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真っ赤に燃える髪と瞳……間違いない。ラインハルト・アイバーン、その人だ。ラインハルト・アイバーンは、アイバーン帝国の第一皇子である。



「あの、申し訳ございません。これからオーガスト先生と昼食をとる予定なので……」と、軽いジャブとして、やんわり断ってみる。




「オーガスト先生、少しサンドール様をお借りしてもいいか?」




オーガスト先生を狙うなんて、なかなか策士だな。帝国の第一王子に言われたら、いくら教師でも引き下がるしかないよな。案の定、先生はラインハルト殿下に譲った。





「私にどのようなご用件でしょうか?」



「いやなに、少し話がしたいだけだ。茶会に招待してもいいか?」





これには、もちろん拒否権はない。別の日でもいいと譲歩してくれているんだ、断ったら失礼どころの話ではない。




「光栄です。」



「そうか、ならよかった。アイバーン帝国寮の応接室……、それとも俺の自室がいいか?」




「応接室でお願いいたします。」



俺は即答した。いきなり殿下の自室など、ハードルが高すぎて、お茶会どころではなくなってしまうからな。


殿下が了承の意を表し、そして教室のドアの方を見ると、タイミングを見計らったかのように教室が開いた。すると、一人の男子生徒が入ってきて、殿下に手紙を渡した。




「これが招待状だ。日時は今週の水の日だ、何も予定はなかったよな?」



まぁ、予定といえば娯楽同好会に行くくらいだから、暇と言えば暇だが……。俺の行動パターンはリサーチ済みということか。招待状をすでに用意していたんだしな。




「はい、大丈夫です。かしこまりました。」



「俺も楽しみにしている」、そう笑った後、殿下は教室を後にした。





恐怖郵便を、某番組に送ろうかな?











ーー









「ということが、さっきあったんだよ。ジル、どうしよう。国主コースでは、どういう方なんだ?」





俺たちはあの後部室に来て、今はリバーシをしている。





「どういう方か……、わからないな。俺たち王族・皇族は基本的に、形式的な挨拶しか行わないからだ。各国の力関係とか外交上の問題など、色々あるからな。最近やっと、シリル殿下と会話するようになったくらいだ。」




なるほど、他の貴族とは違って気軽に会話とかできないんだな。理由には納得できるが、窮屈そうだな。王族に転生しなくて本当によかった……。



「そうなのか……。とりあえず、何の用意をしていけばいいんだ?」




というか、他の寮に行くのは初めてだな。それに、俺は今までに客人として、あまり茶会などに参加したことがない。


国にいたときは、サンドール家の屋敷やジルの部屋、そしてたまに違う領地に行くくらいで、俺はもてなされた経験があまりない。だから、こういうしっかりとした茶会に招待されるのは、ほぼ初めてなのだ。俺がこのことを伝えると、ジルも同意してくれた。




「確かにアースは、あまり俺たち以外の貴族と交流しているイメージがないな。」




「それは、俺が引きこもりとでも言いたいのか?」




「そういうことじゃない。お前の事情を鑑みれば、当然のことだ。しかし、これからは様々な社交の場に出なければいけないだろう。そんな時に、不慣れでどうするんだ? それに、サポートをする側近たちにも経験が必要だろう。よし、じゃあ今から茶会の練習をしてみようか。」





今からだと? 誰と練習するのだろうか? 俺が首をかしげていると、ジルは自身を指で指した。は、はぁ。なんか改まって、ジルと茶会するってなんか変な感じだな。俺がそういうと、ジルも笑った。





「まぁ、そうだな。しかし、慣れた相手の方が最初はいいだろう? お前が明後日茶会をする相手は、帝国の第一皇子だからな。その時に恥をかきたくはないだろう?」





「そ、そうだな。想像するだけで倒れそうだ。よろしく、頼む。」











ーー









それから、ジルの側近のサイニードとミントによって、茶会の用意がされた。すぐにこんなに、本格的な茶会の用意ができるなんてすごいよな。王族としての備えの一つなのだろうか?





準備が整うと、俺たちの茶会はスタートした。






『ジルベルト殿下、本日はお招きいただき、ありがとうございます。』



『こちらこそ、お会いできて光栄です。今、お茶を用意させます。』





ジルがそういうと、サイニードがお茶を素早く用意した。そして、ジルが先に口をつける。毒見の意味も兼ねているのだ。




『さぁ、アース様もどうぞ。お口に合えばいいのですが。』




『では、いただきます。……おいしいですね。』






え? この後に何をいえばいいの? 何か話題を振るのか? いや、でもホストが、話題を振るんじゃなかったか? 俺が、沈黙していると早速ジルから、ダメ出しが入った。






「おい、『おいしいですね。』で、終わりか? もう少し、話を広げろよ。」



「は? 他に何を言うんだよ、それくらいしか言うことなくないか?」



「あるだろ! 使っている茶葉の話とか、甘いものによく合いそうだとか、産地の話とかな!」、とジルが勢いよく立ち上がる。




「そんなの分かるわけがないだろ! 紅茶の味なんて、判別できない!」、俺も負けじとその場から立ち上がって、応戦する。




「まじかよ。あんなにうまい料理を作れるのに、味の違いが判らないのか? 」





悪かったな……。俺は紅茶の味の判別がつかないのだ。これも日本人のせいか? 緑茶の味の違いは、メーカーごとによって、当てられる自信があるんだけどな……。





「……わかった。とりあえず、用意されている茶菓子と一緒に食べて、『このお菓子の甘みを、よく引き立てていますね。』とでも、言っておけ。」






俺が了解の意を示すと、お茶会が再開された





『今日は天気がよろしいですね。アース様は普段天気がいい時、何をなさっているのですか?』



『剣術や魔法の訓練を行っています。』



俺がそう答えると、ジルからまたストップがかかった。今度は俺、何も失敗していないよな?





「……。違う、そうじゃない。音楽や美術品を嗜んでいるとか、読書をしているとか、そういう軽い話題から入れ。いきなり剣だの魔法だのと言うと、野蛮に見えるぞ。」




面倒くさい。天気がいい日に外でやることなんて、剣術か魔法の訓練くらいしかないと思うが……。洗濯を外でしていますとでも言おうか? 


軽い話題か、そうだ、いいのがあるじゃないか。




『アース様は普段何をなされているのですか?』




『料理を嗜んでいます。』



俺がそういうと、再びジルが勢いよく立ち上がる。




「……普通の貴族は料理をしない!! ふざけているのか!?」




「ふざけているわけがないだろう! 本当のことをしゃべっているだけだ!」



「すべてを馬鹿正直にしゃべっていいわけがないだろう!」





はーー? これだから貴族は……。こういうお茶会のような、腹の探り合いをする感じのもの苦手だな……。NGがわからないからな。誰か貴族の茶会の教科書でも作ってくれよ、暗記するからさ!





「わかった、よーくわかった。アースがこういうことに向いていないことはな。よし、俺が一から教えてやる。覚悟しておけよ?」




「お、お願いします……。」




苦手だが、大国の第一皇子相手にやらかすよりはましだ。それから、ジルによる熱血指導が始まった。










ーー









「もっと、優しく教えてくれてもよかったじゃないか!」




「お前が意味不明なことばかり、しでかすからだろ!! まぁ、これで何とか形になったかな。それで、キースたちは「側近」として連れていくのか?」



「いいや。『いつもの四人のご友人もぜひご一緒に』って、招待状に書いてあったよ。」





ジルは納得したようだ。そうだ、いいことを思いついた。友人の指定をされていないということは、抜け道があるじゃないか!





「『ご友人』の指定がなかったから、ジルとシリル殿下とあと二人誰か、都合のいい人を連れて行ってもいいんじゃないか?」




「お前はアホか?」


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