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「それで、ジルは何の部活に入るんだ?」
「俺か? 俺はこいつらと一緒に剣術部と、馬術部に入るぞ。な?」
ジルが双子にそう問いかけると、双子は同時に頷いた。二人は性格がまったく違うから双子だということを忘れがちだが、たまに双子らしいところを見せる。
「俺は強い奴と戦いたいからな。」
「俺は、稽古を兼ねることができるから選びましたね。」
発言の内容は双子と思えないほど異なっているが、剣術部と馬術部は騎士ならば入っておいて損はない部活動だ。
「お前ら、誰も剣術部に入らないのか? アースもか? 」
「一応候補には上がったけど、魔刀の使用を避けたいということで却下になったんだ。部活だと、散々聞かれそうだしな。」
「あー確かにそうだな。でも、他の剣を使えばいいんじゃないか?」
「主からもらった剣以外は、使いたくないらしい。」
俺がそういうと、ジルは少し残念そうな顔をした。何か心にひっかかあるところがあるのだろうか?
「……主思いのやつらだな。俺は他の剣も使うぞ? 」
「全然いいよ。好きに使ってくれ。」
すると、ジルは切り替えるよう表情所を和らげた。再び何か、提案をするらしい。なぜそこまで張り切っているのだろうか?
「じゃあ、馬術部はどうだ? 馬に乗るのは楽しいぞ?」
「それも一応候補には上がったが、騎士コースの授業でやるらしいからわざわざ部活ではいいかな、と思ってさ。多分馬で移動する機会はあんまりないと思うし、もし必要があったらキースかアスタに乗せてもらうよ。」
「それは、男としていいのか?」
「うん? あぁ、馬に乗せてもらう話か? まぁ、子供時代限定だろうな。授業内でマスターしたいと思ってるから大丈夫だ。」
「そうか……。じゃあ、料理部はどうだ? お前料理うまいし、俺も食べたい。」
「俺も最初は入りたいと思ったけど、却下になったな。俺が作った料理でパニックになりそうだから、という理由だ。というか、さっきからなんだよ。部活動提案大会か?」
俺がそういうと、ジルは黙ってしまった。俺がジルに話しかけようとすると、ローウェルがそっと耳打ちをしてきた。
(「殿下は多分、主と同じ部活に入りたいんですよ。コースも違いますし、こうやって会おうとしないと会えないですからね。(小声)」)
あぁ、そういうことか。確かに、俺もジルと同じ部活がいいな。楽しそうだしな。ただ、既存の部活だと俺が入ることが厳しそうだからな……。やっぱり、同好会を作るしかないか、運動系のやつ。あ、たまにボードゲームとかしたいな。今はまだ、トランプしかないけど………。ジルは入ってくれるだろうか?
「ジル、何か一緒の部活に入るか? 学園ではあまり会えないしな。」
「入る!」
即答だな。ローウェルの言っていたことが当たったようだ。さっそくだけど、同好会を作る件を話してみよう。
「わかった。だけど、既存の部活だとは入れそうなのがほとんどない。だから、同好会を作ろうかと考えていたんだ。」
「戦闘か?」
俺がジルにそういうと、戦闘狂が割って入ってきた。どうやら、剣術部よりももっと戦闘向きの部活をご所望のようだ。
「兄さん、少し黙っていて。」
俺がどうしたものかと思っていると、いつも通りオーサックが兄の手綱を握てくれた。素晴らしい弟である。
「戦闘というか、運動系の何かがいいなとは思っている。まだ、決めていない。」
「そうなのか。だけど、アースがつくるの同好会ならば楽しそうだな。決まったら、教えてくれ。必ず、入るから。」
「了解。じゃあ、今日はここまでだな。聖王国のやつらの話を聞いて疲れたし、早く風呂に入りたい。」
「わかった。じゃあ、今日は帰るな。」
ーー
今日は日の日だ。さあ、今日はボールを使って遊ぶぞ。俺は側近たちを連れて室内訓練場にやってきた。ここは、魔導士の訓練施設だから魔法の使用も大丈夫だ。
まずは、床に長方形の形で線を引きたいんだが……。床を魔刀で切ってもよろしいだろうか? 側近たちに聞くと、キースが答えてくれた。
「ここは使用が終われば元通りになる、魔導施設だ。問題ないだろう。」
「じゃあ、とりあえずそうしてみるか。大きさはそうだが横が八メートルで、縦が十六メートルだな。」
俺がそういうと、ミラルが名乗り出てくれた。俺は自分でやるつもりだったが、せっかく名乗り出てくれたのでミラルにお願いした。
ーー
すごい、まっすぐだ。騎士ってこんなこともできるんだな。俺もできるかな? おそらく繊細な剣筋をしている、ミラルだからできるんだろうな。
「流石だ、ミラル。ありがとう。次は、ローウェルの土魔法だな。土壁はできるよな?」
「少しならできますね。」
「それで十分だ。真ん中の両サイドに支柱をつくる。そうだな、高さは二メートルくらいがいいかな。半径は五センチくらいでいいかな。」
よし、少し時間はかかったが上出来だ。あとは、昨日買ってきた、漁業用の網を張る。
「じゃあ、キース反対側をもって結んでくれ、アスタはこっちな。ローウェルは、二人が支柱の頂点に届くように足場を出してやってくれ。あとは俺が氷魔法でいろいろな箇所を補強して、完成だな。」
「主、これは……。」
「このネット越しに競技を行うんだ。そして、競技線内でな。そして、何をするかというと、このボールを打ち合う。」
そう、俺がやりたい球技は、バレーボールだ。今は人数が少ないから、コートは小さめにしたが、調節しながらやっていこう。
俺はバレーボール部時代の経験を生かして、みんなにルールや技術を教えた。ルールはまだ初めだから、簡略化して伝えた。
それにしても、幼少から剣術を習っており、戦いの経験もあるから、みんな呑み込みが早い。ローウェルはもう少しかかるようだ。
「じゃあ、みんなやってみるか。二対二でやるから、一人最初は控えだな。どうする?」
「主。それなら、少し時間のかかりそうな俺が最初に休みますよ。」
「あぁ、悪いな。じゃあ、ローウェルは審判役だな。土人形を展開して、ボールが競技線から出たかどうかを判定してくれ。」
そういえば、ローウェルが土人形を使って審判をしたら、ラインズマンと主審を一人でできるな。すごい能力だ。
「じゃあ、俺とミラル、アスタとキースチームだな。俺たちサーブからだ。それじゃあ、始めよう。」
ーー
わーすごい。前世の世界とは、身体能力が比べ物にならない。それもそうか、この世界には剣と魔法があるんだからな。数回ラリーしただけで、もう感覚をつかんだらしい。このまま前世の世界に連れて行ったら、トッププレイヤーになれるな。
「ものすごく楽しいな、今までとは違った体の動きで新鮮だ。」
「そうだね。それに、点数システムがあるから緊張感があっていいよ。」
「これは、連携力とかも鍛えられそうですね、主。」
「そうですね! 人数がもう少し多いとより、楽しめそうです!」
「アスタの言うとおりだな。俺も、一チーム六人くらいを想定しているからな。そうすると、人によって役割が生まれるから、より楽しくなると思うぞ。」
バレーボールや他の球技を軸にして、剣や魔法の訓練もしていきたいな。あとは、偶に卓上で遊べるとトランプとかをはさみながらとかもよさそうだ。
よし。それじゃあ、こんな感じで同好会申請をしようか。そして、ジルたちにも紹介して、腫れて同好会の発足だ。
「よし。それじゃあ時間も時間だし、夕食をつくるに戻りますか。」




