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13

そうして俺とローウェルは薬草園を出て部室の前に戻るとキースたちと、他の集団が待っていた。殿下の側近かな? 



俺たちに気づくと、キースがあからさまに不機嫌な雰囲気を醸し出した。そして、俺たちを一瞥し話しかけてきた。



「どこに行っていたんだ?」





「そう怒るなよ、キース。薬草園に行っていただけだ。な、ローウェル?」




「そうだぞ、キース。薬草研究会なんだから、薬草園を持っていても不思議じゃないだろう?」



「……わかった。」





一応キースが名遠くしてくれたようで俺たちが帰ろうとすると、帰り際に再び先輩と植物談義に花を咲かせていた殿下が戻ってきた。



俺たちは軽く一礼をして帰ろうとしたのだが、呼び止められた。




「サンドール様! お礼をさせてください!」


「わ、私にですか? 私は、何もしていませんよ?」



「いえ、あなたのおかげで私は薬草研究会に入部することができて、植物の会話をすることができました。本当にありがとうございました。」





本当に丁寧だな、シリル殿下は。






「恐れ入ります。ただ、私は思ったことを言ったまでですよ。殿下の楽しそうなお顔を拝見できて、光栄でした。」




俺がそういうとシリル殿下は何ともうれしそうな顔をした。しかし側近たちは少し警戒しているような、複雑なような顔をした。俺が不思議に思っていると、殿下から提案があった。





「あの、よければアースとお呼びしてもよろしいでしょうか? 私のこともシリルと呼んでほしいですが、どうでしょうか?」





「かしこまりました、シリル殿下。」






俺がそういうと、シリル殿下は笑顔で見送ってくれた。











ーー










その夜。


~側近side キース視点~




「じゃあ、俺は先に風呂にはいいてくるな。お前らも後で来いよ!」



そういうと、アースは風呂へと向かっていった。俺たちは王族との接触が激しいアースに対応するため、こうして側近同士で話し合いをするようにしている。




「それでローウェル、研究会で何があった?」



「あー、そうだな。殿下が自己紹介をして、ウルノ先輩が、殿下が王族だとわかってフリーズしてしまったんだよ。」




「ウルノ先輩って、研究会の人であってる?」




「そう、ミラル譲の言う通りで唯一の先輩だよ。」




「え? では、今まで部員はその、ウルノ先輩だけだったのですか?」



「そうだね。去年、他の部員は卒業してしまったらしい。そしてフリーズした後に、殿下が困らせるつもりはないから、入部を取りやめるといったんだよ。」




それは、情景が思い浮かぶな。身を引ける点で、傲慢な王族ではないだろう。聖王国の王族よりも安心できるが、警戒するに越したことはない。もっと情報が欲しいところだ。




「あー。それは仕方がないと言えば、仕方がないね。」




「そうですね。王族は変に触れてはいけないですからね。」





「そうだね。そして、その直後に主が「貴重な新入部員だし、植物好き同士で話が合うのでは?」と、言ったんだよ。」




それは、想像に難くないな。アースならやりそうだ。王族だろうが何だろうが、自分が正しいと思ったことにはまっすぐだからな。側近としてはもっと自重してほしいが、個人的には面白い。




「あー、アースらしいね。」



「本当ですね、アース様らしいです。キース? どうしましたか、そんなに笑って?」




「いや、面白いなと思ってな。それで、アースはなんでそんなことをしたのか、理由を言っていたか?」




「あー、俺も気になって聞いたよ。そしたら、「誰かさんに似てたから」だってさ。」






ジルベルト殿下のことだな。なんというか、雰囲気はジルベルト殿下に近かったよな、シリル殿下は。ジルベルト殿下をもう少し丁寧にした感じだ。アースがほっておけないタイプなのだろう。王族から距離をとっているようで、気づくと手を差し伸べている。そんな俺も、助けられた口だけどな………。




「だが、俺たちは側近だ。調べるべきものは、しっかり調べよう。グレートプレア王国は、内部が国王派と公爵派で分かれている。そこら辺もしっかり調べるぞ。」




俺がそういうと、みんなはまじめな顔でうなずいた。












ーー










※アース視点



あいつら遅いな。また俺に隠れて、何かこそこそ話してるのだろうか。俺がそう考えていると、扉の前に気配を感じた。






ガラガラ






「お前ら遅かったな。また、俺に内緒でなんか話してただろ!」





「何でもない、ただの雑談だ。」

「そうですよ、主。」

「側近同士で、打ち合わせたいこともありますよ。」






……。まぁ、そういうことにしておくか。










ーー










水と木の日は教養科目だけで、終わった。何やら、授業中にジーマン・サンテリア殿下からの視線を感じたが、授業終了後に素早く移動して接触を回避している。




授業終了後には、ジルたちとバレーをして遊んだ。そういえば、同好会申請を出さなければならないな。










ーー










金の日である。

今日は魔法実技の授業がある日だ。午前に二コマやり、午後に教養科目を一コマやるという流れだ。




ホームルーム終了後に、モール先生に同好会申請を出しに行く。





「モール先生、同好会の申請書を提出したいのですが、モール先生に提出すればよろしいですか?」




「そうだな、受け取ろう。同好会の名前は何だ?」




「娯楽同好会です。」






ちなみに、提案者はジルだ。俺は、「お遊び同好会」という名前を提案したが、速攻で却下された。なぜだ?








「……それは何をする同好会なんだ?」




「そうですね。いろいろな娯楽を開発し、享受する同好会です。」




「あー、確かお前の工作の試験のアイデアに、商品化の打診が行っていたな。そういう感じの娯楽か?」



俺はほかに聞かれたくはなかったので、笑顔でうなずくことにした。最近俺の貴族笑顔のレベルが上がった気がする。





「わかった。で、顧問はどうする?」



「必要なのですか?」




「あぁ、そうだな。しかし、今は同好会も含めるとかなりの数があるから、引き受けてくれる先生がいるかどうかはわからない。一応、職員会議で声をかけてみる。」








なり手がいなかったらどうしよう。手ごろな先生を見つけて、賄賂でも送ろうかな? あの変人以外なら、どの先生でもいい。










ーー








これから魔法実技の授業が始まる。楽しみだが、俺は上級魔法まですでに扱える。正直、何を授業で行うのかわからないな。



「それでは、魔法実技の授業を始める。」





魔法実技の担当は、モール先生だ。



「これから一年間で、みんなに習得してもらいたいのは「魔力引出」だ。そうだな、そこのマーケ。魔導士同士の戦闘で、優劣をつけるものなんだと思う?」




マーケはクラスメイトだ、話したことはない。というか、まだ誰とも話したことはないな?






「魔力量だと思います。」




俺も同感だ。





「そうだな。魔力量は絶対だ、威力や持久力にかかわるからな。だが、戦闘で魔量量に差がある相手とぶつかったらみんなはどうする、逃げるか? そうじゃないな。魔力量以外の技術や戦闘スキルで、勝つ手段を見つける。これが正解だ。では、努力で向上させられる技術には何があると思う? じゃあ、クリス。」





「はい、魔法の発動スピードですか?」





「正解だ。例えば、詠唱だな。しかし、「水槍」などの短い単語だと、それほど人によって差が生まれない。」





そうだ。俺も魔法の発動スピードを上げようと奔走した。それで、現在は朝に魔力を体内で循環させて、手に魔力が少しでも早く集まるようにと毎朝のルーティンとしている。今では、料理しながらでもできる。





「じゃあ、何を早くするか。そう、これが魔力引出だ。丹田に魔力の源があるがそこから手に魔力を流し、みんなは魔法を放っているな? そこで質問だ。なぜわざわざ、手に魔力を集めて魔法を放っているんだ?」







は? この人は何を言っているのだろう。対象に手を向けて、魔法を放つのが普通だろう? あとは、杖でとかな。アニメとかでもそうだったし……。




俺たちの微妙な反応に、先生は不敵に笑った。





「こいつ、何言っているんだ? という反応だな。俺が言ったのは、「なぜ丹田の魔力の源から、直接魔法を行使しないんだ」、という意味だ。」














その瞬間、俺は雷に打たれたような衝撃を受けた。たしかに、そうだ。わざわざ手から放つ必要はないじゃないか。「魔法は手から放つ」、これは完全な固定観念だったんだ。








「家庭教師から魔法を教わった者は、なぜこのことを教えられなかったのかと、疑問に思っていることだろう。それは、暴発する危険性があるからだ。源から直接魔力を引き出すんだ。これは、かなり危険なことだ。一回暴発が起こってしまうと、魔力回路が傷つき、酷ければ一生魔法が使えなくなる。だから、体がある程度成長する、学園入学までは教えないことになっているんだ。入学前は、腕や手を経由することで、魔力を分散させていたんだよ。」

















これが、「学ぶ」ということか。




なんだろう、すごく楽しい。




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