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「おはよう、ローウェル。」
「おはようございます、主。」
「おはよう、ミラル、アスタ。」
「おはよう。」
「おはようございます。」
ーー
そんなこんなで、俺たちは商業エリアを散策した。
娯楽施設などは、当然少なく、ほとんどが服屋やスイーツ店だった。娯楽がほとんど無い世界だからな。
「なんというか、食材買いに来る以外は、ほとんど来なさそうですね。」
「あぁ、そうだな。武器屋も行く必要ないしな。あとは、たまに防具を買いに来るくらいか?」
「そうだな。騎士コースだと、消耗が激しそうだしな。」
「そうだね。これだと、またお金が貯まるね。」
「自分は、主のためにお金を使います!」
「アスタ、将来のために少しは残しておけよ?」
「は、はい、かしこまりました。」
「じゃあ、大体見たし、ボールを買いに行くか。ローウェル、人目につかない場所を探してくれ。」
「了解。」
少しした後、
「こっちですね。」
「わかった。」
本当に優秀だな。
「大窓」
とりあえず、王都の市場に来た。どこに売っているんだろうか。
「アース様、自分が影移動で買ってきますので、ここで待っていてください。」
「あぁ、頼んだ。」
「はい!」
影移動で買いに行ったのなら、すぐに戻ってくるな。さて、このあとは何しようかな。……あー、そうだ。
「たしか、冬になると貴族は大体、王都から領地に戻るんだよな?」
「そうだな。」
「アスタが帰ってきてからも時間がありそうだし、カーサード領に行くか。どうだ、ローウェル?(笑)」
「勘弁してください。俺、泣きたくなります。」
「まさか、ローウェルもキースみたいなことをしていたとはな。人は見かけによらないとは、まさにこのことだな。な、キース?」
「俺に振るな。」
どちらも、まだ少年だからな。
「戻りました、主。」
「早っ! さすがに優秀すぎるな。」
「自分はまだ遅い方ですよ。あ、これがボールです。」
「ありがとう。とりあえず、ここにいると目立つから寮に戻るか。」
「そうだね、いつ見られているか、わからないからね。」
「そうだな。」
「大窓」
ーー
そうして、俺たちは無事に寮へと帰還した。
なるほど、これがボールか。これって、ゴムだよな……。前世で言うと、カラーボールに近いな。
「この素材って、何に使われているんだ?」
「わかりませんね。何やら、べとべとした樹液らしくて、ボールをつくるくらいにしか使えないそうです。」
ゴムがあればいろいろなものがつくれるんじゃないか? いや、でもゴムに関する知識は俺にはない。ボールで我慢しよう。
「主、これで何するんですか?」
「それは明日のお楽しみだ。今日は、ジルたちが来るから、料理をたくさん作る……。ジルたちって食べてから来るのかな?」
「王族だから、その可能性が高いね。」
「じゃあ、俺たちの分だけでいいな。じゃあ、今日は休みだし、あれをつくってみるか……。」
そう、あれとは、カレーのことである。あの日、王都の市場で買ったスパイスである。公爵家では、においがすごいことになりそうだったので遠慮していたが、ここには俺たちしかいないので、まぁいいだろう。
米がないから、スープカレーにして、後は鳥をカレー風味のソテーにしてみよう。あとは、パンだな。
ーー
「主、俺もう我慢できないです。なんですか、この匂いは!?」
「前に市場で、薬を買っただろ? あれだよ。」
「本当に料理にしたのか? しかし、うまそうな匂いだ。」
「本当だね。最初は薬が食べられるのかと思ったけど、おいしそうだね。」
「味見もしたし、俺の自信作だ。今は、六時か。ちょうどいい、時間だな。じゃあ、夕食にするか。」
「「「「待ってました!」」」」
「主、これめちゃくちゃおいしいです!」
「あぁ、俺は毎日でもイケる。」
「自分もです! さすがアース様ですね!」
それはそうだろう、天下のカレー様だ。少年の胃袋に刺さるだろう。
「ミラルはどうだ?」
「おいしいけど……私はもう少し甘い方が良いかな。」
「なるほど。次はリンゴやはちみつを使って、甘口をつくってみるよ。」
「うん、楽しみにしてる。」
コンコン
「あ、ジルだな。まだ食事中だが、待たせるのもなんだし入ってもらうか。キース。」
「あぁ。」
「おい、ものすごい匂いだな。何を食べているんだ?」
「前に市場で買った薬だよ。」
「は? いや、でもおいしそうだな。」
「俺の残りでよかったら、食べるか? オーサックとウォーザットも?」
「食べる!」
「食う。」
「お願い!」
俺が残りのカレーを出すと、三人はがっついて食べだした。
「おい、これ美味しすぎるぞ。お前ら、いつもこんな料理を食べているのか?」
「そうですね。我々は、サンドール公爵家の料理に慣れてしまって、寮の料理が口に合わなかったのですよ。そこで、アース様が作ってくださっています。私たちも、習っている途中です。」
「それはそうだろうな。この料理に慣れていたら、寮の食事なんか食べられないだろうな。なぁ、お前ら?」
「はい殿下、まさかアースにこんな、料理の才能があったなんて初めて知りましたよ。」
「俺は明日からも、食べに来るからな。」
「おい、オーサック! お前はまた、変なことを。ジルの側近なのにふらふら歩こうとするな!」
「俺はお前の料理が食べたい。」
「この脳筋……。ジル何とか……。」
俺がジルに話を振ろうとすると、ジルがジト目で見てきた。
「たまにはいいだろ? この部屋広いし。な?」
「はー……、休みの日ならいいぞ、後片づけも手伝えよ。」
「わかった! ありがとう!」
ジルもまだまだ少年だな。
ーー
片づけを終えて、俺は緑茶を入れた。
「じゃあ、食べ終わったし情報共有と行こうか。」
俺は側近たちからの報告をジルに伝えた。
「なるほどな。お前を待ち伏せしていたのか、あそこの第一王子がな。第一王子も問題あるが、第二王子はもっと問題があるぞ。」
「確か、パーティーで絡まれたんだよな?」
「あぁ、お前を側近にしたいと言っていたぞ。」
「不愉快だ。」
「不愉快だ。」
「不愉快だね。」
「不快ですね。」
「不快です。」
「はははははっ! お前ら本当に仲いいな。言葉のチョイスまでそっくりじゃないか。」
「何笑ってるんだよ! お前は不愉快じゃないのか?」
俺がそういうと、ジルの顔から表情が消えた。
「は? 不愉快極まりなかったに決まっているだろう? 危なく刀を抜くとこだった。」
うわ、これはマジ切れだな。ジルは怒ると、無表情になり、声も低くなる。美形の無表情は怖いから、怒らせないようにしたい。
「悪かった。で、何って返したんだ?」
「すでに俺の側近だから無理だろうと言っておいた。そしたらあいつは、「本人が俺様の側近になりたいと言ったら、いいのだな?」と、言ってきたぞ。」
は? 言っていることもやばいが、一人称が「俺様」なのか? 絶対碌な奴じゃないな。どこぞのガキ大将かな?
「まじで、不愉快だな。ガキ大将かよ。」
「あ? 何て?」
「悪い、何でもない。それじゃあ、俺は第二王子に側近に誘われるわけだな。そして、第一王子には研究会への勧誘か。本当に面倒くさい。まぁ、勧誘の件は部活に入れば、何とかなりそうだがな。」
「なんの部活に入るんだ?」
「うん? 薬草研究会だよ。回復役は、俺しかいないしな。あ、ジルもいるか。」
「そうなのか。美術部には入らないのか?(笑)」
ん? 喧嘩なら買うぞ? しかも、全員笑ってるな?
「ジル、ジルの肖像画を描いて学園内で作品として発表してやろうか? 確か、文化祭で展示するんだったよな? それに、今笑ったやつらもな。そうだな、作品名は「愉快な俺の仲間たち」でどうだ?」
すると、全員が一瞬にして笑うのをやめて、
「「「「「「「……すみませんでした。」」」」」」」
と、謝ってきた。
「わかれば、よろしい。」




