呼んでいる女子生徒が、他の学年の生徒に吹聴していてもおかしくはないのではないか? 俺がそういうと、ジルが答えてくれた。
「それは、情報統制がされているからだな。もう一学年の間では、その話は聞かないな。」
「誰がやっているんだよ? ローウェルとアスタが調べてもわからなかったぞ。アイザックはどうだ?」
「いや、俺も面白そうだったから、アイザックに調べさせたが、駄目だったな。」
そうか、アイザックでもか……。それにしても、尻尾をつかませないなんてすごいよな。ローウェルたちをかいくぐるなんてどんな奴だ?
「まぁ、よほどの使い手か権力者だろうな」と、ジルが言った。
それが妥当だよな。はー、面倒くさいな……。
「まぁ、大丈夫だろう。一時のブームのようなものだ。冬休みを挟んだらみんな忘れているさ」と、ハルがフォローを入れてくれた。
だと、いいけどな……。
「そうだ、アース。父上から伝言だ、「例のもが準備できた」だそうだ」と、ジルが話題の転換を図ってくれた。
やっとか!! それは楽しみだな!! それにしても、成功するといいが……。
「何の話だ、アース?」
「ハル、それは、できてからのお楽しみだぞ。」
あの事件で褒美として提示した、ルーン石がようやく用意されたらしい。これで、生活がまた便利になるかもしれないな。
ーー
いよいよ、前期終了日の金の日です。
「アース様、前期の間お世話になりました。」
「こちらこそ、お世話になったな、クリス。それに、ジョンも。」
「はい! 俺は、アース様と一緒に魔法実技の授業が受けられて幸せでした! 冬休みの間も訓練します!」
「そうだな、俺も訓練を怠らないように気を付けるよ。シリル殿下によろしくな。」
「かしこまりました。」、「また、後期にお会いしましょう!」と、二人は笑顔で言ってくれた。今後も二人とは、いい関係を築いていきたい。
俺たちが話していると、「「「「アース様!!」」」」と、甲高い声が聞こえてきた。
「アース様と離れるなんて、寂しいですわ!」
「そうですわ、また昼食をご一緒してくださいね?」
例の四人組の女子である。一度、昼食を共にしてから、この調子である。
「き、機会があればぜひ……。」
「まぁ、嬉しいですわ!!」、「私、冬休みの間によい茶葉を見繕っておきますわね!!」と、女子四人組がはしゃぎだした。
こんな風に、魔導士コースのクラスメイトとは大体話をするようになったのだが、前賢者の孫こと、アイリーン・ガナハットとその取り巻き連中は傍観を決め込んでいる。プライドが高いから、俺なんかとは話したくはないのかな?
ーー
放課後、最後の同好会である。
そういえば、ハルは帰省するのだろうか? 俺は、ハルに質問してみた。
「あぁ、父上の公務の手伝いがあるからな。」
「それは大変だな。ジルもそんな感じか?」
「あぁ、そうだな。あ、そうだ。母上がまた、お茶会を開催したいそうだ。一月の最初の週は、空けておけよ?」
前に一度ジルに仕向けられた、第一王妃様主催のお茶会である。最初の時に、お母さま方のおもちゃにされたから、あまり行きたくはないがもう決定事項の様だ。まぁ、一応ごねてみるか。
「……もう、俺いらなくないか? ジルだけで参加してくれよ?」
「お前だけは、逃がさないからな。」
うわっ、こわっ!
「なんだ、お前ら。王妃様主催のお茶会に参加するのか?」
「あー、ジルはマダムキラーでな。お母さま方に人気なんだよ。俺はそれに、巻き込まれたんだよ」と俺が言うと、ハルがぎょっとした顔をした。
「マ、マダムキラーなのか、ジルは? ジルにそんな趣味があったなんて、知らなかったな……。」
「違う!! アースが勝手に呼んでいるだけだ!」と、ジルは勢いよく立ち上がって、俺の首根っこを掴んできた。
「本当に違うと言い切れるか? 無自覚なのはわかっているが、結果的にはそうなっているだろう?」と、俺は負けじと応戦した。
そうすると、ジルは沈黙した。
「そういうことだ。そろそろ俺は必要ないと……。」
「嫌だ。それだけは拒否する。」
俺たちが言い合っていると、ハルが泣きそうな顔をして、「俺も、もし母上主催のお茶会に一人で招待されたら泣くな」と、言った。
……。
「まぁ、参加するだけなら……」と、俺は自然に口に出していた。
「あぁ、頼む!!」
ま、まぁ、あの空間に少年を一人放り込むのもかわいそうだしな。ここは仕方がないか、俺は貴族スマイルを張り付けておこう。
と、その時、部室のドアが開いて、現れたのは……。
「アース君!!! 冬休みの間君と離れるなんて、僕はどうすれ……。」
「気持ちの悪いことを言わないでください、オーガスト先生。冬休みの間にいろいろ考えておきますから、多分。」
「本当ですか!! アース君! これで私は生きていけます。」
大げさだな。どうせ勝手に何か作るだろうに。
「あ、私の昼食はどうするのですか?」
知らん。いいから、早く帰れ。
ーー
寮にて夕食を、側近たちと取っている。
明日から、いよいよ冬休みだな。みんなには、年末年始休んでもらおうと思っている。みんなに、一応確認してみた。
すると、「俺はいらん」と、キースは即答した。
「いらんって、キースお前な。学園のこととか、しっかり報告して来いよな。御両親も心配してるだろう?」
「じゃあ、そんなにいらない」と、キースが、そっぽを向きながら言った。
「はー、じゃあ、年始には迎えに行くでいいか?」
キースは無言で、頷いた。
そんなに家にいるのが嫌なのか? 思春期だからしょうがないか。
俺は次に、ミラルに尋ねてみた。
「私も年末だけでいいよ。家に帰ってもやる事無いしね。」
なるほどな、次はアスタだな。
「自分も年末だけでいいです。」
なるほど、皆あまり実家には帰らなくていいのか。それじゃあ……。
「じゃあ、みんなで年始は……。」と、俺が年始の予定を話そうとすると、ローウェルが待ったをかけてきた。
「主!! 俺のことを忘れていますよ!?」
「あーいや、忘れていたわけじゃないぞ。この前、ローウェルの父上のランド様に領地に来てくれと言われたから年末年始にお邪魔しようかと……。」
「勘弁してください!! 俺は、断固反対です!」と、ローウェルが激しく首を振る。
「いや、別に挨拶をするだけだぞ? 主としてな。ローウェルのご家族にはまだ挨拶したことないしな。」
俺の正当な理由に、反対する気が失せたのかローウェルは、渋々頷いた。
「……挨拶だけならば、いいです。」
「わかった、挨拶だけな。じゃあ、年末はそんな感じだな。とりあえず、明日の午前までに荷造りをして、午後には帰ろうか。」
こうして、俺たちの最初の冬休みが始まる。
「面白かった!」
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