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「とりあえず、対戦の前に昼食といたしましょう。私、弁当を持参しているんです。」





「ちょうどお昼ですし、いいですね。しかし、どこにお弁当が?」




「おそらく、教室の前に友人が迎えに来てくれていると思いますので、その友人が持っております。」




「優しい友人なのですね。」





「そうですね。私が方向音痴なので、最初の内は付き添いを頼んでいるのですよ。では、呼んできますね。」




俺はいつも通りの設定を口にして、教室の出口へと向かった。ただ向かうのではなく、この状況を側近達に完結に伝えなければならないのだ。あまり長く話していると、先生に不信がられてしまう。





ガラガラ








ーー












「お前ら落ち着て聞いてくれ、あまり話している時間はないからキーワードだけいうな。「変人」、「リバーシ」、「昼食」、「盾役」だ。」






「大体理解した。いつも通り、友人設定でいいな?」






は? 自分で言うのもなんだが、本当に理解したのか? 側近たちが優秀すぎて、恐ろしくなる。




友人設定とは、俺が側近付きであることのカムフラージュだ。ただの公爵家の三男が側近を四人も付けているなんて、いかにも怪しからな。俺たちは仲のいい幼馴染という設定だ。実際も仲はいいが、言葉遣いとかを気を付けようという話だ。アスタは、俺に対してどうしても敬語を外せないらしいから、こういう時は無口な美少年でいてもらっている。












「先生こちらが、私の友人たちです。右から、キース、ミラル、ローウェル、そしてアスタです。アスタは無口ですが、シャイなだけなので許してあげてください。」



俺の紹介に合わせて、各人が礼をする。




「いいご友人たちですね。工作担当のオーガストです。そのうち、皆さんとも美術の時間にお会いするでしょう。」







そうして挨拶が終わると、さっそく昼食をとることになった。先生のお口に合えばいいけど………。










ーー









「この昼食、本当においしいですね! どこのお弁当ですか?」





どうやら先生の口にもあったようだ。やはり、この学園の教師でもそういう風な反応をするのか。




「サンドール家の食事を届けてもらっているのですよ。私はこの味からどうにも離れられなくて。」






「それはそうでしょう。私もそうなりそうです。えーと、キース君? アース君は昔からリバーシのような面白い玩具を思いついていたのですか?」





いきなり、サンドール君からアース君へと呼び方が変わったぞ。まあ、俺だけ家名で呼ぶのもあれだしな。



というか、いきなり俺の昔話になったな。ここからは、側近のアドリブ力が試されるな。でもなんだかんだ言って、みんなと出会って四年くらい経つし、大丈夫だろう。






「はい。アースは面白いことを考えるのが得意で、いつも私たちを楽しませてくれています。」





無難な返しだ、流石キース。





「そうなのですね。他にもいろいろな玩具を知りたいですね。ローウェル君は、何か覚えているものはありますか?」






こ、これは厳しい。俺も、玩具を他に何か言った覚えはない。というか、多分ないはずだ。まずいな……。







「玩具ですと……小さい頃ですので、あまり記憶にないですね。申し訳ございません。ただ私は、アースのつくる音楽が好きですね。確か試験でも、満点をいただいていましたよね?」






「私も音楽の先生からアース君の引いたピアノの曲は新鮮で、大変興味深かったと聞いております。いつか聞かせてください!」






「恐れ入ります、機会がありましたら是非。」






これはすごい。流石優秀な文官だ。確かに、玩具は小さい子のためのものが多い。だから、小さすぎて覚えてないというわけだな。そして、試験結果を絡めて音楽へとうまく話題をそらしたな。流石だ。






「先生、そろそろみんな食べ終わりましたし、対戦してみませんか? 私も自分で考えたものがしっかりとできているか確認したいです。」






「確かにそうですね。では、お相手よろしくお願いいたします。」










ーー










それから、俺は何戦も付き合わされた。最初は楽しかったが、こう何度も連戦しているとさすがに疲れてくる。







「先生、そろそろ部活動の見学に行きたいのですがよろしいでしょうか?」




「はー、もうこんな時間ですか。楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまいますね。それにしても一回も勝てませんでしたよ。」




「運が良かっただけですよ。」





それはそうだろう。俺は現世で小説を読む合間に、対戦しまくったんだ。素人にはまず負けない。






「次は必ず勝って見せます。来週が待ち遠しいですね、昼食も対戦も。」





「私もです。では、本日はこれでお暇いたしますね。」




「えぇ。また来週。」






そうして俺たちは美術室をあとにした。それにしても俺の昔話をちょいちょい聞き出そうとしていたな。もしかして、探られていたのだろうか? 俺は側近たちの意見を聞いてみることにした。






「俺はただ、興味があることを聞いていただけだと思うな。」



「俺もですね、主。調べますか?」




「ああ、頼む。それにしても、ラインハルト殿下の盾役に選んだのは間違いだったかな? 非常に疲れたぞ。」





俺がそういうと、アスタは腑に落ちたようにに頷いた。そうやら側近たちに、あのキーワードのすべてが伝わっていたわけでなかったようだ。





「盾とは、ラインハルト殿下の盾だったのですね。自分は、ラインハルト殿下かアイラ殿下の、どちらかわかりませんでしたよ。」





「なんか、俺と話したそうに、こっちをチラチラ見てたんだよな。」




「王族・皇族から、気に入られる才能でもあるのか?」




「そんな才能はいらん。」




俺がそう言ってため息をつくと、キースが話題を転換した。というか、若干の本音を口に出した。





「それにしても、リバーシやってみたかったな。」


「私も、ああいう戦略的なものは好きだね。」





そういうかと思って、俺はしっかりと手を打ってある。先ほど、十セット程リバーシの追加を先生に頼んだのだからな。




「ああそれなら、対戦を引き受ける代わりに新しいものを十セット作ってもらえるように頼んだから、あとでやろうな。」





「流石、主! 取るときはしっかりと取りますね! 」





「もちろんだ、割に合わないからな。じゃあ、早くジルたちと合流してバレーしようぜ。」











ーー











「ということが昼間にあったんだよ。」




俺はジルたちと合流してから、先程までにあったことをすべて報告した。ジルは頭を抱えていたが、しっかりと聞いてくれた。





「色々ありすぎだな。それにしても、ラインハルト殿下とアイラ殿下がどちらも補修クラスだったとは………。加えて、その変人教師も大変そうだな。悪い奴ではないんだろ?」





「そうだな………。悪気がなく鋭いという感じの、厄介タイプだ。一応、調べる。」





「そうか。まぁ、とりあえずはリバーシの対戦をしていれば大丈夫なんだろ?」






とりあえずは大丈夫なのかな? そう思いたいが………。他にも厄介ごとを持ち込んできそうな感じはあるが、先のことを心配いていてもしょうがないか………。






「よし、だったら早くバレーボールの続きをやろうぜ。これは最高だ。勝負と運動を両立できる。特にオーサックがうれしそうだな。」





「戦闘狂だからな。剣でなくとも、勝負ができればいいんだろ。チームはこのままか?」





「あぁ、まだ俺たち「ジルベルトチーム」がお前らに勝てていないからな。勝つまでやるぞ。」




「おう、望むところだ。」









それから、俺たちは夕食時間までバレーボールを楽しんだ。ジルたちも楽しんでくれたようで何よりだ。












ーー











そして次の日。


今日は教養科目をさっさと終わらせ、中庭で昼食をとっている。








「今日は薬草研究部の見学予定だな。騎士組はどうする? あまり興味はないだろ?」








「俺は訓練場で鍛錬。」

「私もキースについていくかな。」

「自分は先生を張った後に、キースたちに合流します。」








「わかった。じゃあ、ローウェルと二人だな。そういえば、ローウェルとは部屋は同じだけど、二人で何かするって初めてじゃないか?」





俺がそういうと、ローウェルはいきなり立ち上がった。何をそんなに躍起になっているのだろうか? 俺たちは立ち上がったローウェルを温かい目で見つめた。





「そうですよ、主! キースは初期のころ主と旅行に行ってたし、アスタも学園に来る前に旅行に行ってました! ミラル譲は女性だから体面上仕方がないとしても……、俺だけ主と何もしてないですよ!」








「………根に持っていたんだな。それに、アスタとは旅行だがキースとは公務だぞ? 旅行じゃない。それにお前は文官だ。騎士と違って俺と二人では移動できないから、しょうがないだろう。」




「まあ、正論ですけど……。キース、なんだよ!」




見るとキースがローウェルのことを半目で眺めていた。また始まったようだ、幼馴染のじゃれ合いが………。





「いや、別に。そんなこと思ってたんだなと思ってさ。」




「別にいいだろう。俺だってちゃんと役に立ちたいんだ。」





そう言うと、ローウェルは恥ずかしそうにそっぽを向いた。ローウェルは自分があまり役に立っていないと思っていたのか? それはまったくの思い違いなので、今すぐに正したい。




「ローウェルは、ローウェルにしかできないことで役に立っているだろう。情報収集や偵察は重要な役割だ。現にこの前、ミラルとキースと三人で商業エリアに行ったとき、警戒もしなくちゃいけないし、店も探さなくちゃいけないしで、大変だったんだぞ。あの時は、お前のありがたみが身に染みたな。なあ、ミラル?」






「そうだね、私たちだけだと近辺しか探れないからね。広い探知は本当にありがたいよ。」





「ははは……。それほどでも……。」






そういうと、ローウェルは恥ずかしそうに笑った。






「キモい。」





「おい、こらキース!! お前は本当に……。」





そんなこんなで俺らは仲良く、昼食を終えた。

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