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3


うっ……。頭が痛い、そうか俺は倒れたんだったな……。




俺はゆっくり目を開けた。眩しい光で目が痛くなる。










「アース(様)!」と、俺が目を開けた瞬間に、多くの声が聞こえてきた。





周りを見渡すとそこには、父上と側近たち、そしてウォーザットの姿があった。ここはどうやら、医務室のようだな。






「アース、気分はどうだ?」と、父上が全員を代表して尋ねてきた。








「大丈夫です……。父上、みんな、心配をかけて申し訳ございませんでした。」




「構わない。私は陛下たちに報告してくる、側近一同、アースを頼んだぞ。」






それに対して、側近たちが了解の意を示すと、父上鷹揚にうなずいて、部屋を出ていった。




今度は、ウォーザットが俺に近づいてきて、話しかけてきた。




「俺はジルベルト殿下に報告に行ってきていいかな? 目を覚ましたらすぐに報告するようにと言われているんだ」といい、ウォーザットが部屋から出ていこうとするのを、俺は引き留めた。




「どうした、アース?」




「ジルには、「今は会うつもりはない」、と言ってもらえるかな。その……、いろいろと自分の中で整理がついてから話したいんだ。」



もう一度側近の件については、自分の中で整理がしたかった。






「……わかった」と、ウォーザットが静かに部屋を後にした。











これでようやく側近たちと、ゆっくり話すことができるな。



「お前ら心配をかけたな」といい、俺は起き上がろうとした。




すると、ミラルが慌てて俺を制してきた。



「待って、まだ寝ていた方が良いよ。」





「大丈夫だよ、ミラル。どこか、悪いわけじゃないから。それよりも、手を貸してくれるとありがたい。」




俺のお願いに対してミラルは、「……うん、わかった」といい、ミラルたちは静かに手を貸してくれた。




「それじゃあ、報告を頼む、ローウェル」と、俺は文官のローウェルに現状の報告を頼んだ。





「はい、主。主が倒れた後は、騒然となりました。サンドール公爵様を始め、多くの方々が慌てておいででした。アース様がこのように倒れることは今までになかった、と。そんな中、一番ショックを受けていそうだったのがジルベルト殿下でした。ジルベルト殿下は顔を真っ青にして、立ち尽くしておられました。陛下も驚いたようで、「アースにこれほどの心労をかけるとは、すまなかった」とおっしゃっておりました。婚約者の話は延期、そして側近の件は学園入学までに決めてくれればいい、という結論に至りました。 以上です、主」と、ローウェルは一礼した。




俺は完璧な報告に、礼を言った。




「いえいえ、文官らしい仕事ができて何よりですよ」と、ローウェルは満足そうに微笑んだ。





要約すると、婚約者の話は延期で、側近の件は約二か月の猶予があるのか。かなり譲歩してもらったな。まぁ、王の間で倒れたんだからな。それほどの衝撃を、与えたのだろう。





俺は立ち上がり、窓のそばへと寄った。






「みんな、今日の夜は話し合いがしたい。俺の部屋に集まってくれるか?」






俺の問いかけに対して、何かを察した側近たちは、ためらがちに頷いた。






すると、




コンコン





と、ドアのノック音が聞こえて、ドアが開かれた。







「アース、入るぞ。……もう起き上がって大丈夫なのか?」と、父上が駆け足で入ってきた。






「はい、父上。もう大丈夫です。ご心配をおかけしました。」





「うむ、大丈夫そうで何よりだ。立っても平気そうなら、屋敷に帰ろうと思うがよいか?」








「えぇ、問題ありません。」






俺がそういうと、父上は帰りの窓を出すようにと言った。俺はその指示に従って、屋敷行きの窓を出し、帰路に就いた。










ーー










屋敷に着くと、


「アース、今日はゆっくり休みなさい。それから、ゆっくりと考えればいい。それから……何の力になれなかった私を、どうか許してほしい」と、申し訳なさそうな顔をして、父上が語り掛けてきた。







「許すなんて、とんでもございません。いつも、父上の寛容さ優しさには助けられております。婚約者の件も、「アースの自由にさせたい」とおっしゃっていただいたこと、本当にうれしかったです。ありがとうございました」と、思っていることを素直に話し、頭を下げた。






「うむ。ゆっくり休みなさい。」






父上はそういうと、俺の頭にそっと手を置いてくれた。














ーー










その夜。



「全員集まったな。それでは会議を開催する。議題は「誰の側近になるか」についてだ。」



俺がそういうと、キースが手を挙げて、「その前に一ついいか」と、発言した。



俺は何だろうと思いながら、キースに先を促した。






「先に、お前の婚約者について聞きたい。貴族にとっては、重要なことだからな。」




そっちの話を先に聞きたいということか……。まあ、側近の今後にもかかわることだから、はっきりと側近には伝えなければならないな。俺は了解の意味を込めて、ゆっくりと頷いた。





「ありがとう。アースは、結婚することが嫌なのか? お前からは、あまりそういう話を聞いたことがなかったが……。」






「……結婚が嫌だというか、することが面倒くさい、という感じだな。俺は大人になってからも自由でいたいんだ。だけど、一生を添い遂げてもいいという相手が見つかったら……、その時のことまではわからない。ただ、勝手に相手を決められる政略結婚だけは、何としても回避したい。俺は……多分、政略結婚した後、ダメになると思うんだ」と、俺は素直に自分の気持ちをみんなに話した。




すると、ミラルが真っ先に同意してくれた。




「政略結婚が嫌だという気持ちは私にはわかるよ。屋敷で花嫁修業ばかりやらされていたころは、政略結婚のことばかり考えていたからね。ただ……貴族としてはしょうがない、とも私には思える」と、苦笑いをしながら、ミラルは言った。




「それは俺も、わかっているつもりだ。貴族として生まれたからには、政略結婚の駒に使われることもな。だからこそ、俺は貴族が嫌いなんだ……」




「主、その先は言ってはいけない!」と、俺が言う途中で、ローウェルが制してきた。







「……あぁ、すまなかった。安心してくれ。貴族の義務を放棄するつもりはない。」





少しの沈黙が流れた後、今度はアスタが話し始めた。




「私は貴族としての期間があまり長くはないですが、何か政略結婚を回避する方法はないのですか?」




「アスタがいうように、合法的に回避できれば話は早いんだけどな……」と、俺は腕組をした。




こればかりは、なかなか難しい問題だ。相当の理由がなければ、政略結婚のコマとしての利用は、避けられないだろうな。





「それはほぼ、無理だろう。何か理由がないとな」と、キースも難しいと考えているようだ。





理由か……。まったく思いつかないな。




今は政略結婚のことについて悩んでいても、答えは出なさそうだな。幸い、少し猶予があるわけだから、話を変えた方が良いな。






「この話はまた今度にしよう。今度は、側近について考えよう。お前たちの間接的な主を、選ぶことにもなるしな」と、俺言うと、全員が頷いた。







「それなんですけど、主。側近になるなら、ジルベルト殿下一択ではないですか? みんなもそう思てるよな?」と、ローウェルが他の三人に問いかけると、三人ともうなずいた。






やっぱりそうだよな……。側近たちも、そう思っているのに……。






「ただ、あの時のジルベルト殿下は。少し冷たかったですよね?」




と、アスタが俺が気にしていたことを指摘した。やはり、冷たかったよな?




「あぁ、そうだな。もう少し、「側近になってほしい」という内容のことを、言うのかと思っていたんだけどな……。」






「そうだね。何か、お考えがあるのかもしれないよ?」






「ミラル譲の言うとおりだな。ジルベルト殿下が、アースを側近に望まないはずがないと思うな。」






俺の自惚れでなければ、ローウェルの言う通り、ジルから側近の打診がもっとあってもよかったと思う。だから……。





「みんなは、俺がどの王子を選ぶかということに何か意味があると思うか?」と、王の間で考えていたことを、皆に問いかけてみた。





俺の問いかけに対して、皆は少し悩んだようだった。しかし、ローウェルが先に何かを考え付いたようだった。




「主が、教会派か国王派のどちらを選ぶのかを、見たかったとかですかね?」






ローウェルもそう思うのか……。俺も最初はそう思った、だけど……。







「それは俺も考えた。でもそれだと、わざわざ年の離れた第一王子殿下も、候補に入れる必要はないんじゃないか? ジルと第二王子殿下とで、選ばせれば充分なんじゃないか?」と、俺が言うと全員頷いた。






「それは……、主のおっしゃる通りですね。」








「アースは、ほかに何か考えたのか? あの時、長考していただろ?」






「あぁ、それはだな。俺の選んだ王子が王太子に一歩近づくとか、考えていたんだが……。俺の自惚れだろうか?」と俺が言うと、皆ははっとした表情を浮かべた。








「いや、その可能性はあると思う。」

「そうだね。」





「……主はこの先、国内外に大きな影響力を持つ人だと思います。そんな主が選んだ主人が王太子とならずに、ただの王子という枠に収まったら……。いろいろと問題がありそうですね」と、ローウェルが苦い顔をしながら答えた。



「自分もローウェルの意見に賛成です。だとしたら、ジルベルト殿下のあの態度は……。」






そう、アスタの考えている通りだともう。


暗に、王太子になるつもりはないから主として選んでくれるなよってことだな。




とすると、やはり、第一王子殿下になるかな。消去法で申し訳ないけど。




俺がそうつぶやくと、側近たちが俺を見つめてきた。何だろうと思い、俺は側近たちを見返した。






「……本当にそれでいいのか?」と、キースが尋ねてきた。





俺はキースに対して、どういうことだと聞き返した。……いや、本当はわかっているんだ……。






「第一王子殿下に仕えたいのか、と聞いているんだ。」




「それは……。(心情的にはジルに仕えたい、しかし。)」




俺のあいまいな態度にイラついたのか、キースが詰め寄ってきた。




「お前が仕えたい人に仕えることが一番なんじゃないか? 俺たちはお前の選択なら、どこまでもついていくぞ。なぁ、お前ら?」と、キースが呼びかけると、全員が頷いた。






「側近の件については、お前に選択権が与えられているんだ。後悔のない選択をした方がいい。俺たちが、いつでも相談に乗るからさ。」






「ありがと、みんな……。」






まずは、ジルと話をした方がいいな。気持ちの整理ができたら、俺から声をかけよう。

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