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「それでは今から、工作の試験を始めます。問題は用紙に書いてありますので、配られた人から始めてください。材料と用紙は前に置いておきますので、各自持っていってください。」
さ、問題は何かな? 俺は一度深呼吸をしてから、問題用紙に目を通した。
『次のうちから、一つ選んで解答しなさい。』
なるほど選択制か。前情報によると、工作かアイデア提案のどちらかが出されると聞いていたが……。選択制なら、俺にも可能性があるぞ。
『問一: あなたの屋敷に、成り上がりで勢いのある貴族を招くことになりました。この状況であなたが身につけるにふさわしい、自作のアクセサリーを制作しなさい。』
問題の癖が半端ない。設定の意味が分からないし、貴族が着用するアクセサリーをつくれと言っているのか。これは、論外だな。次を見よう。
『問二: トランプのように、各国でも親しまれる玩具のアイデアを提案しなさい。』
これも難しいな。トランプレベルで浸透する遊びか……。だけど、これは来たな。なぜなら、前世チートがあるからだ。
とりあえず、前のほうに解答用紙を取りに行こうか。
……は? ほとんどの人が、アクセサリー作りをしているのか? あんな意味の分からない問題に取り組んでいるとは……。うーんでも確かに、この世界の人だと、トランプレベルに親しまれる玩具を一から考えるのは難しいか。なくなく、アクセサリーを選んだって感じかな。
俺が提案するのはリバーシだな。この世界にないようだし、俺は、異世界小説を読んでいるときの気分転換として、スマホアプリでよくリバーシを行っていた。
まずは、八×八の盤と高さがほとんどない円柱を、片面を白く、そしてもう片面を黒で塗りつぶして準備する。そして、ルールは……中央の四マスに黒と白の石を二個ずつ置いて、スタートする。先手が黒で、後手が白。交互に置いて行って、色を挟んだら裏返して……。より多くの色を獲得した方が勝ちと……。覚えている限りのルールは書いたぞ。あと、少し時間があるな。一つだけとは書いてないし、念のためにもう一つ何か書こう。そうだな、マトリョーシカでも書いておくか。
ーー
「時間です。試験官が回収に参りますので、そのままで、お待ちください。この後は、希望のコースに分かれての実技試験となります。」
おい、またお前か。さっき、俺の絵を見て笑った試験官が、俺の解答用紙を再び凝視してくる。
「あの、どうかいたしましたか?」
「い、いえ……なんでもございません。」
何だろう、あの人は? まぁ、次で最後の試験だ。魔導士コースを受ける知り合いは、いない。ボッチだが、頑張ろう。
「回収が終わりましたので、最終試験を始めたいと思います。希望のコースの名前が呼ばれたら、係員の指示に従って移動してください。では最初に騎士コースの方、移動をお願いします。」
ーー
「次に魔導士コースの方、移動をお願いします。」
よし、俺の番だな。最終試験だし、頑張ろう。それにしても、魔導士コース希望の受験生は本当に少ないよな。魔導士は、魔力量などの生まれ持ったセンスに左右されるから、希望者が少ない傾向にある。
ーー
「それでは、魔導士コースの試験を始めたいと思います。試験内容は、魔法実演及び試験官との対人戦です。魔法実演は自分の持つ最大威力の魔法を的に放ってください。対人戦は、武器の使用及び、身体強化魔法を禁止いたします。そして試験官のハンデとして、攻撃魔法は初級魔法しか使いませんのでご安心を。それでは、名前を呼ばれた方から、順にこちらに来てください。」
なるほど。武器の使用及び、身体強化魔法を禁止にしたのは、騎士コースとの差別化のためか。これだと、魔刀は使えないな。まあ元々、こんな公衆の面前で魔刀を使う気はないけどな。
そして、初級魔法ができていれば合格ラインだという話だったから、試験官側も初級魔法しか使わないわけだ。
俺はどうしたものかな。初級魔法だけ使う……。いや、俺は満点を狙っているんだ。上級魔法を使うべきだろう。試験官も、自分持つ最大威力の魔法と言っていたしな。ここは、試験官の言っていたことに従おう。
身分順だと俺が、一番最初なはずだが……。この試験はランダムのようだな。さて、いつになるかな。
ーー
「では、最後にアース・サンドール様、お願いいたします。」
結局、最後だった。俺は試験管の指示に従って、的がある正面へと移動した。結構距離があるんだな。魔法のコントロールとかを見るためかな?
「まずは、あの的に向かって最大威力の魔法を放ってください。」
「最大威力ですね、わかりました。」
俺は笑顔で最大威力という単語を強調し、確認の意味を込めて試験官に貴族スマイルを送った。試験官は若干ひきつった笑みを浮かべていたが、「最大威力でお願いします」と言ってくれた。
俺は深呼吸をし、集中した。
『氷の女王に希う、我に御身の御力の一端を授け給え、 願わくはその御力で我が願いを叶え給え、白銀世界』
すると、会場一帯が銀世界と化した。見ると、試験官たちは、茫然としているようだった。
「あ、あの……、もうよろしいですか?」
「え……? は、はい。魔法実演は終了いたします……。」
「ありがとうございました。次は、対人戦ですね。よろしくお願いいたします。」
すると、試験官たちが引きつった笑みを浮かべた。俺のことを化け物かなにかだと思っているのだろうか?
「は、はぁ……。あなたと対戦するのですね……。」
「どういう意味でしょうか?」
「い、いえ……何でもありません。では、始めましょう。」
ーー
「先攻はお譲りいたします。」
「ありがとうございます。では、参ります。」
これも全力で勝ちにいくべきだろう。まずは様子見で……。
『氷柱雨』
『炎壁』
子の試験官は、火属性もちか。それなら、火属性に相性のいい水属性で攻めるとしますか。
『水槍』
『水壁』
なるほど、流石はオールテット学園の試験官だ。少なくとも、二属性を持っているらしい。
さて、どうやって攻めるか。
「今度はこちらから、参ります。」
『火弾』
『小窓』
火弾は火の初級魔法だ。小窓でも十分に対処できる。
「これは、空間属性! もしやあなたが……。」
「話している、暇はないですよ。」
俺はそう言いながら、小窓の出口を試験官の背後につなげた。
「な、空間から私の放った火弾が……。
『水壁』
ここは、拘束魔法で動きを止めて、終わりにしようか。
『拘束しろ 水牢』
試験官を、大きな水球が覆った。
『す、水(弾)』
俺は試験管の詠唱が終わる前に、窓で攻撃をたたき込むことにした。
『氷柱雨』
『大窓』
俺が大窓を開き、氷柱雨で水牢内にいる試験官をこうげきを放った瞬間、
「それまで。」
別の試験官からの、静止の合図が聞こえた。このままでは、攻撃が当たってしまう。
『氷壁』
すんでのところで、大窓を氷壁でふさいだ。危なかった、もう少し声がかかるのが遅かったら、止められなかったな。
「あなたの実力は十分にわかりました、これ以上は続ける必要はないでしょう。」
立会人の試験官から、このように言われた。
「わかりました。試験を行っていただき、ありがとうございました。」
よし、これで全日程が終了だな。あとは結果を待つのみか……。みんなは、どんな試験を受けているのだろう……?
ーー
試験後、俺の屋敷でジルたちと試験の反省会を行っている。
「みんな、お疲れさま。試験どうだった? 俺は、各コースの試験が気になるな。」
俺は早速、他のコースの試験内容を聞いてみた。騎士コースはなんとなく想像できるが、他のコースは想像もつかないな。
最初にこたえてくれたのは、ジルだった。
「国主コースと領主コースは、グループディスカッションだった。政策や経済に関する問題点や立案などを行ったな。」
うわー、面倒くさそう。就活じゃん。就活の人物試験は辛かったな……。人に見られながら話し合いをするって、非常に居心地が悪かった。
「シュウカツってなんだ?」
まずい、俺のつぶやきが聞こえていたようだ。ここはうまく、ごまかすとしようか。
「新しいパンの名前だ。」
「おい、そのくだり前もやっただろ! もう騙されんぞ!」
「……。それよりも、騎士コースはどんな感じだった?」
俺は笑顔でジルを見つめてから、騎士コースへと話を振った。こういう時は、笑顔に限るな。
「試験官との対人戦だったな。本気で来いと言っていたから、本気でいった。」
「私も。」
「自分もです。」
やはり、魔導士コースと同じような試験内容だったんだな。本気で行ったということは、キ-スたちの実力なら問題なく合格ラインに達していそうだ。
「なるほど、ありがとう。次に、文官コースはどんな感じだった?」
「そうですね。膨大な情報の中から必要な情報を抜き出し、的確に伝達するみたいな感じでしたね。なぁ、サイニード?」
「はい。いつもやっていることと、同じような感じでしたね。」
文官らしい試験だな。俺には無理そうな試験内容だ。それよりも、やはり同じコースの受験者がいると、苦労などが分かち合えるから羨ましいな。俺も魔導士コースの友人が、切実に欲しい。
俺がそんなことを考えていると、パンの話を笑顔で流されてジルが、少し不貞腐れながら質問してきた。
「アースはどうだったんだ?」
「ああ、魔導士コースは、魔法実演と対人戦だった。氷の上級魔法を放って、試験官を水牢にとじ込めてから、氷柱雨を放ったら終わったな。」
……。
俺がそういうと、皆が沈黙してしまった。




