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いよいよ、水の日の朝になりました。
そういえば、俺の友人枠で行く側近たちも緊張しているのだろうか? 俺はみんなに、緊張しているかどうかを聞いてみた。
「私は緊張しているよ。なんたって、帝国の第一王子だからね。」
「俺もですね、主。ジルベルト殿下とは違った圧を感じます。」
「自分は、無口の設定なので気が楽です!」
ほー、アスタは気楽なのか。じゃあ、アスタに話題を振ってやろうか? 俺がそういうと、アスタはぶんぶんと首を横に振って、謝ってきた。
「俺も緊張してるな。」
へー、意外だ。キースも緊張するんだな? キースは普段から仏頂面だから、感情の起伏が見えにくい。たまに、笑うし、不機嫌になれば雰囲気でわかる。俺が意外だと伝えると、「どういう意味だ?」と、少しムッとして、キースが聞いてきた。
「キースは感情が表に出にくいいよなってことだよ」と、俺が言うとローウェルが乗かってきた。
「主、キースは表情で語るんじゃなくて、雰囲気で語る派ですよ。」
「あー、やっぱりそうだよな? 特に、不機嫌の時はわかりやすいよな?」
「そうですね、特に主が絡んだときなんか……痛っ!! おい、キース! 俺は文官でお前と違って鍛えてないんだぞ? もっと、手加減しろよ!」
キースがローウェルが話している途中で、拳骨を食らわせたようだ。
「うるさい、お前が悪い。」
幼馴染コンビは今日も平和だな。おかげで少しは,、緊張がほぐれたな。俺たちはその後、授業に出るために学園へと向かった。
ーー
楽しみな時間が待っていると時間は遅く感じるのに、いやな時間が待ってる時ほど時間は早く流れるよな。もう、授業が終わってしまったぞ。
「さっさと、昼食とるぞ」と、キースが急かしてくる。
「緊張で食べ物がのどを通らないよ。」
「無理してでも食っとけ。茶会の時に腹がなったらどうするんだ?」
……食べます。
ーー
他寮に入るためには、招待者とその寮の寮監のサインが入った許可証が必要である。これは、招待状に同封されていた。
今は、アイバーン帝国寮へいく転移陣の前にいる。
「安心しろ、何があってもみんなのことは守り抜くからな。」、俺がそういうと側近たちは全員笑顔になった。
「アース、それは私たちの役目だよ。」
「主、何も戦争をしに行くわけじゃないんですから気楽に。」
「アース様が危機に瀕したら、自分が必ずお守りします!」
本当に、頼もしい側近たちだな。俺たちは意を決して、転移陣に乗った。
ーー
「うわ、現代チックだな」、俺がアイバーン帝国寮に着いた時の感想だ。なんというか、文明が進んでいる感じだ。ビジネスホテルに近い感じだな。
「なんというか、世界観が違いますね、主。」
「そうだな、やはり大国なだけあって、文明が進んでいるのだろう。」
俺たちがアイバーン帝国寮についての感想を口々に言い合っていると、一人の男子学生が現れた。美術室で、招待状を持ってきた彼だな。
「こんにちは~。サンドール様、そしてご友人の皆さん。主のいる応接室に案内しますね~。」
軽いな。この感じどこかで……。と、とにかく、いよいよだ……。
よし、まずは初対面の印象が重要だ。まずは、招待してくれたことへのお礼に、お茶の話や軽い話題から……。ジルに教えてもらったことを発揮すれば、問題ないはずだ。
「主、サンドール様たちをお連れしましたよ。」
「あぁ、入れ。」
よし、最初の挨拶が肝心だ。
「この度は……。」
「よく来たな! アース! それにしても、空間属性を使わずにあの最低な王子を倒すなんてすごいな! 俺は感動したぞ!」
……その直後、俺は硬直した。人は理解の限界を超えると、フリーズするらしい。
まず、誰だ? このフレンドリーな人は? そして、なぜ俺が空間属性持ちであることを知っているんだ? それにあんなに準備してきたのに、相手がこんなテンションじゃ、俺の準備は台無しじゃないか。
「アース! おい、アース! 戻って来い! 皇族の前でフリーズはまずい。」
キースが俺の肩を必死に揺らしてくる。
「あ、あぁ。そうだな……。え、えっとアイバーン帝国第一皇子殿下、お褒めいただき光栄です。」
「なんだ、その堅苦しい呼び方は? まぁ、いい。俺はお前と、前から話してみたかったんだ。さぁ、座ってくれ。」
俺は、言われるがままに、用意されていた席に腰を下ろした。
ーー
「なぜ、そんなに落ち着きがないんだ?」
「いえ、その……状況が把握できなくて……。」
「何の状況だ?」と、殿下が不思議そうに尋ねると、殿下の側近らしき彼が助け舟を出してくれた。
「主、主がサンドール様を呼び捨てにし、さらに空間属性だと知っていて、尚且つ主がそのようにフレンドリーな理由を説明した方が良いと思いますよ。」
「あぁ、そういうことか。ではまず、なぜ俺がアースが空間属性持ちであることを知っているかについてだな。それは単純だ、王族でもないお前が、側近を連れ歩いていたからだ。」
やはり、王族・皇族クラスの人には気づかれるのか。その件については、シリル殿下にも指摘されたので納得ができる。この際参考までに、いつ頃気づいたのかを教えてもらおうかな。俺は殿下に尋ねてみた。
「美術の最初の授業の時からだ。」
最初からじゃないか。だから、あんなにチラチラ見ていたのか。
「……最初からでしたか。それが理由で、たびたび私の方を見ておられたのですか?」
「それもあるが、お前と話してみたいと思っていたのは本当だ。補修クラスで唯一の男子生徒であったし、側近持ちで、さらに空間属性も持っている奴がどんな奴か気になっていたんだ。」
そうだったのか。側近とばれてしまったのなら、側近として俺の側近たちを紹介しようか。そうして、俺は四人を順に紹介していった。
「ありがとう、面白かったぞ。」と、殿下は笑った。
普通に紹介しただけなのに、何が面白かったのだろうか? それよりも……。
「そちらの男子生徒の方は、アイバーン帝国第一皇子殿下の側近でしょうか?」
と、俺は前から気になっていたことを質問してみた。
「あぁ、そうだ。紹介が遅くなったな。こいつは俺の唯一の側近の、アイザック・ソーライトだ。アイザック、挨拶を。」
「初めましてです! ハルの唯一の側近のアイザックです。気軽にアイザックって呼んでくださいね。」と、軽くお辞儀をしながら、アイザックは言った。
帝国の第一皇子の側近がたった一人? それも気になるが、「ハル」って呼んでたよな? 側近なのに。仲がそれだけいいってことなのか。しかし、軽い奴だな。そういえば軽いと言えば……。
「アイバーン帝国第一皇子殿下とアイザック様は、とても仲がよろしいみたいですね。」
「あぁ、そうだな。こいつとは乳兄弟で、小さい時から一緒に育ったんだ。」
「そうなのですね。それにしても、唯一の側近なのですね。大国の第一皇子でいらっしゃるので、側近の方がもっと大勢いらっしゃるのかと思っていました。」
俺がそう言うと、殿下は少し陰りのある表情を見せた。
「それはだな、俺がアイバーン帝国第一皇子だからだ。」
うん? 何か言いづらそうだな。それなら、無理に聞き出すことはないな。俺は、言いづらければ、これ以上は話さなくて構いません、と伝えた。
「いや、構わない。俺は大国の第一皇子だ。それ故に、子供のころから命を狙われ続けている。だから、身近にはあまり人を置きたくないのだ。何があるかわからないからな。その点、アイザックはとても優秀だ。戦闘に諜報活動、側仕えなど、側近が行う仕事を一人でこなすことができる」と、殿下は笑って答えた。
なるほど。俺も空間属性持ちという狙われやすい性質をもってはいるが、あくまでそれは「取り込みたい」、「手にいれたい」などのような身柄の確保が目的で、命そのものが奪われるという、狙われやすさではない、現時点では、だけどな。ただ、ラインハルトは違う。命そのものを、子供の時から狙われ続けているのであろう。昔はもっと側近がいて、今は……という可能性もある。そう考えると、悲しくなるよな。
それにしても、アイザックという男はすごいな。一人で何でもこなすことができるのか。ラインハルトの信頼を一身に背負っているのだろうな。
ただ、このような大事なことを他国の俺なんかに、話してもいいのだろうか?
第六章 冬休み(一年生)編
年始は、カーサード領で過ごそうか。
あれは、魔法剣か?
アスタ、お前はもう大丈夫だ。呼べ、魔刀の名を!
お母様方とのお茶会は、タノシイナ!
これは、バイオテロか?
そうだ、ピアスを作ろう!




