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月の日である。今日から授業の開始だ。今日の科目は、算術と美術……。朝から、憂鬱である。











「おはよう、みんな。今日からいよいよ、授業だな。まあ今日は、オリエンテーションだけど。」



「主は、美術の時は別の教室に行くんですよね?」




「ああ、そうだな。人もあまりいないだろうし……。まさか、俺だけってことはないよな?」



「どうでしょう、騎士コースに補修クラスの人はいなかったと思いますよ。」


「文官コースもいませんでした。」





……。ま、まぁ一人の方が気楽に受けられるからよしとしよう。俺の絵が、多数人に見られずに済むしな。











ーー









基本的に座学の教養科目は大講義室で行われるようだ。出入り口も複数あるため、厄介な奴らに見つからずに済んだ。





しかし、美術の時間になってしまった。非常に気が重いな。そんな俺の暗い雰囲気を悟ってか、側近たちが「気楽に行こう」と励ましてくれた。




嫌な時間ほど早く訪れるものである。俺たちは美術室前にすでについてしまった。ここで躊躇っていては主として情けないと思い、俺はドアを開けた、そして中を見たと同時に閉めた。何か不可思議な光景が見えた気がしたが、俺の気のせいかもしれないので俺は側近たちに確認してみた。




「ラインハルト・アイバーン殿下とアイラ・ガルーアラ様です。気持ちはわかりますが、失礼です! すぐに開けてください!」







……。


なんだよ、その濃すぎるメンツは! 皇族と、王族だぞ! 補修クラスなんか入っていいのかよ! もう嫌だ、フラグ立ちまくりじゃないかよ!




確かに中はやばすぎるが、このままでは失礼すぎる。俺は深呼吸をして扉を開き、恒例の貴族スマイルを浮かべて、速攻で一番後ろの席に座った。何やら、ラインハルトがこちらを見てくるが気にしにないでおこう。




すると、先生らしき人が入ってきた。




あ、こいつは!! 美術の試験の時に、俺の絵を見て笑ったやつだ。顔を忘れないようにしていたから、間違いない。こんなところで再会するとは、因縁とはまさにこのことだな。






「ごきげんよう。今年は三名もの補修者がいるのですね。例年は、補修クラスがないことが多いのですが、今年は、ある意味当たり年ですね。」






うん? 喧嘩を売られているのか? 俺は寛大な心で聞き流してやるが、ここには皇族と王族がいるんだぞ?






「そして、そこのあなた!」







え? 俺? 俺は自分自身を指で指してみる。






「そうです、あなたです! 私は試験の時に、あなたの絵を見たときから、補修クラスに来ると確信しましたよ。何しろ感性が独特でしたからね。よくも自国の王族をあそこまで……。これ以上は、やめておきましょう。」






正解だ。それ以上話したら、陛下に報告するところだったぞ。俺は自分の話から話題をそらすために、オリエンテーションの話をすることにした。





「先生、私の話より、先生の自己紹介とこの授業のオリエンテーションをしていただきたいのですが。」





「ああ、これは失礼。私の名前は、オーガストと申します。担当は本来工作ですが、絵画の先生が「補修クラスなんぞ持ちたくない」と、おっしゃったので、泣く泣く私になりました。」





おい、その絵画の先生とやらも失礼だな。補修クラスのメンバーを知っているのだろうか?






「この授業は、とりあえず簡単な絵を描いていくことにします。個性を伸ばす方向で進んでいきましょう。美術は夏の文化祭時に展示することになっておりますので、そのつもりで。」






あーーーー。展示だと? 何の羞恥プレイだ? それにあと五年間もやるのか、最悪だ。加えて、個性を伸ばす方向って、「矯正が不可能だから放置します」と、言っているようなものじゃないか。






「では、今日はオリエンテーションですので、これで終わります。なお、サンドール君にはお話がありますので、残ってください。お疲れさまでした。」





また、このパターンか。でも、これはありがたいかもしれない。ラインハルトが俺と話したそうにこちらを見ているからな。先生がいい盾になってくれるだろう。




と、そんなことを考えていると、オーガスト先生がこちらに向かって歩いてきた。そんなに話したいことがあるのかな?










ーー











「サンドール君、商品化のお話は聞きましたか?」




「えぇ、陛下から聞きました。」






なるほど、工作の先生だからこの先生が商品化の担当なのかな? さぞや、リバーシに心をときめかせたことだろう。






「それならば話は早いですね。この度、「マトリョーシカ」を商品化することになりました。」














「……、はーーーーー!? なぜそっちを!!」





「いい反応ですね。しかし安心してください、冗談です。学園からの商品化の打診はリバーシの方です。これは文化祭の時に、サンドール君の作品として展示して、それから商品化という流れになりますね。マトリョーシカは私が個人的に商品化したいということですね。」






……。





「サンドール君? どうしましたか?」




「は、はあ………。少し待っていただけますか?」





まずは整理しよう。話についていけなくなったのは初めてだからな。


最初にこの先生は変人だという認識でいいな。なぜか初対面なのに冗談をぶっこみ、さらに個人的にマトリョーシカを商品化したいと言っていた。よくわからない。リバーシの話は妥当だな。しっかり、俺が考えたものとして扱ってくれるらしい。元ネタは俺ではないけどな。





とにかく、マトリョーシカは勝手にやってもらおう。あまりかかわりたくないからな。よし、これでいいだろう。










「お待たせしました。マトリョーシカは先生のお好きになさってくださって、結構です。リバーシの件は了解しました。」



「マトリョーシカのアイデア料はお支払いさせてください。私の感動の色もお付けます。」




「……わかりました。」




「ありがとうございます。それから、リバーシをつくってきたので、今から対戦してください。」




「……はい?」






「ですから、リバーシをつくってきたので、今から対戦してください。」





「言葉の意味はわかりますが、先生の行動の意味が分かりません。」






俺がそういうと、オーガスト先生は急に立ち上がった。どうやら、たいそう興奮しているらしい。



「私は素晴らしいと思ったものは、作らないと気が済まない性格でして、それで、試験のあとにつくりました。そして、このリバーシでサンドール君と遊ぶ……対戦することを心待ちにしておりました。なにせ、このリバーシはまだ商品化前です。むやみに他人と対戦すれば、アイデアを奪われてしまいますからね。」






こいつ遊ぶとか口走ったよな? まあ、それは置いておくとして、他人とむやみに対戦できない理由はわかる。むしろ全くその通りだろう。しかし、それ以前にやばい。ものすごくやばい。教会関係者とは違うベクトルでやばい。




こういう人は、構ったら終わりだ。そっとしておこう。いや、しかし、ラインハルトが話しかけてくるのも時間の問題だろう。先生と美術の時間の終わりだけ、対戦することにすれば、ラインハルトをブロックできるのではないだろうか。迷惑料として、先生には盾役になってもらおう。





「美術の授業後だけでよければお受けいたします。」



「ありがとうございます、サンドール君!」




「あのお願いがあるのですが、あと複数個リバーシを作っていただけますか? このリバーシは私が想像していたよりも完成度が高くてびっくりしました! ぜひ記念に持っておきたいのです!」





俺はどさくさにまぎれて、側近たちと遊ぶ用のリバーシを確保することにした。俺の言葉に先生は、なんとも恍惚そうな表情を浮かべた。




「な、なんと……。サンドール君の期待以上のものを私は作ったのか……。」




「えぇ、それはもう、期待の上をはるかに超しております。」




「わかりました! たくさん、作ってきましょう!」




「十セットほどで十分です。」





「もっと、いっぱい……。」




「十分です。」





俺が笑顔でそう言い切ると、先生は叱られた子犬のように項垂れながら頷いた。よし、これでみんなとも遊べるな。






「とりあえず、対戦の前に昼食といたしましょう。」


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!」



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何卒、よろしくお願いいたしします。

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