閑話 国主コースの初日
不定期閑話シリーズです。
今回は、入学式後の国主コースクラスの様子を、ジルベルト視点でお送りいたします。
~ジルベルト視点~
俺は、ジルベルト・アーキウェル。先ほど、入学式が終わり、今はアースたちと国主コースの教室へと向かっている。
ここが、教室のようだな。俺は一番、国力の低い国の王子だ。最初にしっかり挨拶をしなければいけない。
「では、着いたようだな。じゃあ、またな。」
「はい、ジルベルト殿下。また、お会いしましょう。」
そういうと、アースたちは各自の教室へと向かった。
ここからは俺一人だ。相手は、王族・皇族だ。なめられ、考えを悟られるわけにはいかない。気を引き締めなければな。
俺は意を決して、ドアを開いた。
すると、中にいた四人の視線が俺へと集まった。だから、最後は嫌なんだよな。しかし、国力順だから仕方がない。それにしても、ものすごい緊張感だな……。
まぁ、それもそうか、他国の王族・皇族相手に、ぼろを出すわけにはいかないからな。
こういう場合は、序列が一番低い俺から挨拶をしなければならない。最初は、帝国からだな。
俺は、燃えるような赤い髪と瞳を持つ、少年の前に立って礼をした。
「お初にお目にかかります、アーキウェル王国第三王子のジルベルト・アーキウェルと申します。よろしくお願いいたします。」
俺がそういうと、貴族スマイルで少年が口を開いた。
「お初にお目にかかります、アイバーン帝国第一皇子のラインハルト・アイバーンと申します。こちらこそ、よろしくお願いします。」
典型的な返しだな。俺に興味がないのか、それともそう教育されてきたのかはわからないが、帝国の第一皇子だ。失礼があってはいけない。
「ありがとうございます、では、私は他の方々への挨拶がありますので、これにて失礼いたします。」
俺がそういうと、ラインハルト殿下は外向き用の笑顔を浮かべた後に、前を向いてしまった。
次は……。はー、聖王国か。気が重いが、アースを狙っているかもしれない連中だ。しっかり、挨拶をしておかなければな。
俺は、偉そうにふんぞり返っている男の前に立ち、礼をした。
「お初にお目にかかります、アーキウェル王国第三王子のジルベルト・アーキウェルと申します。よろしくお願いいたします。」
すると、俺の方を馬鹿にしたような顔で、見てきた。
「あぁ、お前が……。そうか、なるほどな。いかにも普通そうだな。普通にしては、「いい足」を持っているそうだな?」
こいつが、そう言った瞬間教室の空気が凍った。こいつは、馬鹿なのか? いくら相手が格下の国王子でも、その態度は一王族としてどうなんだ? それに……やはり、アースのことを知っているようだな。しかも、「いい足」だと? ふざけるな。
「何のことか、私にはわかりかねますが……。」
「……そうか、まぁいい。お前もこの後のパーティーには出るんだろ? その時に、ゆっくりと話そうじゃないか?」
そういうと、ジーマン殿下は気持ちの悪い笑みを浮かべた。何にしろ、俺は友人として、主として、アースを守らなければならないんだ。
「はい、光栄です。では、失礼いたします。」
俺は、素早くジーマン殿下の前から立ち去った。
はー、いったん、こいつのことは忘れよう。あと二名いらっしゃるんだ。次は、農業大国グレートプレア王国か。
俺は、緑髪に茶色の目を持つ少年の前に立った。
「お初にお目にかかります、アーキウェル王国第三王子のジルベルト・アーキウェルと申します。よろしくお願いいたします。」
すると、ラインハルト殿下のように貴族スマイルを浮かべて微笑んできた。よかった、こちらはまともそうな王子だ。
「お初にお目にかかります、グレートプレア王国第二王子のシリル・グレートプレアと申します。こちらこそ、よろしくお願いします。」
グレートプレア王国の第二王子? 何か引っかかるが……何だったかな? まぁ、今はいいか。
「ありがとうございます、では私はこれにて失礼いたします。」
「はい。」
そういうと、ラインハルト殿下同様に、前を向いてしまった。
よし、いよいよ最後だな。最後は、東の大陸に二つある国のうちの一つ、ガルーアラ王国か。唯一の女性だな。
俺が、彼女の前に立っても、こちらを見向きもしようとしなかった。
「お初にお目にかかります、アーキウェル王国第三王子のジルベルト・アーキウェルと申します。よろしくお願いいたします。」
俺がそういうと、興味なさげな顔をして一言、
「そう、よろしく。」
と、だけ言われた。
ま、まぁ、あいつのように絡んでこない分、こちらの方がましだな。
「ありがとうございます、ではこれにて失礼いたします。」
俺は早々に、自分の席に戻った。
しばらくすると、教室のドアが開き、一人の老齢の女性が入ってきた。
「皆様、ごきげんよう。私がこのクラスの担任を仰せつかりました、ゾイトと申します。普段は、この学園の副学園長の任を仰せつかっていますが、今年の国主コースには、五人の生徒がいらっしゃるということで、急遽私が担任をすることとなりました。どうぞ、五年間よろしくお願いいたします。」
急遽担任だと? この人は何者だろうか? 五人もの王族・皇族を相手にするということは、元王族とかなのだろうか? まぁ、調べる気はないけどな。
それからは、授業の説明や部活の説明が行われた。
部活は……剣術部は必須だな。きっと、アースも入るだろうし。アースや皆とする部活は楽しいだろうな。
あ、面白い部活を見つけたぞ。美術部か……あとでアースに勧めようか? あはははははは!
それから、今日は解散となった。
はー、それにしても気疲れするクラスだな……。五人もいると、緊張感がものすごいものな。一瞬でも気を抜くと、大変なことになりそうだ。
俺もいつか、この中のクラスメイトと、友人として話ができるようになるのだろうか?




