10
いよいよ、再来週には試験だな。今一度試験内容を確認しよう。
一日目は座学。教科は算術、ハルート語、地理、アーキウェル国史、世界史、魔法基礎、ナハト教だ。これはみんな大丈夫だろう。二日目は実技。ここからは受けるコースによって、試験が異なる。まずは全体共通の音楽と、美術。俺は護衛騎士科魔導士コースを受けるから、魔法実技がある。キースとミラルは護衛騎士科騎士コースを受けるから、剣技の試験がある。ローウェルは侍従科文官コースを受けるから情報処理の試験を受ける。
ただ、アスタだけがまだどのコースを受験するのかを決めていない。そろそろ決めなければいえないので、俺はアスタの考えを聞いてみた。
「はい、そうですね。私は情報収集が主な役割ですが、剣術の訓練も行っています。ただ、それらの根幹にあるのは闇魔法です。ですので、選び切れてはいませんね……。」
アスタはまだ、決めきれていなかったか。アスタは騎士と情報収集を兼任しているから、どちらにするか難しいところだよな。
俺がどうアドバイスしようか考えていると、キースから質問があった。
「アースは、なんで騎士コースを受けないんだ?」
確かに俺は魔法の訓練だけではなく、騎士の訓練も行っている。それなのに、なぜ魔導士コースを選んだのか、側近たちは疑問に思っていたのだろう。もちろん剣術も好きだが、俺の魔刀の能力は、ほとんど魔法みたいなものだ。剣術より、魔法戦の方が性に合っていると今までの経験から感じている。そういう理由で、魔導士コースを選んだのだ。それに後で、騎士コースをとることも可能だしな。
オールテット学園には主コースと副コースが設けられている。主コースは入学試験のときに選択したコースで、副コースは二学年以上で他のコースを選択することができる。
俺は、主コースを魔導士コース、そして副コースを騎士コースにしようと思っている。余裕があれば、侍従コースものぞいてみたい。
ただ、統治科国主コース、統治科領主コースは、王族・皇族、そして各領地の後継者(主に長男や、長女)しか選択することができないという制約がある。
俺は魔導士コースを選んだ理由をかいつまんで、皆に話した。その過程で、俺はアスタへのアドバイスを思いついた。
「アスタの闇魔法はどれも有用だが、まだ従魔もいなから、魔法戦ができるわけじゃない。情報収集も収集能力は群を抜いているが、情報の解析や分析、伝達はローウェルが担っている。ということで、騎士コースに行くのはどうだ? 成長次第で、副コースを魔導士コースにするか文官コースにするかを選べばいい。」
俺がそういうと、アスタは少し考えた後に頷いた。アスタの進路が決まって、何よりである。
それにしても、文官と側仕えをローウェルに担わせてしまっている。優秀だから今まで何の不都合もなかったけど、これから学園に入学すればそうはいかないかもしれない。ローウェルは、一人で大丈夫だろうか?
俺がローウェルに確認してみると、ローウェルはふっと笑って答えた。
「優秀なのは主ですよ。ほとんどのことを、自分一人でこなすじゃないですか。それに情報収集もアスタがいますし、負担は半減できています。側仕えの仕事も、片手間にできます。」
なるほど。うん? 今気になる単語が出てきたようだが、気のせいだろうか? 俺が確かめようとすると、キースがローウェルに詰め寄った。
「ローウェル、アースの側仕えを片手間にやるとはどういうことだ?」
「い、いや、その……。今のは、言葉のあやで……。心を込めて、毎回のお世話をしてますよ?」
そう、それだ。ローウェルはどうやら、俺の世話を片手間にやっているらしい。ローウェルの仕事に不満を感じたことがないが、今まで以上の働きができるらしい。
「まぁ、そんなに責めてやるな、キース。十分やってくれてると思うぞ、ローウェルは。まま、片手間で俺の世話をしているとは思っていなかったけどな?」
「……すみませんでした。」
ーー
試験の一週間前。
俺は今日、側近たちを連れて魔女の森へ行くことにした。側近たちに話すと、「なぜ、いまあの森へ行くのだ?」と、不満の声が上がったが、どうしても今でなければならない用事があるのだ。
俺はあの戦いで空間属性が使えない戦い、そして俺が魔刀の使用ができない戦いを経験した。ただ空間属性が使えない戦いは、これから想定練習をしていく必要があるだろう。
しかし、魔刀をいちいち貸し借りを行っていては、命取りになる。だから、側近のみんなにも渡そうと思う。これから先、あの時よりも厳しい戦いが待っているかもしれないからな。いつまでも、「魔刀のことが広まったら面倒だ」などと、考えてはいられないだろう。そして唯渡すのも照れ臭かったが、何かお礼を考えていたから、お礼として皆に渡すことにした。
ーー
俺たちは大窓により、魔女の森へとやってきた。危険はないだろうが一応の確認のために、ローウェルとアスタに周囲の様子を探ってもらった。結果は、周囲には人の姿はないとのことだった。
俺が話始めようとすると、キースがため息をついた。
「そこまで、人に聞かれたくない話なのか?」
「まぁな。だけど安心してくれ、悪い話じゃない。まずは、これを見てほしい。」
『取出 魔刀四本』
俺がそう詠唱すると、アイテムボックスから四本の魔刀が現れた。俺がスペアとしてひそかにため込んでいた、魔刀たちである。
「こ、これは……。アース、魔刀は偶然できたものではないのか?」
俺が魔刀を取り出すと、側近たちが口々に驚きの声や疑問の声を上げた。これは、すべてを包み隠さずに話した方がよさそうだな。
俺は魔力を大幅に使えば、一日に一本ずつ魔刀を生成できることや、これを周囲に広めると厄介ごとになること、魔法剣の価値がダダ下がりすること等、今まで考えてきたことをすべて話した。
「た、確かにこれが広まれば、国同士のバランスが、一気に崩れる恐れもあるな……。」
「でもいいんですか、主? 俺らが全員これをもっていたら、何個も作れることがばれるんじゃないですか?」
確かにローウェルのいうとおりだ。だから、数には限りがあることにしようと思う。これらを合わせて十本くらいがいいかな。まあ、数はできるだけ伏せて、数に限りがあることだけを強調しよう。俺は一応公爵家だから、そこら辺の貴族には笑顔を送っておけばいいから、王族・皇族相手には気を付けようか。
俺は一応の対策をみんなに話した。それに対して皆は、一応納得してくれたようだた。それから……。
「それに、お前らはあの戦いで何を感じた? 俺は……力不足を痛感した、それに空間属性に頼りきりだ、ともな。だから、空間属性に頼らない、この力を最大限使うべきだと考えた。みんなはどうだ?」
俺がそういうと、側近たちもあの戦いでそれぞれ思うことがあったのか、苦い顔をしながらも頷いてくれた。
「ありがとう。じゃあ一人ずつ渡していくな。そして、自分で名や呼音、能力を決めるのかそれとも俺が決めるか、後は今すぐか、少し考えてから決めるかを各自考えてほしい。では、最初に戦闘タイプではないローウェルからだ。他の三人は、今言ったことを考えていてくれ。」
俺はそういうと、ローウェルをつれてみんなとは少し離れたところまでやってきた。個人ごとのほうが、何かと都合がいいのではないかと考えたからだ。
「ローウェルは魔刀で戦う場面はそうないと思うから、俺から提案があるがどうする? それとも、自分で決めるか?」
「主の提案に従います。」
即決だな。本当にそれでもいいのだろうか? これから使うものなのだから、自分で名前を決めた方が良いのではないだろうか?
俺が少しためらっていることが分かったのか、ローウェルは笑顔でうなずいた。
「俺が選んだ主ですから。」
……。そこまで言われたら、俺の考えた魔刀をぜひ使ってほしい。
『取出 魔短刀』
俺はローウェル様にと考えていた、魔短刀を取り出した。俺がいつも使っている魔刀の短いバージョンだな。戦闘タイプではないローウェルには、長さは必要ないと考えたからだ。
「短刀ですか……。」
「あぁ、これには俺の空間属性の力を込めてある。名は『窓遊』、呼音は『開け』、能力は【矢庭の空】だ。この能力は、ローウェルまたは土人形が行ったことのある場所へ、小窓を出せるというものだ。使い方は……いいな?」
俺がそういうと、ローウェルは不敵に笑って見せた。
「えぇ、俺が一番欲しい能力でした。流石です、主。」
気に入ってもらえて様でよかった。それじゃあ、ローウェルの魔力を込めて魔力を固定化しようか。俺のような複数属性と違って、単属性の者は、属性を換えながら、魔刀を使う必要がない。そして、一つの呼音と名で固定化した方が、魔力の消費も抑えられる。
「それじゃあ、今から固定化するな。魔短刀を握ってさっき言ったイメージを強く思い浮かべながら、魔力を流してくれ。」
俺がそういうと、ローウェルは魔短刀をにぎって魔力を流し始めた。
数分後。
よし、充分量の魔力が流れているな。そろそろ、魔力量も充分に流れ込んだだろう。俺はローウェルにアイコンタクトを送り、名と呼音を呼ぶように促した。
『開け 矢庭の空』
ローウェルがそういうと、魔短刀は光だし、小さな空間が開いた。どうやら、しっかりと成功したらしい。
「よし、成功だな。あとは自分で、試してみてくれ。」
「ありがとうございます、主。」
思っていた通りに成功したようでよかった。この調子で、他の側近たちにも魔刀を渡していきたい。次は、キースがいいかな。
俺はローウェルに、キースを呼んでくるように頼んだ。




