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「あ、そうだ。俺さ、せっかくこんなでかい風呂があるから、朝風呂にも入りたいんだよね。だから、朝は風呂係と、朝食係に分かれようぜ。」
「朝も入るのかよ。」
「キースも入りたいだろ?」
俺がそういうと、キースはそっぽを向いてしまった。まあ今まで朝練のあとに、シャワーを浴びていたから、その延長線だと思えば特に変なことではないだろう。
「ミラル譲と主は朝食係決定で、俺が風呂係決定ですね。キースとアスタの分担ですけど……。」
「料理が得意そうな方を朝食係に回して、余った方を風呂係に回すか。さっきの二人を見た感じだと、アスタが朝食係でキースが風呂係だな。二人ともいいか?」
俺がそういうと、二人とも頷いた。こうして役割分担が決まったところで、もう夜も遅いということでふろに入って寝ることになった。
ーー
朝になった。俺は結構、早起きなのだ。
俺の部屋では、ローウェルが眠ることになった。ローウェルは俺の部屋に常駐することになったから、都合がいいのだ。
「おはよう、ローウェル。朝だぞ。」
「……お、おはようございます、主……。俺、主の側仕えなのに、主より先に起きたことないです……。」
「俺は、(精神年齢が三十歳を超えているから)早起きなんだよ。気にするな。さぁ、準備しよう。」
まだ、眠そうだな(笑)。今までも一緒に生活していたから気づいてはいたが、完璧に見えるローウェルは朝に弱いのだ。
「じゃあ、アスタ、朝食の準備をしようか。キース、ローウェルのこと頼むな。」
俺はまだ眠そうなローウェルをキースに任せて、朝ごはんの準備をすることにした。幼馴染のキースは、ローウェルの取り扱いに慣れているのだ。
ーー
まずは、寝かせておいた生地をオーブンで焼いて、それから卵があるからスクランブルエッグをつくるか。それから、玉ねぎと、氷魔法でフリーズドライをしたコンソメスープがあるから、オニオンスープをつくろう。果物は生でいいか。それにしても、小腹がすいたとき様に持ってきたから、食料が少ないな。今日は早く終わる予定ですから、買い出しに行くとしよう。
コンコン
すると、ドアがノックされた。こんな朝っぱらにお客さんなわけはなく、自室に戻っていたミラルだろう。
俺はアスタに頼んで、ドアを開けてもらた。ドアの外に立っていたのは、案の定ミラルだった。
「おはよう、アース。」
「おはよう、元気そうで何よりだ。じゃあ、さっそく朝食をつくっていこう。俺がスクランブルエッグとパンを焼くから、アスタは玉ねぎを切って、お湯でコンソメを溶かしてくれ。ミラルは、果物を切って、終わったら俺の補助を頼む。」
俺は二人に指示を出し、さっそく朝食の準備に取り掛かった。さあ、久しぶりの自作の朝食づくりの開始だ。
ーー
よし完成だ。思ったよりも、時間がかかってしまったな。すると、キースとローウェルが台所へとやってきた。ちょうどよく、風呂の用意も終わったようだ。
「風呂の用意が終わったぞ。」
「いい匂いですね、主。」
「お疲れさま。冷めないうちに、先に食べようか。」
それから俺たちは、朝食を食べ始めた。
はー、それにしても、主食がパンだから、そのほかの料理も洋風になっちゃうんだよな……。米、みそ汁、しょうゆ……、和食が食べたい。ということで、早く農業大国グレートプレアに行きたいな。そのためには、グレートプレアの学生とのコネクション作りをしなくてはならない。それに、上位の貴族でないと入国許可が下りない可能性がある……。厄介ごとに巻き込まれるのは承知だが、食は生活の基本だ。妥協はしないでおこう。
「アース、どうした? 悩み事か?」
「いいや、大丈夫だ。それよりも、みんな食べ終わったな。それじゃあ、俺は朝風呂に行くな。希望者は来てもいいぞ。」
俺がそういうと、男子組が全員名乗り出た。まったく、全員風呂好きだな。時間もまだあるし、ゆっくりしよう。
「私は片づけをした後、いったん部屋に戻って準備してくるよ。」
「悪いな、一人で片付けさせてしまって。」
俺がそう謝ると、「気にしないで」といい、ミラルは片づけを始めた。夜は俺らが片づけをしよう。
すると、俺たちが風呂に行こうとしていると、キースから爆弾発言があった。
「あー、ミラルも風呂に入るか?」
は……?
キース、お前。突然、なんてセクハラ発言してるんだ? いや、しかしキースは冗談でも女性にこんな発言しないだろうしな。あーそうか。言葉が足りないんだな。
俺は一瞬にして、この状況を理解した。
「キース、お前は悪くないんだが、その……言葉を省略しすぎだ。「キースは、「俺たちのあとに、ミラルも風呂に入るか?」と、聞きたかったんだろ?」
「そう言ったつもりだが?」
キースがそう答えると、ローウェルとアスタが大きなため息をついた。
「はーー? まじかよ、俺はてっきり……。」
「自分も流石にそれはないな、と思いました。」
「そうだぞ、キース。あれを言葉通りに解釈したら、「俺たちと一緒に、ミラルも風呂に入るか?」だぞ。」
俺がそういうと、キースは顔を真っ赤にしながら、首を振り出した。キースでも、こんなに照れることがあるんだな。新しい発見である。
「ち、違う! そんなはずがないだろ! 俺は、ただミラルも朝風呂に入りたいかと思って……。」
「俺たちだからわかるが、これからは気をつけろよな。今までは、あまり同年代のご令嬢とかかわる機会がなかったからよかったが、これからは女子学生がたくさんいるんだ。気をつけろよ。」
俺がそういうと、幼馴染のローウェルも大きくうなずいた。ローウェルが一番、キースのことを理解しているだろう。
「そうだぞ、キース。相手がミラル譲だから、冷めた目で見られるだけで済んでいるが、他のご令嬢だと問題になるぞ。ただでさえ、黒髪黒目で目を引くのに、顔も整っているせいで、厄介ごとに巻き込まれる恐れがある。」
「そうですね。さらに、剣術も優れているので、キースは注目を集めるでしょうね。加えて、空間属性持ちのアース様の側近ですから、それも相まって、注目されるのも時間の問題でしょう。」
俺たちの言葉を受けて、キースは項垂れてしまった。確かに、皆の言う通りではあるが注目を集めるのは何もキースだけではないと思う。
「あと、注目を集めるという点では、俺やキースだけではなく、他の三人も同様だからな。顔良し、技量もよし、地位もよし、だからな。全員気をつけろよ。」
俺たちはそれから、それぞれがやるべきことを行った。
入学式も、学園の始業時間もどちらも九時からだ。俺たちは五時半に起きて、朝食づくり、そして七時くらいに食べ終わる。それから、朝風呂という流れだ。これはいい朝活だな。非常に健康的だ。そのうち、訓練の時間なども取り入れようか。
ーー
「じゃあ、ロビーに行こうか。それに今日は、側近としての初任務だからな。」
俺たちは、学園へと向かう転移陣に乗るために、ロビーへと向かった。
昨日兄上たちは、学園に向かう転移陣の場所は行けばわかると言っていたが……。あーなるほどな。
そこには、アーキウェル王国の重役たちの会話をするジルの姿があった。朝から国のお偉いさんと歓談なんて、すごいな。国の重役たちは、入学式に出席する来賓なのだろう。なお、在校生は出席できないようだ。
すると、俺たちに気づいたジルが俺たちに手を振った。
「少し、失礼。おーい、アース。こっちだ!」
「ジル、おはよう。こっちで会うのは初めてだな。」
「そうだな。今日は、初任務頼むな。」
俺の初任務とは、ジルの護衛のことである。側近としての初任務だ。入学式という、式典だから、俺はジルの側近として付き従う必要があるのだ。
初任務か、ワクワクするな。




