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月の日。俺の体調はまだ、元には戻らなかった。月の日ということで、もちろん授業がある。俺は一人で部屋に残ることになった。
俺が一人で残るということで、側近たちはかなり心配していた。どうやら、俺が一人でいる間に、魔法を使用しないかを心配しているようだ。俺はそんなに聞き分けがないように思われているのか? 俺は側近たちを言い含めて、学園へと送り出した。
さて、やることもないし、昼まで寝ているか。
ーー
あいつら遅くね? もう二コマ目の授業が終わって一時間以上経っているぞ? まさか、ジーマンに何かされているとかか……? それなら俺も行くべきだろうか? 先ほど寝たおかげで、体調はほぼ万全だ。
コンコンコン コンコン
三回のノックのあとに二回のノック、側近たちだと知らせる合図だ。お、自分で扉を開けるのは初めてだな。
扉を開けると、疲れた顔の側近たちが立っていた。
「お前ら、そんなに疲れた顔をしてどうしたんだ?」
「いや、実は……。」
「とりあえず、中に入って昼食にしよう。お腹すいただろ?」
ーー
そうして俺は昼食をとりながら、話しをきいた。
「それで、どうしてそんなに疲れているんだ?」
「それがですね、俺たちが主の友人ということで、主のことを紹介してほしいとか、主に関して質問があるとか、そういう連中が俺たちの所に押し寄せてきたんですよ。」
あーーー、またそういうパターンか。俺が空間属性持ちだとわかった時の、国の貴族連中の時と同じだな。あれだろ、接待大会だろ?
まぁ、今回は純粋に俺と話してみたいとか、戦いに感動したとか、そういう下心のない純粋な感情の人が多そうだから今回の方がましなのかな?
「一躍時の人だね。多分学園に戻ったら、大変なことになるね。」
まじかよ、明日から学園に行こうと思っていたのにな……。
「アース様体調はもうよろしいのですか? そういえば顔色も昨日より、よさそうですね!」
「あぁ、さっき寝たから、もうほとんど万全だよ。それにしても気が重いな。」
「気が重いついでだが、学園に行ったら、放課後に学園長室に来てくれだってさ。」
まぁ、それはそうだろうな。あいつに撤回と謝罪をしてもらわなければならない。俺がそういうと、キースがあいつは今、謹慎中だと教えてくれた。謹慎中なら、直接謝罪してもらうことは無理そうかな……。謝罪はしてほしいけど、できればもう会いたくはないな。
「そのまま、帰国してくれるとありがたいな。」
「それは無理でしょね、主。王族を退学にはしないでしょうね。」
「まぁ、それは仕方がないな。とりあえず、明日からは窓を使って厄介ごとを避けようか。でも、人がいると窓も出せないしな……。ただ、邪険にするのも失礼だよな……。とりあえず、落ち着くまで様子を見ようか。」
ーー
翌日の朝。
よし、完全復活だーーーー!! 魔力も体調も万全だ。やはり健康が一番だな。
「朝から元気ですね、主。」
俺が寝起きで叫んだことによって、ローウェルを起こしてしまったようだ。悪いことをしたな。俺がそう謝ると、ローウェルは笑顔で首を振った。
「大丈夫ですよ、どのみち起きなければなりませんしね。いい、目覚ましでした。」
「俺は目覚まし時計か? それよりも、傷跡を早く治そうか。これを見ていると、あいつとの戦闘を思い出すからな。」
「そうですね、早く消し去りましょう。」
それから俺たちは部屋を出て、他の側近のみんなとあいさつを交わした。
それじゃあ、早速傷跡を消して朝食にしますか。
『癒せ 清流の衣』
『水鏡』
俺は水鏡で患部をよく観察した。他の健康な肌と同じようにするイメージで回復してみようか。
『清流の祝福』
おし、治ったぞ。流石、魔刀だな! 傷跡が完璧に治っていた。これはむしろ、怪我をする前よりも、きれいになっていないか? 俺がそう考えていると、どうやら側近たちも同じように思ったらしい。
「主、これは本当にすごい能力ですね。ただ、他の貴族たちに知られると、主に治療依頼が殺到するでしょうね。」
「それは……確かにな。俺でなければ治せない人は助けよう。それからお前らも怪我したら言えよ、特にミラル。女性に傷跡があると大変だからな。いつでも言えよ。」
「わかった、頼りにしてるよ。」
「任せとけ。じゃあ、朝食にしようか。」
ーー
朝は、体調も戻り、傷も治ったおかげで晴れやかな気持ちだったが、今から学園に行くことを思うと気が重いな。
「アース、おはよう。どうしたそんなうかない顔して?」
俺が転移陣の前でうろうろしていると、ジルたちがやってきた。
「学園に行って、囲まれるかもしれないことを考えると憂鬱でな。」
「あぁ、確かに噂になっていたもんな。「傷だらけの王子」って。」
「は? なにそれ、聞いてないんだけど!! ローウェル!!」
俺は意味の分からなさから、ローウェルに話を聞いてみた。ローウェルによると、俺が「傷だらけの王子」と呼ばれてるのは間違いないようだ。傷だらけは文字通りで、あの負傷からつけられたのでは、ということらしい。それで、王子というのは、俺は見た目もよく、何よりも戦闘している姿がかっこよかったため、一部の女子生徒が俺を王子と呼び出したらしい。
オタクなのか?
「なんだ、その恥ずかしいあだ名は! それに、ジルのように本物の王子がいるのに、俺を王子なんて呼んでいいのか?」
「まぁ、そこは公ではなく陰で呼ばれていますからね……。」
「アスタ、その一部の女子生徒とやらを突き止めろ。報復する。」
「かしこまりました。」
俺が少しガチめのトーンでそういうと、キースに必死の剣幕で止められた。
「キース、わかってるよ。アスタ冗談だ。」
俺がそういうと、アスタは神妙な面持ちをして、個人的に見つけ出してもいいかと聞いてきた。それならありかもな。危険人物としてマークしておこう。今後も、変なあだ名をつけらえるおそれがあるからな。俺の肯定を受けて、アスタは笑顔で引き受けてくれた。
俺とアスタが不穏な会話をしていると、あきれ口調のジルから、魅力的な提案があった。どうやら、囲まれることが不安なら、しばらくはジルたちと一緒に行動するのはどうか、という提案らしい。王族のジルがいれば、多少は話しかけづらくなるだろうし、ありがたく提案を受けようか。
「王子が二人もいれば、そう話かけられはしないだろうな! 何なら、シリル殿下にもお願いして、王子が三人で……。」
「うるさいぞ、年上キラー!!」
「は? いつから年上になったんだよ! 前まではマダムだっただろ!」
「最近、先輩のご令嬢からも人気らしいな? よ! 年上キラー!」
ジルは最近幼さが少し抜けたおかげで、前まではお母さま方に人気だったが、今では年上のご令嬢方にも人気なのだ。ちっ、いいご身分だな!
「謝るから、その呼び方だけはやめてくれ!」
ーー
学園につくと、俺に一気に視線が集まった。しかし、流石は王族のジルだ。目で制しながら前へと進んでいく。周りの生徒たちは話しかけたそうにしながら、渋々ながら道を譲っていく。
ようやく、教室についたか。俺はジルにありがとうと伝えた。
「これくらいいいさ。それにしても、ほとんどの生徒がお前のことを見ていたな。」
本当にそうだったな。はー、これから先が思いやられるな……。そんなこんなで俺たちは、火の日の授業をすべて終えた。そして放課後、俺たちは薬草研究会の部室の前まででやってきた。
「ウルノ先輩、こんにちは。」
「こんにちは、アース、ローウェル。アース、体調は大丈夫なの?」
「はい、ウルノ先輩。御心配をおかけしました。」
「アースが元気そうでよかったわ。それにしても、アースって強かったのね。回復魔法も使えるし、魔法戦も強いなんて憧れちゃうわ。」
「それほどでもないですよ、運が良かっただけです。ところで、シリル殿下はまでいらしてないのですか?」
すると、タイミングよくドアが開いた。




