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「な、何を馬鹿なことを! 証拠はあるのですか?」と、デーブンが吠えた。
だから、そんなにわかりやすい反応をするなよ。お前も一応、貴族のはしくれだろ?
「後ろめたいことがある人に限って、そのように、証拠がなんだと騒ぐのですよね。まったく、わかりやすくて助かります。」
「この、黙って聞いてれば餓鬼の分際で……!」
「あなたは、尻尾を掴ませないようにすることがうまいそうですね。あぁ確か、豚のしっぽは短かったですね?」
「このクソ餓鬼が……! 証拠はあるのかと聞いているんだ! 証拠もないのにべらべらと……」と、デーブンの怒りがピークに達したところで、俺は本題を切り出した。
「なんの証拠もなく、こうしてあなたと対面するはずがないでしょう?」
俺がそう言うと、デーブンは一瞬ひるんだが、すぐに余裕そうな笑みを浮かべた。
「私には、優秀な情報収集部隊がいましてね。報告によると、伯爵、あなたは採掘場の管理者たちを脅し、ルーン石を横流しさせていたようですね?」
伯爵が、アスタに接触してくる可能性を鑑みて、俺はローウェルとアスタに事前に調査を命じていた。
「そ、それが何の証拠に……。」
「いえね、何で脅されていたのかも気になりまして、あなたの別荘もくまなく探索させました。そうすると、あなたの別荘から監禁された女性や子供を発見いたしました。人を監禁するだけでも、罪に当たるのにそれが採掘場関係者を脅すためだったとは……。これでもまだ、言い逃れしますか?」と、俺は再び笑顔で圧をかけた。
「くっ……。しかし、餓鬼に何ができるのだ!」
はー、こいつは馬鹿だな。俺のとなりにいる人物が、目に入らないのか?
「あなたは本当に、阿呆の様ですね。この場にいるのは、本当に子供だけですか?」
俺が目線を横にやると、そこには絶対零度のまなざしの父上がいた。
「こ、公爵様……。」
デーブンの顔色は、見るからに青くなっていった。そのデーブンに対して、父上がとどめを刺した。
「お前がやっていることだけでも不愉快極まりないのに、我が息子に対する数々の暴言……。覚悟しておくんだな。陛下には私が直々に奏上して、私自らお前の領地を徹底的に調べ、余罪もすべて白日の下にさらしてやる。とりあえず、お前は騎士団に引き渡す。すでに騎士たちを呼んであるからな」と、言い終わると、父上が呼び鈴を鳴らした。
父上が合図すると、控えていた騎士たちが現れ、伯爵を連れて行こうとした。
「覚えてろよ、餓鬼ども! 絶対に後悔させてやるからな! 」
デーブンはそう言い放つと、憎悪の表情を浮かべ流れ、連行されていった。
見かねた父上が、
「安心しろ、アース。あれは地下牢に放り込まれるからな。二度と出てはこまい。」
と、言ってくれた。
だといいけど……。
何か嫌な予感がするな。
ーー
俺は自室に戻った後、すぐにアスタの様子を確認した。ひどく、傷ついただろうからな……。
「自分は大丈夫です。取り乱してしまい、申し訳ございませんでした。」
「いや、あれはひどすぎる」と、俺が言うと、他の側近たちも口々にデーブンを非難した。
『たしかにな。聞いているだけでも、反吐が出そうだった。』
『女性を何だと思っているんだろうね、あの男は。』
すると、ローウェルが俺が懸念していたことを口にした。
「俺も気分は最悪だったよ。しかし、あいつはこれで出てこられないし、一件落着ですね、主?」
俺がその問いに対して、曖昧な表情で返事をすると、皆が不振がった。
「どうしたんです、うかない顔して?」
「いや、何というかあいつ、また現れそうだなとか思ってさ。」
……。この場の全員が、沈黙した。
ーー
数日後。
「主、ジルベルト殿下から手紙が来てますよ!」
あ、忘れてた!
あの時ジルに、「会って話そう」という内容の手紙を出そうと思っていたのに、途中であいつが来て、そのまま忘れてしまった。ジルには、悪いことをしたな。
俺が忘れていたと、つぶやくとローウェルは頭を抱えてしまった。
「主、そういうことは忘れてはいけませんよ。」
「す、すまない。とりあえず、手紙を見せてくれ。」
俺がそういうと、ローウェルは早速手紙を渡してくれた。
なになに、要約すると、「話があるから、魔女の森に来てほしい」、という内容だな。魔女の森ってとこだ?
「魔女の森って、お前ら知ってるか?」と、俺が聞くと、アスタが頷いた。
「自分知ってますよ! 王都のはずれにある、薄気味悪い森のことですね。孤児時代に、「魔女の森へは絶対行くな」と、だれもが言っていました。」
なんでそんなところに、俺を呼びだすんだ? 何か、意味があるのだろうか?
「ジルベルト殿下は、なぜそんなところにアースを呼び出すんだ?」
「そうだね、その手紙本物なの?」
と、キースとミラルもこの手紙を不審がった。しかし、手紙は本物っぽいよな……。
「サインも本物だし、字もいつも通りだ。だよな、ローウェル?」と、文官のローウェルに聞くと、ローウェルは頷いた。
「はい。さらに言うと、仮に偽物だとしたら、王族の手紙を偽証したことになります。これはまず、あり得ないですね。」
たしかに、そうだよな。それにしても、日付は明日だな……って、急な話だな。まぁ、とりあえず行ってみるか。
俺はローウェルに、了解の意の返事を出しておくように頼んだ。
ーー
俺たちは翌日、アスタの案内のもと、魔女の森へとやってきた。
ここが魔女の森か……。本当に、魔女が住んでいそうだな。
それにしても、魔女って本当にいるのか? 俺は皆に尋ねてみた。
「魔女はきいたことがないね。でも確か、賢者ならいたはずだよ」と、ミラルが答えた。
へー、賢者って響きがかっこいいな。
「主、待ち合わせ場所はどこですか?」
「森の奥の方に小屋があるらしい。そこで落ち合う予定だ。」
いきなり行くのは、少しまずいかな……。若干怪しいし、ここは慎重に行くべきだな。
「アスタ、先行して小屋がどこにあるか探ってくれ。ローウェルは土人形で一応、索敵を」と、俺はいつも通り、二人に指示を出した。
数分後。
「見つけました、アース様。まだ誰も、いないようですね」と言いながら、アスタが帰ってきた。
待ち合わせの時間まで、少し時間があるが……。先に行っているか。
俺はアスタに案内を頼み、先に待ち合わせの小屋へと向かうことにした。
ーー
~ジルベルトside~
今日は、突然だがサンドール公爵家を訪ねる予定だ。アースから何の音沙汰もないので、流石に我慢の限界を超えたのだ。
アースめ、まったく何を考えているんだ?
「そうですね、殿下。案外、すねてるだけかもしれませんよ?」と、俺のつぶやきをウォーザットが拾った。
「そうかもな……。オーサックはどう思う?」
「俺は、訓練ができなくなるのが辛いです。だから早く仲直りしてください、殿下。」
「別に、喧嘩はしていないが……。」
喧嘩をしているつもりはない。第一あの時、俺がアースを突き放すような言葉を言ったのは……。
「着いたようですよ、殿下。」
と、俺が考え事をしている間に、サンドール邸へと着いたみたいだ。
ーー
到着して早々に俺は、
「出迎えご苦労。それで、アースいるか?」
と、執事に尋ねた。
しかし、執事は困惑しているようで、黙ったままだ。
なぜだ?
「おい、なぜそれほど困惑しているのだ?」
と、俺が聞くと執事はびくっと体を震わせた、ようやく口を開いた。
「は、はい。アース様たちは先ほど、ジルベルト殿下に会うために、出かけました。」
「は? どういうことだ!」
「は、はい。昨日ジルベルト殿下からの手紙が届き、その手紙に書かれていた通りに魔女の森へと向かわれました」と、執事は真剣な表情で言った。
なんだと……。俺はそんな手紙は出していない!
これは、いったいどういうことだ? いやな予感がする。すぐに向かわないと。
そうだ、サンドール公爵はどこにいるんだ? 俺は執事に、公爵の居場所について尋ねた。
「はい、現在はシンカー伯爵領へと調査に向かわれています。」
「今はこの地にいないのか……、早馬で知らせろ!」
「か、かしこまりました。」
嫌な予感がする、これは急いで向かわなければならないな……。
ーー
「ここが待ち合わせの小屋か……。ぼろいな。」
「あぁ、本当にぼろい。なぜ殿下は、こんなところを選んだんだ?」
「よっぽど、人に聞かれたくない話なんじゃない?」と、ミラルが言った。
俺も、そういう理由だろうとは考えていた。
「主、この小屋の中には何があるんでしょうね?」
「気になるなら、見て来ればいいだろ?」
「俺は嫌ですよ。全員でじゃんけんしましょう。」
「俺は別に興味はな……」と、言う途中で俺は言葉を失った。
突然、小屋が光りだしたのだ。それと同時に、キースとミラルが俺の前に立ち、戦闘態勢へと入る。アスタは俺の隣に、控えた。
「この光は……。転移陣か!」と、俺が叫ぶと、小屋から拍手が聞こえてきた。
「正解です、アース様!」
「誰だ!」
すると小屋の中から、人影が二つ。そして魔物が二体、小屋を破壊して現れた。
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