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16


それから俺らは会場に向かった。会場はバトルフィールドと観客席に分かれており、俺は皆と別れて、バトルフィールドへと向かった。





「よう。逃げずに来たな、アース? お前を完膚なきまでに叩きのめして、側近に加えてやるのが楽しみだ。」





「俺は負けるつもりはありません。譲れないものがありますので。」




「ふん! ほざいていられるのも、今の内だ!」








しかし、すごい観客の数だな。一学年だけではないかもしれない。前期には、こうした本気戦いの催しがないからな。野次馬気分の者が多いのだろう。




すると、一人の男性がバトルフィールドに現れた。モール先生だな。






「私がこの決闘の立会人を務めさせていただきます。アース、止めてやれずにすまない。」





「これは私が受けた時点で、正式な決闘です。先生が、謝る必要はないですよ。」




「……そうか。無茶だけはするなよ。」


「ありがとうございます。」














ーー











「では両者準備はよろしいですね? 始め!」





『雷槍』


『氷壁』






クソ! やはり、雷魔法で攻めてきたか。それに、中級魔法で氷壁がここまで削られている。認めたくはないが、かなりの使い手でだな。



これは受けに回っていたら、削られるな。ならば……。






『氷柱雨』


『小窓』






……は?


俺はいつも通り、氷柱雨と小窓を使った攪乱を仕掛けようとした。しかし、小窓が出なかった。氷柱雨は指定した方向へ一直線に向かっていく。威力や小窓がなければ、ガードや回避が簡単だ。




いや、それよりも、窓が出せないとはどういうことだ? これじゃあ、まるであの時の……。






『風刃』






案の定ジーマン殿下の風魔法によって、俺の氷柱雨が容易に砕かれてしまった。これは、どういうことだ? すると、ジーマン殿下は不気味な笑顔を浮かべた。






「ははははははははっ! どうかしたのか、アース? 」





「お前まさか……。」





これは……。デーブンや司教と戦った時の、反空間結界か。こいつは聖王国の人間だ。つまり、結界を持っていても不思議ではない。






「ははははははははっ! 俺の使えない魔法を封じて、何が悪い?」




「これは反則……。」



「証拠は? 」


「くっ……。」






その通りだ。あの事件のあと、反空間結界を国に調べてもらったが、その結果は芳しくなかった。なぜなら、普通の反魔法結界と異なり、空間魔法のみを封じるから、俺以外には探知できないのだ。それ故に、反空間結界が張られているという証拠は、俺の証言しか存在しないのだ。俺一人が何を言ったところで、万人が信じてくれるわけではない。だから、こいつの反則も指摘することができない。







「何のために一時間の間を置いたと思っているんだ? 茶でも飲んでいると思ったか? ははははははははっ!」









これはまたしても後手に回った。いや、それよりもかなりまずい。なぜなら最強の盾でもある、『大窓』を封じられたからだ。雷の上級魔法に対処する方法は………。













ーー














~見学者side~


※ジルベルト視点






「ジルベルト殿下、アースが雷魔法に弱いというのは本当ですか?」



「えぇ、シリル殿下。正確には、「一流の雷属性持ちの魔導士に弱い」ですね。属性的に相性が悪いのですよ。雷の身体強化を使う相手、もしくは刀を使うことができれば別ですが……。そうだよな? 雷使いのキース?」




「……。」





俺の問いにかけに対し、キースは無反応だった。無理もないか。キースは二重の意味で傷ついているな……。すると、幼馴染のローウェルがキースの肩付近を殴った。




「おい、キース! 殿下を無視するとはどういうことだ? それに、さっきの主に対する態度は何だ? 俺たちの名誉のために、主は戦っているんだぞ? その主に対して……あんな風に送り出す必要はあったのか? 少しは頭を冷やせ!」






すると、キースが俯きながら話し始めた。





「……俺だって、あんな言い方をするつもりはなかった。ただ、アースが自分のことを蔑ろにしていたから……。」







俺もその気持ちはわかるぞ、キース。だが今は……。俺たちのやるべきことは、先ほどのことを反省することではないんだ。






「キース、お前の気持ちは十分にわかっているつもりだ。ただ、今はアースのことを全力で応援しよう。それが今、俺たちがしなければならないことだ。わかるな?」






俺だって、アースが自分のことを条件に加えなかったことには腹を立てている。しかし、今俺たちがやることはアースに腹を立てることではないんだ。






「ジ、ジルベルト殿下、先程は申し訳ありませんでした。今、自分ができることをいたします。」





よし、顔が前を向いたな。




「それでいい。さぁ、始まるぞ。」












ーー










『雷槍』


『氷壁』










やはり雷属性を使ってきたか。やはりアースの情報は伝わっているようだ。情報の出どころは……。あの母子だろうな。まったく、余計なことしかしないな。





すると、アースの氷柱雨がまっすぐに飛んでいくのが見えた。これは、いつもとは違う。どうしたんだ、アースは?





「は? なんで、氷柱雨が一直線に向かっていくんだ? それにアースは今、『小窓』と詠唱したよな?」






「は、はい。確かに聞こえました。それなのに窓が出ないのは………。これじゃあ、まるであいつと戦った時と同じ……。」




「反空間結界か!」



「キース、それは本当か? だとしたら、反則だぞ!」





「俺が今から教師に説明しにいってきます!」

「私も行くよ、キース。」




俺がそういうと、キースとミラルが教師の下へ反則を報告しようと立ち上がった。しかし、これは止めざるを得ない。






「ダメだ、お前ら。言ったところで証拠がない。今頃、アースもそのことを考えているだろう。」





あの事件の後、国の総力を挙げて調べたが、痕跡を見つけることができなかった。俺たちは、空間属性持ちではないからだ。あれほど悔しいことはない。






「証拠がないのですか? では、どうやって結界を張っているのですか?」





「シリル殿下、それもわかってはいません。反魔法結界と同じであれば、結界を張った術者がいるのでしょうが、仮にいたとしても相手は聖王国です。結界を張った後、既に転移陣で逃げているかもしれません。現状、反空間結界の存在を確認できるのは、アースだけなのです。」







「それは……。アースにだけ作用する結界だから、アースにしかわからないということですね……。それならば、俺たちにできることは……。」





「術者を現行犯で、捕まえるくらいしかできないでしょう。」






俺がそういうと、全員が苦い顔をした。


いや、待て。アースはまだ、この学園で空間魔法を人前では使っていないはずだ。それなのになぜ、シリル殿下は……。






「シリル殿下はアースが空間属性持ちだと、ご存じだったのですか? 」



俺が思っていたことをローウェルがズバリ尋ねた。俺も知りたいが、今はその藩士をする時ではないだろう。




「ローウェル、その話はまた今度にしよう。今は、アースの試合に集中しよう。アースは最強の盾を失ったんだろ? このままだと、上級雷魔法を防げない。」




今はその話よりも、アースの状況がかなりまずい。アース、雷魔法を防ぐ手立ては何かあるのか?




「アースはあの事件から、空間属性が使えない戦いを想定して訓練していた。何か、策があるはずだ。」



「キースの言うとおりだね、アースを信じよう。」




そうだ皆の言うとおりだ。しかし、策がない場合は……。ダメだ、考えるのはよそう。俺は、アースを信じる。



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