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学園への転移の日の前日である。今日は、俺の主となる方への挨拶にやってきたところだ。
「よく来たな、アース。」
「はい、ジルベルト殿下。」
そう、俺は主にジルを選んだのだ。なんというか、いまさらというか、わかっていたというか、とりあえずは俺はジルの側近になるのである。
「ジルベルト殿下に、お尋ねしたいことがあります。よろしいでしょうか?」
俺はジルが頷いたことを確認して、口を開いた。
「私は、ジルベルト殿下にとって、側近として必要でしょうか?」
「そうだな。側近としても、友人としても必要だな。」
どちらもとは、欲張りな答えだな。しかし、ジルらしい答えだ。はなから、側近か友人かのどちらかしか道はないと思っていた俺とは、大違いである。
俺はジルの前に跪き、そして二本の魔刀を取り出した。
『凪げ 泡沫』
『咲け 白薔薇姫』
そして二本の魔刀を、ジルベルト殿下に差し出した。俺の側近たちも、俺の後ろで同じように跪いた。
「私アース・サンドールは、ジルベルト・アーキウェル様への忠誠をここに誓います。どうかあなたに、この魔刀を受け取っていただきたい。」
ジルベルト殿下が忠誠の儀の作法通り、差し出された魔刀を俺の首元にあてる。
「私、ジルベルト・アーキウェルはアース・サンドール、あなたの忠誠を確と受け取る。これからもよろしく頼む、アース。」
「はい、もちろんです。」
よし、これで忠誠の儀はおわりだな。陛下から出されていた入学前までの課題は、これですべてクリアしたことになる。
「もう、いつも通りのしゃべり方でいいぞ。」
いつも通りのしゃべり方って、ため口のことだよな? しかしこれからは側近になるのだから、他人に聞かれたらまずいのではないだろうか?
「いやでも、側近となったので……。」
「友人としても、必要だといっただろう? だから、「時と場合に」よって変えてくれればいい。」
俺が言ったことを、うまく使われたようだ。ここまで言われたら、断る理由もないな。俺は肩をすくめて頷いた。
「よし。それから、お前は常に俺に付き従わなくていいことにする。こんな大人数で毎回、学園を移動するわけにはいかないからな。必要な時に、付き従ってくれればいい。それに、お前は自由行動させておいた方が面白そうだ。」
俺は野生に放たれる稚魚かなにかなのだろうか? まあ自由に行動できるという点には、非常に魅力を感じるけどな。
「なるほど。お忍びを好んで、自由に行動しているジルに言われると説得力があるな。」
「……うるさい。」
「はははははっ! それより、ジル。まだ、続きがあるんだ。さっき差し出したうちの一本の魔刀を、受け取ってほしい。これから何があるかわからないからな。」
デーブンや司教のように、俺たちを狙う勢力がいつ現れてもおかしくはない。加えて、学園に入学すれば、多くの人間とか合わることになり、危険も増えるであろう。
「……わかった。その前にこの魔刀について説明してくれるか?」
「わかった。ただ、人払いを。」
俺の言葉を受けて、ジルは人払いをしてくれた。それから俺は、前に側近たちに話した内容をジルだけに伝えた。内通者がどこに潜んでいるかわからないからな。
「あとはジルが信頼できる、と判断した者に話してくれ。」
「わかった。」
「じゃあ、魔刀の能力付与に移ろう。ジルは三属性持ちだから、俺みたいに、相手によって変えながら使うか? 」
「そうだな。だけど今のところは、光属性だけでいい。」
なぜ光属性だけでいいのだろうか? 属性は複数あった方が、相手に有利に立ち回れると思うのだけど……。
俺が不思議に思っていることが分かったのか、ジルが理由を話してくれた。
「アースが光属性での攻撃を必要としたときに、俺が攻撃できるようにだな。」
な、なるほどそういうことか。俺の相性補完をしてくれるということだな。俺は光魔法を使えないから、光りを必要としたときにジルがいてくれれば非常に助かる。
「あと、刀の名前はアースに決めてもらいたい。なかなか、センスがいいしな。」
「わかった。じゃあ、この魔刀でどういう風に戦いたいか強くイメージして、言葉に出しながら光の魔力を流してくれ。」
俺はジルに魔刀を手渡した。ジルは受け取ってからしばらく魔刀の感触を確かめた後、魔力を流し始めた。
「俺のイメージか……。仲間全員を照らし、引っ張っていけるようなのがいい。そして、俺は前に出て戦うことよりは、騎士たちの後方で戦うことの方が多いから、遠距離攻撃ができるものがいい。」
仲間全員を照らし、引っ張るか……全体バフとかがいいかな、光りだから、あの呪属性の逆で、身体能力や魔力の底上げができるものがいいな。リーダーっぽいし。それから、遠距離攻撃が可能か……。弓だと少し趣旨が変わるよな、剣術習った意味がなくなるし……。だとしたら、「伸びろ、如意棒」みたいな感じで、刀が伸縮自在にできるようにするか。
よし、こんなイメージでいいかな。
名はそうだな……照らしたいって言ったから「夜明け」がいいかな、唯の夜明けじゃなくて、キラキラ光る……黄金がいいかな。名は、「黄金の夜明け」にしよう。呼音は、みんなを引っ張りたいって言っていたから、「導け」がいいかな。能力名は、全体バフの方を【黄金の威】にして、伸縮自在に攻撃する方を【黄金の遊】にしよう。
「名は『黄金の夜明け』、呼音は『導け』、能力は全体バフの能力が【黄金の威】、伸縮自在に攻撃する能力が【黄金の遊】だ。さぁ、呼んでくれ。」
『導け 黄金の夜明け』
ジルがそう詠唱すると、光り輝く刀となった。
「無色透明の魔刀に戻すには、『解』と詠唱してくれ。そうすると、属性付与が消えるから。」
『解』
ジルがそう詠唱すると、魔刀が無色に戻った。よし、成功のようだな。
「アース本当にありがとう。大切にする。」
「あぁ、よろしく頼むな。」
ーー
いよいよ今日は、学園へ出発の日である。
「アース、頑張るのだぞ。」
「アース、元気にね。長期休みには帰ってきてね。」
「はい、父上、母上もお元気で。」
こうして、家族の別れの時間が終わるといよいよ転移陣に乗って移動する時間が来た。そして、兄上たちが順に転移陣から姿を消した。
「では父上、母上、行ってまいります。」
「気を付けて。」
「元気でね。」
さぁ、いよいよ学園生活だ! どんな生活が待っているか楽しみだな! 今までは、同年代としか関わりがなかったが、これからは先輩や後輩とも関わりが出てくるのか。でも大丈夫だ、俺は部活動や会社で上下関係は経験している。
第五章 入学編
「うん? 何やら、やけに王族・皇族が多いな。」
「お前、あの時の……。」
「くそっ! 待ち伏せしやがって、お前ら窓で逃げるぞ!」
「この学園部活があるのか!! 最高だな!!」
「寮の料理じゃ、生きていけないよ。」
「このクズが、お前もう黙れ!!」
「撤回しろ。」
いよいよ、筆者が書きたかった学園編です。是非、お楽しみに!!




